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【授業紹介】実習・刀剣編

こんにちは

皆さまこんにちは!ナカモリです。
本題に入る前に、今回は東北大学のオープンキャンパスについてご案内します!

東北大学では、この夏、対面とオンラインのハイブリッド形式でオープンキャンパスが開催されます。

東洋・日本美術史研究室では、お隣の美学・西洋美術史研究室と合同で
美術史に行こう!―ミニレクチャーとQ&A」という企画を行います!

どのような研究が行われているのか、美術史を専攻すると大学で何を学べるのか、など、様々なことを研究室の先生方から直接聞けるイベントです。
7/27(水)対面形式での開催で、事前予約制(定員超えの場合抽選)となっています。

この他にも、文学部の色々な研究室の紹介企画が沢山あります。
私の経験をお話しすると、高校2年生でオープンキャンパスに行き、東日美の研究室を訪問したことが進路選択の決め手になりました。ですから、美術史のみならず、文学部での学びに興味のある方、東北大学に興味のある方は、この機会に是非参加して、自分の将来を選択する一助として頂けたらと思います。



今回の話題

さて、今回は、刀剣の扱いを取り上げた実習の様子をお伝えします!

まず始めに、刀剣の基本的な情報について、杉本から講義がありました。ここでは、授業中の解説を抜粋して2つご紹介します。


刀剣の基礎知識

①刀剣の製作方法―鍛造
刀剣は鉄で出来ています。鉄は融点が約1535℃と高く、完全に解かして形を作るのは困難です。そこで刀剣を作る際に用いられるのが、鍛造という手法です。

鍛造とは、金属を叩いて薄くし、それを折って重ねて叩くことを繰り返して、刀剣などの形を作ることを指します。叩くことを「鍛える」と言うため、「鍛えて造る」で「鍛造」という訳です。
加えて、鉄は、叩くほどに中に含まれる酸素などの不純物が取り除かれ、炭素量が増え、硬くなる性質があります。

鍛造のイメージ

では、沢山鍛えれば強い刀剣が作れるのかというと、そうではなく、硬すぎると逆に折れやすいという問題が生じます。そこで、柔らかい鉄で硬い鉄をくるむことで、硬さとしなやかさを併せ持つ刀剣が作られていたのだそうです。固さの違う鉄の組み合わせ方は、時代や流派によっていくつか方法があると言います。


②種類の違い―太刀と刀
続いては、刀剣の種類について。ひとくちに刀剣といっても、太刀・刀・脇差・短刀、と色々なものがありますが、見分けるポイントは長さです。

刀 :二尺(約60㎝)以上
脇差:一尺以上二尺未満(約30~60㎝)
短刀:一尺(約30㎝)未満

このように、長さによって呼び方が異なります。

それでは、太刀と刀は、どう違うのでしょうか。
両者の一番の違いは帯刀の方法です。

太刀(上)は腰に吊して「佩く(はく)」のに対し、刀(下)は腰に「差し」ます。
(画像は「刀剣ワールド名古屋・丸の内」より転載)

室町時代以前に使われた太刀は、上の図のように腰に吊り下げて持ち歩きます。左手で鞘を後方に引きつつ抜刀するため、長くても扱うことができます。戦闘においては間合いが長い方が有利であるため、長いものが作られたのです。

一方、江戸時代に使われるようになった刀(打ち刀)は、腰に差して持ち歩きます。また、太刀の刃が下を向いているのに対し、刀は刃が上を向いており、抜刀しただけですぐ相手に斬りかかれるという特徴があります。
江戸時代には、間合いをとる戦い方から接近戦へと変化したために、素早く戦闘態勢を取ることの出来る刀が用いられるようになったと考えられます。

ところで、江戸時代に入ると刀が主流になりますが、太刀が廃れた訳ではありません。
武士たちは正装する際に太刀を佩いていたため、江戸時代以降も太刀の需要がなくなることは無かったのだそうです。


(刀剣についてもっと詳しく知りたい方はこちら。杉本が担当する「日本近世美術史」の授業から、刀剣を取り上げた回をご覧いただけます。↓ )


刀剣の手入れ方法を学ぶ

刀剣の基礎を理解した後は、杉本による実演を通して、刀剣の手入れの仕方を学びました。

刀剣を休鞘(やすめざや)から外しているところ
鞘から出した刀剣を拭紙で拭っているところ。
鉄で出来た刀剣は錆びやすいため、保管時には表面を油でコーティングして錆を防ぎます。展示の際には油を拭き取ります。
仕上げの段階。杉本が右手に持つ赤い道具には、打ち粉(砥石の粉)が入っています。これを刀剣の表面にまぶし、粉に油を吸着させ、油を残さず拭います。


余談ですが、実際に学芸員として働くことを想像すると、規模の大きな美術館や博物館の場合は刀剣を専門とする学芸員がいるのだと思われます。しかし、美術担当の学芸員が1人、2人の小規模なところに就職した場合、自分の専門に関わらず、どんなものでも展示・管理出来る必要があります。

ですから、刀剣の手入れを学んだ今回の実習は、学芸員を目指す東日美の学生たちにとって、将来の仕事に直結する知識を得るための重要な機会となりました。

実際に触れてみる

最後に、実際に刀剣に触れながら、銘や刃文を見ました。

刀剣を観賞する様子。教室のLEDライトではなく、白熱灯で照らすと刃文がくっきり見えます。
実際に持ってみて、重さを体感しました。


ありがとうございました

今回は、刀剣の扱いについて学んだ実習の様子をお伝えしました。いかがでしたでしょうか。
博物館実習で刀剣を扱う所は全国的にも少ないそうです。ガラスケース越しにしか見たことのない刀剣を、直接触れるのは緊張しましたが、楽しくもありました。

それでは、今回はここまで。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

【参考】

展覧会特設サイト:杉本監修の展覧会「東北の画人たちⅠ~秋田・山形・福島編~」についてはこちらからどうぞ!

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YouTube:講義を期間限定で配信中!杉本の特別企画もあり、美術史についてより深く学ぶことができます。そして何より、ここで取り上げた講義を実際に聞くことができ、気軽に体験授業を受けることができます!


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