日本が飢える!?~出遅れている農業政策
『食料安全保障』の考え方に反対する人はほとんどいないはずです。
あらためて農林水産省のHPから抜粋すると
「平成11年7月に公布・施行された「食料・農業・農村基本法」においては、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせ、食料の安定的な供給を確保することとしています。また、凶作や輸入の途絶等の不測の事態が生じた場合にも、国民が最低限度必要とする食料の供給を確保しなければなりません。
世界的な人口増加等による食料需要の増大、気候変動による生産減少など、国内外の様々な要因によって食料供給に影響を及ぼす可能性があり、食料の安定供給に対する国民の不安も高まっています。
このため、不測の事態に備え、日頃からそうした要因の影響等を分析、評価するとともに、不測の事態が生じた場合の具体的な対応手順の整備等を進めておく事が重要です。こうした取り組みを通じて、総合的な食料安全保障の確立を図っていきます」
とありました。
ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、より現実味を帯びてきており、具体策が求められるようになりました。
食料が消えるという深刻な問題は、熊本では2016年の熊本地震直後に経験しています。一般道だけでなく、高速道路も寸断されたことから、熊本は孤立状態に陥りました。物流もストップし、スーパーやコンビニ、ドラッグストアから、食べ物や飲み物、その一切が姿を消すことになってしまったのです。コンビニに残っていたのはウィスキーや焼酎等のアルコール類くらい。我が家は幸いにも被害は無かったものの「これからどうなるのだろう」と、とても不安になったことを思い出します。しばらくすると、徐々に交通インフラは復旧され、物流も動き出し、全国各地から支援物資が届くようになりました。それらの物資については、被災家屋や避難所までなかなか行き渡らないという、オペレーション上の問題はあったものの、食糧そのものの不足は数日で解消されることに。戦中戦後の食料不足、配給などを経験したことのない世代にとって、その数日間は、とても不安な気持ちで過ごすことになりました。
食糧安全保障とは、前述にもある通り、一地域のことではなく国家レベルの問題です。ウクライナ侵攻だけでなく、米中関係の緊張感が高まる中、もしも海に囲まれた台湾が封鎖されることになれば、あらゆる物資の調達に困難を極めることになるでしょう。日本も台湾と同様に海に囲まれ、しかも食料自給率37%の我が国が、有事に限らず、世界的な食料需要の急増および気候変動による生産減少などに絶えられるのか、「何とかなる」では済まされない現実が、目の前に迫ってきている恐怖心を覚えます。
ある方から、そのことについて問題提起された一冊「日本が飢える!世界食糧危機の真実」(山下一仁著、幻冬舎新書)を紹介されました。詳細は省略しますが読み進めていくと、「現在の国内の食料安全保障はいざというときに機能しないことに警鐘を鳴らし、具体策としては『減反政策』をすぐに止め、平時の余った米は海外へ輸出する。そして有事の際は輸出をストップし、国内の消費にまわす」という大変シンプルな提案です。ある意味では、どの国でも当たり前のこととして行っている農業政策が国内ではなぜできないのか、その構造的な問題も指摘されています。今だからこそ読んでおきたい一冊として紹介します。
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