曳船

自堕落雑記。

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翼をください(オルクセン王国史二次創作)

───空を飛びたい。 大鷲族たちが自由気ままに舞うヴィルトシュヴァインの空を眺めながら、とあるオーク族の牡はそうひとりごちた。 彼の名はヴィクトル・オリエンタール。 首都に移住してきた中流家庭に生まれ、すくすくと育ち、そう、すくすくすくすく育った故に、身長2.5mにして体重なんと550kg。 巨体でしられるオーク族の中でもとびきり巨体で、そして肥満体であった。 そんな彼にとって、地べたで生きるということは、なんとも忌々しく煩わしいものである。 とにかく体が重い。 床

    • 私の気がたしかならば(オルクセン王国史二次創作)

      《───私だ》 突如、脳裏にひびきわたる重々しい声。 研究室で開発の指揮をとっていたコボルト族ピンシャー種の男クレメンスは、バネ人形ように直立不動の姿勢をとった。 声の主は、魔術によって彼の意識に直接話しかけてきたのだ。 「偉大なる首都に輝くヴィルトシュヴァイン料理学校の星にして理事長様……!」 《挨拶はいい、ラーメンはいつできる?出来ませんでは良心がない》 「はい、必ずや……必ず次の発表会には……」 《また連絡します、努力しなさい───》 そう告げると、脳裏に居座ってい

      • オルクセン落語『シルヴァン浜』(オルクセン王国史二次創作)

        ヴィルトシュヴァインに住むグスタフ・ファルケンハインは、腕のいい国王だが浮いた話ひとつなくて臣民に気を揉ませてばかりいる。 その日も縁談をほっぽりだしてシルヴァン川の近くまで狩りにでかけていると、なにやら浜辺に黒いものが落ちているではないか。 「なんと、なんと、闇のエルフじゃないか」 グスタフは一目散に闇エルフを抱えて国に帰ると、我が王が女を抱きかかえてきたと国中飲めや歌えや大騒ぎ。 グスタフもしこたまカルヴァドスを飲まされたあげく、酔いつぶれて寝てしまった。 翌朝、

        • 巷説、オルクセン芋煮会(オルクセン王国史二次創作)

          芋煮会の朝は早い。 なにせ回り近所中のオークが一堂に会するのである。 彼らの胃袋を満たすためには、規格外の大鍋が必要であり、竈もまた規格外の大きさとなるのだ。 それ故、資材屋には夜明け前からレンガを買い求める長蛇の列ができる。 中には芋をほおばりながら並ぶオークの姿まで見える始末だ。 一方、芋煮会の予定地では場所取りが始まっている。 それもただスペースを確保しているのではない。 竈を設置する場を作るために、草を刈りとり地面に水平規をあてながらならしている。 竈が傾いて

        翼をください(オルクセン王国史二次創作)

        • 私の気がたしかならば(オルクセン王国史二次創作)

        • オルクセン落語『シルヴァン浜』(オルクセン王国史二次創作)

        • 巷説、オルクセン芋煮会(オルクセン王国史二次創作)

          とある商会の記録(オルクセン王国史二次創作)

          ───どうも、『王』垂涎の名酒があるらうしい。 とある商会の会議場で、コボルトたちが鼻先をつきあわせながら囁やきあっていた言葉がそれであった。 『王』とは無論、グスタフ・ファルケンハインのことである。 類いまれなる名君として、たいへん国民からの人気が高いばかりか、美食家、好事家としても有名である。 その王のお気に入りの酒ともなれば、たいそうな『箔』がつくであろう。 ゆえに、 「他の商会に先んじてそれを独占できれば、さぞや儲かるだろう」 利に聡いコボルトたちである、会議

          とある商会の記録(オルクセン王国史二次創作)