見出し画像

政令市効果は発揮されたのか?

熊本市の政令市移行10年を総括する現熊本市長との対談の後編が、地元紙に掲載されました。前編にも反響があり、読者からはさまざまな意見が寄せられています。

この対談で私が念頭に置いた3つの検証項目について、現状を分かりやすくご紹介しましょう。

「この10年間で、期待された効果を発揮できたのか?」

移行前に期待された政令市効果といってもさまざまで、当時はこんなことが期待されていました。

① 権限移譲、財政面での効果

●県から土木や教育部門を中心に数多くの権限が移譲される。
●都市の成長に連れて、課題は複雑かつ深刻になり、その対応にはスピード感が求められる。
●県を介さずに直接国とのやりとりが可能となり、事業のスピードアップにつながる。
●予算配分も直接国から受けることになり、財政的なメリットが見込まれる。

② ブランド力による効果

●全国でも限られた政令市の仲間入りを果たすことで、知名度は確実に向上する。
●そのことが観光面や移住定住、企業誘致等で選ばれる都市となる。
●九州内での福岡都市圏への集中を食い止めることにつながる。
●当時は道州制が議論されていて、州都に名乗りを上げるためには政令市になっておいた方が有利との考えもあった。

③ 都市圏への効果

●都市の成長は都市圏域での成長でもあり、交通渋滞や生活環境等の課題も都市と同様に増す。
●他の政令市と比較した際、熊本市だけでなく都市圏としてアピールした方が、産業面での力強さも含めた魅力が増す。
●それらの課題解決や魅力の向上のために政令市という手段を活用する。

実際の効果については、①②についてはおおむね想定通り。③についてはまだこれからといったところ。

①については、長年事業を実施してきた県と比較し、熊本市の専門性の向上を求める声も聞こえてきます。また熊本地震の際、他政令市との連携やスピードアップの観点から「政令市効果をもっとも実感した」との評価があれば、熊本市とそれ以外の被災市町村との間に格差が生じ「混乱を招いた」との指摘も。影響の大きさを考えれば、緊急時といえども、しっかりと意思疎通を図り進めていくことが求められています。

②については、政令市移行が決まった時点から、もっとも効果を感じていました。企業誘致では引き合いや立地件数も急増し、観光面でも九州新幹線開業とあいまって着実に数字を伸ばすことに。ただ熊本地震や新型コロナウイルス感染症の拡大などで環境が激変したので、仕切り直してしっかりと取り組めば、まだまだ伸びる余地はあるでしょう。熊本市域ではありませんが、TSMCの進出にも人材育成や周辺環境の整備などで熊本市の果たす役割は大きいと思います。

③については一定の成果は上がっているものの、これからに期待するところ。政令市とは直接的には関係ないものの、移行直後に消防事務の広域化で熊本市が益城町や西原村を所管したり、今後は一般廃棄物処理の広域化に取り組むことが決まっています。都市圏の一体性を強め、政令市の存在感を発揮するという意味では、もっと積極的な広域連携を期待したいと思います。特に重要なテーマが交通問題。熊本市域は交通渋滞が著しく、都市圏の広がりとともに、その問題も広域化しています。道路整備も大事ですが、公共交通の再編整備について、熊本市のリーダーシップと広域調整が期待されるところ。その下地はできていると思っています。

次回は政令市の課題について取り上げる予定ですので、どうぞお楽しみに。

熊本日日新聞では、対談の様子をYouTube上で公開しています。
ぜひ、皆さんも動画を見てご意見をお寄せください。

【前編】熊本日日新聞4月12日朝刊掲載記事
https://youtu.be/0GtrdZvYuqs

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?