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水上都市計画が進むモルディブ共和国

突然ですがモルディブ共和国(モルディブ)をご存知ですか?
モルディブは、インド洋に浮かぶ島国で、インドとスリランカの南西に位置します。首都はマレ。若い頃は「一度は訪れてみたいなぁ」と考えたこともありましたが、実現しないまま現在に至っています。エルニーニョ現象によって海水温が上昇し、一時はサンゴ礁の白化、死滅が危惧されていましたが、最近ではかなり回復してきたと聞いていました。

外務省の基礎データによると
面積:298平方キロメートル(全島総計。東京23区の約半分)。1192の島々より成る。
人口:55.7万人(2020年モルディブ政府資料)
(内訳は、モルディブ人37.9万人、外国人17.8万人。いずれもモルディブ在住の人口)
経済概況:経済の基盤は観光と水産業である。観光はGDPの26.3%を占める主な外貨獲得源。1島1リゾート計画に基づき、全国1192島のうち145島がリゾート島となっている。2019年の観光客は170万人で、多い順に中国(28.4万人)、インド(16.6万人)、イタリア(13.6万人)である(日本は4.4万人、第9位)。
(参考:2020年の観光のGDPに占める割合は14.8%、観光客数は56万人、うち日本人は0.8万人(11位)
水産業はGDPの3.0%であるが、、輸出産品の98%を占めている(2020年)。主な魚種はカツオ(水揚げ量の70%)及びマグロ(同29%)であり、特産品としてかつお節も生産されている。(参考:2020年の水産業のGDPに占める割合は5.0%)
(出典:2019年モルディブ統計局、モルディブ税関)

低地の島々で構成されているモルディブは、世界で最も気候変動に対して脆弱な国の一つといわれ、陸地部分の8割が海抜1メートル未満だそうです。今世紀末までに海水面が最大1メートル上昇するとの予測があり、国のほぼ全域が水没する恐れもあるのだそう。

そんなモルディブでは、必要に迫られてか、『水上都市計画』が進んでいます。海面上昇対策では通常『埋め立て』を行う国が多い中、サンゴ礁への影響を回避するために、浮かぶ島を造り、そこに政府主導で都市を建設する計画です。

例えば、首都マレからボートで10分の場所にあるラグーン(潟)に浮かぶ水上都市には2万人が居住可能。住居、レストラン、店舗、学校など、5000もの水上ユニットで構成されており、ユニットとユニットの間には運河が流れているのだとか。6月に最初の数ユニットが発表され、2024年はじめに住民が入居開始。そして27年までに都市全体が完成予定とのこと。

また、ある水上都市では、ユニットを地元の造船所で組み立て、水上都市まで曳航する。このユニットは、所定の場所に到着すると、水中にある大きなコンクリート製の構造体に取り付けられる。この構造体は、伸縮式の鋼鉄の支柱で海底に固定されており、波の動きに合わせてユニットが緩やかに上下する仕組みです。都市を取り囲んでいるサンゴ礁が自然の防波堤の役割を果たし、都市を安定させ、住民が船酔いするのを防ぐのだそう。

また、この水上都市が自給自足できるようにし、陸上の都市と同じ機能を持たせることを目指しています。電気は主に現地で太陽光発電。下水も現地で処理され植物の肥料として再利用されるほか、空調の代わりに海洋深層水を使って室内を冷却する、

ある保険会社によると、2021年に洪水が世界経済に与えた損失は820億ドル(約11兆円)以上に上り、気候変動により損失はさらに膨らむと想定されています。世界資源研究所(WRI)も報告書の中で、30年までに毎年総額7000億ドル以上の都市の不動産が沿岸部や河川の洪水の影響を受けると予測しています。

水上都市はモルディブに限った話ではなく、観光的な要素の強いものを含め、世界各国で計画が進んでいますが、だからといって「これだけの技術があれば温暖化が進んでも大丈夫!」とは決してなりませんよね。環境破壊と技術革新の競争のようでもありますが、勝者のいない虚しい戦いのようにも思えます。

モルディブに対する若い頃の憧れは薄れたものの、環境問題を目の当たりにすることは難しいことから、現実を直視する意味で訪れる価値はあるのかもしれない、今はそんなことを思っています。

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