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あとがき~お気に召すままSHP~


S.H.Produceとしては3本目となる公演

「お気に召すまま-AS YOU LIKE IT-」

その終演からはやひと月、そして見逃し配信も今月23日に終了し、本当の意味で幕を下ろすことが出来ました。

ご観劇くださったすべてのお客様

見逃し配信をご視聴くだった皆様

応援してくださった方々および関係者各位に

心より御礼申し上げます。


本当の意味での終演を迎えた今公演に
わたくし林から心ばかりの"あとがき"を残させて頂きます

長くなるかと思いますので
お時間のある際にお付き合い頂ければ幸いです。


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この「お気に召すまま」という作品

数あるシェイクスピアの戯曲の中でも最もハッピーな終わり方をするものとして、世に知れ渡っているものですが

その実、そこまでポピュラーな作品でないようなイメージを私自身持っていました。

「シェイクスピアといえば?」

と、聞かれれば

やはり四大悲劇や「ロミオとジュリエット」
喜劇でいえば「夏の夜の夢」等の作品が浮かびやすいですが

私としては随分昔からこの「お気に召すまま」をやってみたい思いがありました。

それは、私がハートフルなストーリーを書き始めた
2010年頃より漠然と頭の中にあり、

そのときすでにラストシーンの
一同が客席に向かって「お気に召すままの人生を!」と面を切って終わる…という演出を想像していたのを強く覚えています。

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思えば、ずっと演出として挑戦したかったシェイクスピア作品、そしてその一弾目…念願叶ったような感じですね(笑)

それでも私は少しだけ怖かったんだと思います。
やっぱりプレッシャーは凄いですからね。
脚色するとはいえ、古典を演出するというのは。

別に、演出家としての自信を未だに持てているわけではないですが。
機が熟したといいますか…本当に機会と出会いに恵まれて、こうして挑戦できたことをとても嬉しく思います。

そんな念願の作品を公演する上でも
演者の皆さんの力があったからだと強く思います。

顔合わせの際に、出演者が全員揃うというなかなか凄いことがありましたが
この日にもう面白くなるなと確信できたほど
素晴らしいキャストさん達に恵まれました。

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*ロザリンド

本当に富山さんにお願いして良かったと思っています。

ほぼ復帰作での主演において
しかもシェイクスピアで、しかもしかも髭までつけてとても大変だったかとも思いますが

絶大な信頼を置けるこの富山智帆という女優さんに
ロザリンドをやってもらえて本当に感謝しています。
安心感が違いました。

もうロザリンドにずっと見えてたもん(笑)

ギャミニードとの演じ分けやテンションのギャップなど
1回ごとの消耗が激しかったと思いますが…

富山さんだからこそ成立したものも多かったと思います。
最後の口上では、説得力が涙を呼びましたね。

*シーリア

原作(小田島訳)を読み返した瞬間に
「はい、鈴野さん呼ぼう」ってなりました(笑)

そのくらい私の中ではイメージにぴったりで
ハマり役とはまさにこういう事かと思うくらいに
私の描きたい「お気に召すまま」のシーリアと鈴野智子さんが重なりました。

お転婆かつツッコミ側にも回らないといけない
実はとても難しいポジションだったと思いますが
素晴らしかったと思います。

最後の方では、役柄本来の気品と強さを演じ
シーリアの深みや、奥行きを作ってくれました。

*オーランドー

竹内寿くんとは、昨年の2月に
ミュージカルのお仕事で一緒になってから
その声の良さや役者魂をずっと覚えていました。

原作を読み返したとき、彼にお願いしたいと強く思い
今回実現できたことを本当に嬉しく思います。

チラシ撮影のスタジオで再会したときは嬉しかったな。

冒頭から畳み掛ける長セリや
感情の起伏にも苦労したかと思いますが
その役者魂で現場や板の上を引っ張ってくれました。
また必ずご一緒したい俳優さんです。


*前公爵

おくむらさんは、少し前に体調の悪い期間が続いていて
この公演に関しても、相当悩まれていたように思いました

ですが、あの優しい語り口や、言葉の一つ一つは
おくむらさんにしか表現できないものばかりで
観ている者を包んでくれるような雰囲気がありました。
本当はとてもボケたい人なのに(笑)

