地域のつむぎ手の家づくり|地元の良材と職人の技がつくりだす住まい<vol.18/石牧建築:静岡県浜松市>
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地域のつむぎ手の家づくり|地元の良材と職人の技がつくりだす住まい<vol.18/石牧建築:静岡県浜松市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・

地元天竜の木材や、珪藻土や漆喰、漆などの自然素材を使いながら、大工の手仕事を生かした家づくりに真摯に取り組む石牧建築(静岡県浜松市)。ずっと軸としていることは「真っ当であること」だと代表の石牧真志さんは話します。お客様には安心・安全で暮らしやすい住まいを提供し、そして家づくりに携わる自社の設計士や職人たちにも安定した環境を約束する。そんな信念をもって、関わるすべての人々が幸せになる家づくりを手掛けています。

石牧社長と佐原さん

代表の石牧真志さん(左)と取締役の佐原広祐(右)さん。

大工育成と確かな設計力

同社は大工育成にも力を入れており、若い大工がたくさん在籍しています。無垢材を組み上げて骨組みをつくる、大工伝統の技「手きざみ加工」で、一本一本の木の個性を見極め加工します。職人により見極められた木材で、伝統工法を駆使して建てられる住まいには、構造美と強度が兼ね備わっています。日本の家づくりにもっとも適した伝統工法を若い世代にも受け継ぎ、今では少なくなった「墨付け」のできる大工が家づくりに携わっています。

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かっこいいだけではない柔軟な発想と「架構」と「木の使い方」を重視した設計力も魅力です。2020年「tayutau-HUT」が第3回ふじのくに木使い建築施設の最優秀賞、浜松ウッドコレクション2018年では、「ひとつ屋根の家」が住宅部門で最優秀賞、「いそらの家」が住宅部門の特別賞(協議会長賞)を受賞するなど、木を巧みに用いたデザイン性の高さも見逃せません。

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「tayutau-HUT」は、第3回ふじのくに木使い建築施設表彰
最優秀賞を受賞。

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「いそらの家」は、日本エコハウス大賞2017ビルダーズ賞、
浜松ウッドコレクション2018 住宅部門:特別賞 協議会長賞を受賞。

また、同社のこだわりのひとつが、天竜材の産地である春野町に加工の拠点「森の工房 il bosco(イルボスコ)」。墨付けや刻み、加工などの部材づくりをする場所で、「木材小屋 Specieスペーチェ(種)」「墨付け小屋 Radiceラディーチェ(根)」などイタリア語で名前をつけています。外国語にした理由は、一般の方にも気軽に立ち寄ってもらえるように。中でもイタリア語の響きがよかったそう。

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地元天竜材の産地である春野町に加工の拠点を構えた森の工房。

地域の人、モノに根ざした家づくり

2021年5月には、お客様感謝祭として「il bosco Fes」を開催。日々大工がお客様の家づくりのために作業する拠点「il bosco」で、地元の薪ストーブを主に扱うライフスタイルセレクトショップ・伝兵衛堂とタイアップして、浜松の自然を味わいながら楽しんでもらうイベントが行われました。ワークショップや木のアウトレット、食材にこだわった料理や焼き菓子、音楽ライブやアウトドアグッズの体験・販売など、大人から子どもまで楽しめる催しになったそうです。同社が行ったワークショップでは、大工がサポートしてスツールづくりに挑戦。体験した人には「大工さんってかっこいいカード」をプレゼントしました。「たくさんの方に自社の心臓部である加工場へ足を運んでもらえてうれしかったです。何よりこれまで石牧建築で家を建てたOB施主様にたくさん参加いただき、良い時間を過ごせました。家の完成後はメンテナンスで顔を合わせるくらいですが、楽しい時間を共有できたことの意味は大きかったです」と佐原さんは話します。

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地元の工芸作家とコラボする「遠州匠の家プロジェクト」にも取り組んでいます。例えば、遠州綿紬(江戸時代から続く、浜松繊維デザインのルーツと呼ばれる織物。日本の四季から生まれた温かみのある“日本色”とやわらかな質感が特徴)や木工作家との共同でソファや椅子を製作。心石工芸の「ピアーナ」というソファや飛騨産業の「seoto-EX」という椅子のファブリック部分に綿紬を用いています。

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遠州綿紬を用いた椅子とソファ。

今後、取り組んでいきたいことは、木工だけでなく陶芸やガラスなど地元の工芸作家とコラボした製品づくり。現在も地元で活躍する陶芸家・井口淳氏には手洗鉢を、吹きガラス作家栗原瑠璃華さんに手洗鉢や照明の傘を依頼することがあります。「地元の木を使い、職人がつくる住まいなので、細かなパーツも地元産にこだわりたい」と佐原さん。また、地元の山の現状をよく知る製材所と密にコミュニケーションを取り、「売れる(使いやすい)」建材を開発中だそう。「自分たちが使う量はしれている。それでは山は潤わない」と、山とともにある家づくりの将来を見据えた、長期的なものづくりを目指しています。

文:新建ハウジング編集部
写真:石牧建築提供・原常由
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