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政令市が目指すべき次のステップとは?

「熊本市の政令都市移行10年を迎え、政令市効果について実際に波及しているのか」という点について現市長との対談を振り返ってみると、「もちろん効果が上がっているものもあれば、そうでないものもある」というのが現状です。その詳細については、下記noteにご紹介していますので、ぜひご一読ください。

政令市効果は発揮されたのか?
https://note.com/s_kohyama/n/ne59fc1f5e097

では、当初期待された効果について
仮に発揮できていなかったとすれば、何が原因なのでしょうか?

制度の問題?
組織の問題?
運用する人の問題?
制度の問題であれば、どう見直すのか?

例えば
① さらなる県からの権限移譲を目指す
10年前には約300の事務が移譲されています。その中には必須のものもあれば任意のものもあります。ちなみに当時の協定書等はこちらからどうぞ。
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/12/2591.html

いわゆる『二重行政』をできるだけ減らそうと、基本的には熊本市で受けようと臨みましたが、河川や熊本港、JR在来線の高架事業等は、協議の結果、そのまま県に残すものもありました。権限移譲とは異なるものの、『政令市外し』という『行政用語』があります。福祉事業等で、政令市移行に伴い熊本市は県補助の対象外とする動きがありました。「市民も県税を負担している」との熊本市側の主張があれば、「政令市の独自財源を使えばいい。それが政令市」との県の主張がぶつかり合い、なかなかシビアな戦いが繰り広げられもしました。定期的な協議はあっていると思いますが、いずれにせよこの節目に全体を見直す必要はあるのでしょう。

② 『特別自治市』を目指す
この制度は現実のものではありませんが、政令市を『未完の制度』とする5大政令市を中心に以前から国に提言されてきたものです。『特別自治市』とは、現行政令市よりもかなり県からの独立色が強い制度で、例えば警察も現行は県警察本部一本ですが、『ニューヨーク市警』のように、県警と市警とにわかれることが想定されています。『特別自治市』を含む大都市制度について、『指定都市市長会』での議題になりましたが、政令市になったばかりの熊本市としては同調できませんでした。抽象的な表現ですが、「独立するのではなく、より自立することで都市圏域に影響を及ぼせる制度の方が望ましい」との考えからで、それは今も変わりません。

③ 『大阪都構想』を目指す
これも実現していませんが、要は東京都のような制度を導入しようとするもの。国よりも県、県よりも市、という基礎自治体優先の原則からすれば、都構想は市が分解されて区になり都に吸収される、という『真逆』の動きになります。元々、東京都は戦時中に、国の権限を強め戦争への備えとしたもの。東京都の23区は、政令市にある区役所と違い、公選首長と議員がいることで住民の意向が反映されやすいとの考えもありますが、田園地帯や海山の広がる政令市には馴染まないと思ってきました。この考えも今も変わりはありません。

④ 連携中枢都市圏を充実させる
もっとも現実的な対応です。ちなみに連携協約書やビジョンはこちらから。
https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=12353&class_set_id=2&class_id=66

『熊本連携中枢都市圏ビジョン』の中身をみると観光や企業誘致、福祉、空き家対策、環境など、多くの項目が列挙されています。ただ予算面の制約や県とのすみ分け、ソフト事業が中心であることなど、今後どのように制度を発展させ、事業を展開していくのかが問われているのだと思います。圏域の抱える課題解決には、制度のさらなる充実が求められている、そう思います。

制度だけでなく、組織や人の問題もあると思っています。人間関係によってクリアされることもありますが、それだけでも限界がある。県市連絡会議などは存在し、定期的に開催されているのでしょうが、何が議論されているのか、どこに問題意識があるのか、しっかりと注視しておく必要があるでしょう。どんな合議体も、設置から長期化し、問題意識次第では形骸化しかねないもの。人や組織だけではなく、やはり制度についても考えていく必要があると思っています。そして、そのことを国にお任せするのではなく、地方から力強くあるべき姿を発信していく、そのことが政令市としての大事な役割だと思っています。

さらなる市町村合併という選択もありますが、私はできるだけやらない方がよいという考えです。熊本市が政令市に移行できたのは、平成の大合併のおかげとも言えます。日本は、平成の大合併、昭和の大合併、もっと以前にも合併の歴史があり、現在に至っています。これから10年、20年先を見据えたときに、全体としての人口減少と都市圏域への集中、格差の広がりは避けられそうもありません。そんな中、今後も合併を繰り返すのか、私はそれ以外の道を探るべきとの考えです。

だからこそ、今回の政令市を検証することは、政令市だけを考えるのではなく、市町村制や都道府県制を考えることであり、この国のあり方を考えることにつながる、そんな問題意識を持っています。
次回は政令市・熊本市が「今後どうあるべきか」について考えてみましょう。

熊本日日新聞では、対談の様子をYouTube上で公開しています。
ぜひ、皆さんも動画を見てご意見をお寄せください。

【前編】熊本日日新聞4月12日朝刊掲載記事https://youtu.be/0GtrdZvYuqs

【後編】熊本日日新聞4月13日朝刊掲載記事https://youtu.be/TaP5QBytHOc

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