やはり最初の方は苦労されていたと思いますが
またこうやって一緒に作品をつくれて嬉しかったです。

心優しい先輩に本当に感謝。


*フレデリック

東野伸一さんとは今回が初めてのお仕事でしたが
顔合わせの際に、「あ、間違いないな」となりました(笑)

技巧的な面もありますが
若手のような前に出る姿勢など
芝居が本当に好きなんだなあと感じて
とても嬉しく思っていました。

フレデリックの絶妙なあの悪者感というか
黒幕にはなり切れない感というか…

後半のフレデリックはほぼ脚色による追加シーンで
ラストの改心するシーンなんてオリジナルで差し込んだものだったのですが…東野さんの立ち振る舞いでああしたキャラ位置が確立したように思います。

若手たちの面倒までみてくれて…本当にありがとうございました。今度お菓子渡します。

*チャールズ

チャールズこと杉山大地くんは、今回が初舞台。
最初は緊張の塊だったし大変苦労したと思います。

でも、彼だからこそのチャールズだったと思うし
ハマりっぷりが凄かった。

もう稽古場で「杉山くん」と呼ぶ人なんて誰もいなかったね。
稽古場の中でも外でも「チャールズ」って呼ばれてたくらいだったね。
いないときにも、「そういえばさっきチャールズがさ」って言われるくらいチャールズでした。

そのくらいハマってたってこと。

気遣い屋で、色んな心労も絶えなかったかと思いますが
あなたがこの役でいてくれたことを本当に嬉しく思います。


*ル・ボー

浅見和哉くんも初舞台でした。
でもそうは思えないくらいしっかりしていて
かつ、その伸び代は目を見張るものがありました。

何よりとても素敵な声の持ち主で、滑舌も明瞭。
初舞台のはずなのに、彼が登場したり話すと何故だか安心するんですよね。
そして最後は全部おいしいところ持っていくという(笑)

「お前何なんだよー!」ってフレデリックとチャールズに言われてましたね(笑)

実は、このル・ボーがラストシーンで登場する場面は
脚色なんです。
本来、ル・ボーは前半で出番がなくなる役でしたが
私はとても好きな役柄だったので
フレデリックが改心するように仕向けたキャラ位置にまでしてしまいました。

いや、ハマってた。
ありがとう浅見くん。このやろう。


*アミアンズ

小春さんには、スタッフワークで少し前からお願いすることが多々ありましたが
今回、役者としてオファーさせて頂き
このアミアンズが出来上がりました。

元々、アミアンズという役は男性で
それを女性にしたいな、と書いているうちに
小春さんにお願いすることになりました。

そして流石だな、と思うところが多かったですね。
初登場シーンでの怒涛の長ゼリは、動きも含めて
大変素晴らしい仕上がりでした。
声もいいし、立ち振る舞いもいいし。
またお願いします。

ちなみに、会場内でのアナウンスは彼女でした。
ご来場くだった皆さん気付けましたか?


*ジェークイズ

牧野達哉さんとも今回が初めてだったのですが
初読みのときから、もう不安はありませんでした。

とにかく全てが素晴らしく、遊び心もある。
ちょっとありすぎてどうしようかと悩んだときもありましたが(笑)

