飽和状態から抜け出よう
近年の楽器演奏における日本の若者の技術力の高さには目を見張るものがある。YouTubeなどで様々な一流のミュージシャンの演奏が無料で観られたり、演奏技術解説などの動画を見ることができるのは大きいだろう。
ただ、こと写真の分野では、さほど目立って秀でた若者がいるようには思えない。
カメラの進化によって、楽器の世界とは逆に誰にでも簡単に写真が撮れるようになって、技術力云々というより、発想力、着眼点等の方が重要になっているからだろう。
しかし、大抵のことは既に過去の誰かがやっていて、写真の世界は飽和状態なのかもしれない。
SNSを見ていても、どこかで見たような似たり寄ったりな写真が非常に多い。
自分も含めてだが、優れた先人たちの呪縛から抜け出し切れないジレンマというものは常に付きまとってくる。
そんな中でもインベカヲリ☆さんの写真は、特異な写真だと思う。
ただのポートレートではなく、被写体本人の思考(嗜好・志向)を表出させている。
感情の揺らぎを追求したポートレートは珍しくないが思考というところがミソである。
感情はある程度万人共通のものであるが、各々の人の思考の在り方は、経験や環境によって千差万別で、複雑怪奇に絡まり入り組んでいくからである。
思考にこそ人間の奇妙さや闇や不思議さやトラウマといったものが表れやすい。
そこをテーマにするのが、かなり時代を表現しているなぁと思う。
彼女が素晴らしいのは、個人的な興味とそれを具現化するための戦略が完全に一致している点。
良い写真は感性だけでは成立しない。
感性と知性の両輪をバランスさせることが必要である。
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