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【様々な視点から】43 杉本通信~歴史研究者の姿勢~

こんにちは

仙台城(青葉城)大手門跡から仙台駅方面を望む。久しぶりのすっきりした青空です。

皆さまこんにちは!ナカモリです。
お盆を過ぎて、仙台は少し暑さも和らいできました。この記事を書いている日は、日差しはまだまだ強いけれど風の感じは秋めいてきて、とても爽やかな一日でした!一年を通じて比較的過ごしやすいのが仙台の良いところの一つだなあと、ありがたく思います。


今回の話題

さて、今回は、歴史を研究する上での視点に注目してお伝えします!

私が勉強している美術史は、ものをきっかけとして人々の在り方を探る学問です。
もちろん、美術品自体がどういうものか明らかにする事も重要ですが、一年半ほど学んでみて、美術史が歴史学の一部である以上、目指すべきゴールは、作品が生まれた背景にある、当時の人々の価値観を知る事だと分かってきました。

当時の人々の在り方を明らかにするには、宗教・思想・外国の影響……と様々な視点から調べていく必要がありますが、中でも杉本は、理系的な分野も含めて歴史を捉える事の重要性に触れています。

 ブラタモリではないが、最近は歴史に地理学が欠かせないものとわかってきた。つまり歴史地理学だ。その土地ゆえにそのような歴史が生まれてきた…という認識である。
 私も含め、歴史研究者は「もっと時代背景を知らなければならない…」という環境論の重要性を言うことがある。けれども、反省して言うならば、それは目くそ鼻くその議論が多いのだ。言っている範囲が狭い。もし、本気でそれを言うのであれば、地勢学、地質学といった理系の観点も間違いなく必要となる。
 地勢的に…地質的にその土地にはこのような特徴がある……それゆえ、その場所は発展し、このような歴史が築かれてきたのだ…との観点である。そのなかには「水」という要素もある。
 とにかくひとつの見方に固執するのではなく、むしろ様々な見方を獲得しなければならない。
 我々にとってはそれがスキルともなるわけだが、結局はそれを増やすことこそ、人生を楽しくするコツであり、「ルサンチマン」の精神に陥らないためのコツ…というわけである。

『杉本通信』(48)2017年4月1日号より

地形や、地形によって変化する気候が、その土地ならではの生活様式や産業を生み出すというのは、当たり前と言えば当たり前ですが、それぞれの土地の文化の独自性に大きく関わる要因であり、美術史、そして歴史を考える上で重要な視点です。

また、このように歴史学にも地理学をはじめとする自然科学の分野が関係してくるため、歴史研究者は文系・理系の垣根を越えて、必要に応じてあらゆる学問の視点を取り入れる必要があるのです。


自分で経験してみる

それでは、歴史を研究する上での様々な視点をどのように獲得するのか。一つの方法は「自分で経験してみる」事だと思います。
例えば、杉本が先に引用した考えに至るには、旅での経験がありました。

 盛岡はこれまで行った全国の都市のなかで、予想外のダントツ1位だった。東北の人たちには失礼だが、伊達政宗があまりにも有名すぎるため、関西人の意識として、東北といえばまず仙台なのである。
 だから盛岡もまったく期待しておらず、都市としては仙台の方が上…と漠然と思っていたのである。けれども予想とはまったく逆…。非常に活気があり、十分に堪能させてもらった。

『杉本通信』(48)2017年4月1日号より

ここでは盛岡の旅について引用しましたが、他にも杉本にとって馴染みの薄い東北の各地を旅した経験が、江戸時代の東北の諸藩を考える上での意識の変化に寄与していると見え、最終的には「東北の画人たちⅠ」の展覧会につながっていたようです。


ここで、「多くの視点を獲得する」というのは、言い換えれば
①自分が扱える形に整えた正しい知識を沢山取り入れ、
②それを自在に、相応しく組み合わせられるようにする
という事だと思います。

現代では本やインターネットから膨大な情報を得ることができますが、そればかりでは実感を伴った知識にはなりにくく、時にはその情報が現実と異なる場合もあります。

今回の杉本の場合は、自分の足で東北を旅した経験が、新たな視点を得るきっかけとなっていました。よって、知識を実際に見たり聞いたりして感覚的に獲得する、すなわち、経験する事が、「自分が扱える形に整えた正しい知識」を取り入れるコツなのではないかと考えました。


ありがとうございました

今回は、歴史を研究するにあたって様々な視点を持つ必要があり、その視点を獲得するには自分で経験するのがコツだという事をお伝えしました。
いかがでしたでしょうか?

余談ですが、私は東日美研究室に配属されて、まず初めに、「東日美は旅をする研究室である」と教わりました。
これの意味するところは、一つは「実物を見られる機会を逃さないようにしなさい」という事だと思いますが、もう一つは「作品が生まれた場所自体にも意味があるから、その土地の特色も含めて自分の目で確かめなさい」という事だろうと、今になって気がつきました。
私もせっかく縁があって東北大学で美術史を学んでいるからには、在学中に東北六県の歴史を五感で感じる旅をして、様々な視点を得たいと思います!

それでは、今回はここまで。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!

【参考】

展覧会特設サイト:杉本監修の展覧会「東北の画人たちⅠ~秋田・山形・福島編~」についてはこちらからどうぞ!
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