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がんばれ!と言ってしまう就労移行支援

就労移行支援は、2年間で就職を目指す障害福祉サービスです。職業訓練→企業実習→就職活動→就職と、2年以内に完結させる必要があり、そこでのプロセスにはどうしても「がんばる」がキーワードになったりします。

がんばることは、決して悪いことではないです。でも、相手に言われてがんばるものというよりは、自分なりに「がんばろう!」と思えてこそ意味がある気がします。それに、がんばりすぎていないか?と支援者や家族が気にかけることも重要なことです。

今回は「がんばれ⁉︎」がテーマです。

どうして「がんばれ!」と言ってしまうのか

就労移行支援など、就職を目指している状況だとしたら、言ってしまう理由は想像しやすいと思います。

「就職したいならコミュニケーションの練習を頑張りましょう」「言葉遣いや振る舞い方は今のうちに練習しておかないといけないですね」「社会人になったらこれくらいはできないといけないですよ」など、社会や企業で求められることを知る周囲からの期待値が「がんばれ!」「がんばりましょう!」との声かけにつながっています。

もちろん、就職する前に練習して身につけておくことは大切です。ただ、障害がある福祉サービスの利用者の方ががんばることで身につくこともあれば、障害特性上で難しいこともあるわけで、周りの価値観を押し付ける「がんばれ!」が必ず就職へとつながるとは言い切れないこともあります。

がんばれと言いたい気持ちが分からないわけではないですが、就職を目指しているという理由をもって安易にがんばれと言ってしまう状況もあるのなら、「どうしてがんばれと声かけしたのか?」と理由を説明できる支援者がいてもよい気もしています。

「がんばれ」の先にあるもの

がんばることは、自分なりの納得感の中で取り組むことが前提であるように思います。学校の先生や家族、福祉関係者などの周りの人がきっかけを与えることはあったとしても、「がんばろう!」と思うのは本人自身です。そのため、本人が納得していない中で「がんばれ!」と言ってもあまり意味はないのではないでしょうか。

自閉症や発達障害で考えてみると、学校や職場での不適応は二次障害へとつながることは多いと言われています。発達障害は先天的な脳機能障害ですが、本人の診断の時期は人それぞれのために、診断前の時期なら自分の努力不足でできないことが治らないと思い込んでしまい、自分自身を苦しめてしまうこともあります。

それに、がんばれ!は、本人の努力を助長させます。でも、努力で全てが解決するわけではなく、障害特性として凸凹もあるためにできないことはあるわけで、できないままに自己理解する必要もあったりします。

がんばれ!が不必要に努力をさせてしまい、過剰適応や二次障害を生むこともあるように思います。

「がんばれ」が行き過ぎない支援と配慮を

障害と病気は違います。先ほどの自閉症や発達障害の話なら、障害特性がゆえのできないこともあり、それは治るものではないといった理解も必要です。

就労移行支援で支援者として働く人、本人を応援するご家族にお伝えできることがあるとしたら、「支援」と「配慮」がある環境の中、ご本人の「納得感」があった上でがんばってもらうことが大事であるように思います。

・社会や企業で求められることはなにか?
・その中でご本人ができること、できないことはなにか?
・がんばることを決めた際、支援者や家族の想いは先行していないか?
・加えて、周りが価値観を押し付けてはいないか?
・がんばることは本人の納得感があることか?

ご本人ががんばるには、周りの環境が整っていることも大事なんだと思います。整理整頓された物理的な環境、職場の人が理解してくれているといった人的環境などは必要な環境です。それに、何をどれくらいがんばるかなど、がんばることの中身をよく見極めることもまた、大事なことでもあります。

就職を目指す就労移行支援だからこそ、どうしても「がんばる!」が日々のやりとりにたくさん登場してきます。がんばれることがあれば、がんばれないこともある。それに、働き方は一人ひとり様々であるため、就職に向けてがんばることは本人が自分で決めて、自分で納得した上でがんばることに意味があるんだと思います。

個人的に思うのは、がんばらなくてもご本人らしさが生きるなかで就職できると理想な気がしています。がんばらなくてもなんとかなる社会を創るのも、僕ら支援者の役割なのかもしれないですね。

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