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平成30年司法試験労働法第2問答案

第1、設問1
1、Y社がCらへ懲戒処分を行うことは不当労働行為(労働組合法(以下略)7条)に当たるとのCらの主張は妥当か。
(1)「労働組合の正当な行為をしたことの故をもって…これに対して不利益な取扱いをする」場合には、不利益取扱いとしての不当労働行為となる(7条1号前段)。
(2)ア、仮にY社がCらを懲戒処分とすれば「不利益な取扱い」となることは明らかである。
イ、Y社はCらのビラ配布等の行為をその理由としているところ、これらのCらの行為が「労働組合の正当な行為」に当たるか問題となる。
(ア)「労働組合の正当な行為」に当たるか否かは、当該行為の目的や態様、組合との関係性、影響力の大小その他諸般の事情を総合考慮して決する。
 そして、労働組合の一部の者達のみによる場合は、組合全体の弱体化につながる等、統制力の見地から労働組合の結束を低下させるリスクが高いため、原則として「正当」なものとはいえない。また、ビラを社外で配布する行為は、会社とは関係の無い外部の人々への影響も大きく、企業秩序を乱すため、原則として「正当」なものといえない。
(イ)たしかにCらの行為は「Z組合有志」としてなされたもので、一見するとZ組合の正当なものであるかにも思える。しかし、それはすなわちZ組合全体の意思に基づくものではないことを意味する。また、行為はY社の批判ビラを本社屋の前で1時間にわたり通行人へ配布する等というもので、情を知らない社外の人間等へも大きなネガティブな影響を与えるものである。これは旗とのぼりを立て、拡声器を使いつつなされたもので、尚更大きな影響を有するものである。
 このような実態を踏まえると、たとえその目的がZ組合及びCら自身の地位向上を図る点にあるとしても、「労働組合の正当な行為」とはいえない。
2、以上より、Y社のCらへの懲戒処分は不当労働行為には当たらず、Cらの主張は失当である。
第2、設問2
1、DによるCらへの権利の一時停止の統制処分は認められるか。
(1)労働組合はその組合員たる労働者達の権利を守り、地位を向上させるための組織であり(1条1項参照)、その目的のために労働組合はその組合員に統制処分をする権限を有している。
ア、もっとも、その統制処分のもたらす組合員への影響等の見地から、組合が組合員に統制処分をするためには、予め組合規約等によってその原因事由や手続等について定めておく必要がある。
イ、本件では、Z組合規約10~12条で、組合員への統制処分の事由や手続につき定められているため、Z組合は規約の事由に当たれば、Cらへ統制処分をすることができる。
(2)本件でZ組合は委員長Dの話のように、2年間限定の基本給10%削減に応じるという方針を決定したものの、Cらは上述の通りこの組合方針に反して労働行為のような事をしている。そのため「機関の決定に違反した」といえるし、「組合の統制秩序を乱した」といえる。また、「組合の運営…を阻害し」たともいえる(Z組合規約10条1~3号)。
 よってZ組合は同規約12条の手続によって、Cらへの権利の一時停止の統制処分をすることができる。
(3)なお、上述のCらの行為の影響の大きさ等に鑑みれば、統制処分の内3番目に重い権利の一時停止処分をすることは、相当であると考えられる(同規約11条)。
2、以上より、DによるCらへの権利一時停止の統制処分は認められる。
第3、設問3
1、DがY社の労働協約案に調印した場合、その協約がZ組合員にも効力を有することとならないか。
(1)労働協約は労使の両当事者が署名押印することで発効し、その労働組合の組合員を拘束することとなる(14条)。
 もっとも、その組合員への影響の大きさに鑑み、組合の代表者たる者への組合による授権は、組合規約のみによらず、その都度組合大会決議による授権をも必要とするべきである。
(2)たしかにZ組合規約ではその3条で委員長が組合を代表する旨定めている。しかし、Dの本件調印につき、Z組合大会決議による授権が認められない。
2、よって、本件労働協約はZ組合員には及ばない。

以上

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