今回の最年長でもあった牧野さんが、一緒に作品づくりを楽しんでくれていて本当に嬉しかったです。

好きシーンは? と聞いたときに
鹿!と答える人も多いでしょう。

何よりも、シェイクスピアに精通していて
その視点などで若手にもアドバイスや
時には私にも思ったことを伝えてくれたり
大変有難かったです。

「この世は舞台である」という言葉は実は
原作(翻訳)ではジェークイズが言うものなのです。
人生を七幕の舞台に例えるのも、有名ですね。

本来、この役はあまり物語の大筋には絡んで来ないのですが
今回はしっかりと絡むようにしました。

気になった方は原作のジェークイズをチェックしてみるのも面白いと思います。


*タッチストーン

富山さんと同じチョコレイト旅団さんということで
今回出演して頂くことになりました野町せんせい。

初めてご一緒したのですが、彼の頼もしさには
ずっと助けられていました。

演じるプランや役作りを丁寧に行いながら
即興的な調整力もあって
ほとんど、最初の状態から完成系に近かったと思います。

そんな野町くん演じるタッチストーンに
演出としてどう応じるか、みたいな事を考えてほくそ笑んでいたのは内緒。

私はこのタッチストーンが大好きなのです。
シェイクスピアといえば道化ですよね(笑)

それゆえに(抜粋や言い回しは変えても)原作のセリフや言葉遊びをなるべくそのままにしたのも思い出深いです。


*アダム

飯村くんとはもう10年以上ぶりのお仕事でした。
付き合いもかれこれ13年くらいあるんですかね。

そんな彼に「お願いします」と電話したのが
もうはるか昔のように思えます。

やっぱり彼は安定感が抜群で
観ている側としてもどこか安心して観れる部分があったのではないでしょうか?

アダムという役は元々歳をとっている老従者なので
今回は少しその設定をごにょごにょしました。

オリヴァーがアダムに「老いぼれ犬め」と暴言を吐くセリフを、「犬畜生め」に変更したのも懐かしい裏話。
…おかげで"オリヴァーは暴言のレパートリーが乏しい"という裏設定が生まれました(笑)


*コリン

齋藤さんは私が大きな信頼を寄せている役者さんの1人です。
やっぱりお願いして間違いなかったなあと本番中もしみじみ思っていました(本人には言わないけど)

なんでしょうね、あの安心感は。

長い付き合いになる齋藤さんともこうしてまた舞台を堪能できてとても嬉しく思います。
そして色々頼らせて頂きましたm(_ _)m

コリンという役は、たんなる脇役に映るかもしれませんが
その実とても重要なポジションを担っている存在です。

彼がいなければ、ロザリンド達はあんなに簡単に住む土地や家を手に入れることは出来なかったし、
彼という"調整役"がいて初めて羊飼い達の自由さが強調される。
幸せな門出には、笑顔で見届けてくれる存在が必要なのですから。


*シルヴィアス

見山くんとは実は初めて一緒にお仕事させて頂きましたが
彼は、「鶫」にも出てくれていた初瀬川くんと同じ劇団鼎のメンバーですので
交友というか、お互いに知っている仲ではありました。

今回ご一緒できて楽しかったし
やっぱり心強さはありましたね。

あの激情ぶりといったら凄かったですよね
シルヴィアスという人はもう素直が服きて歩いてるような存在なんでしょうね(笑)

その意図を汲んで、見山くんもすぐにボルテージ上げてくれていたし
あの激しさを出せる役者さんもそうそういないんですよね。

恋の狂人。まじで狂人。


*ファービー

稗田さんともとても久しぶりにご一緒できました。
昔、音楽劇に出て頂いた頃が懐かしい。

そのときとは比べ物にならないくらい
ガッツリと芝居をしてもらい、何となく嬉しかったですね。

ファービーは実は立ち回り方が難しいので
彼女が苦悩しつつ、自分なりのキャラクターを作り上げてくれて感謝しています。

原作のファービーは、ギャミニード(ロザリンド)に惚れるがあまり回りくどい手紙を書いたり
シルヴィアスを顎で使ったりとなかなかの自分勝手な小悪魔ぶりを発揮するのですが、今回は稗田さんの愛嬌もあってか
勝気だけどキュートな印象になりましたね。

劇中ダンスの振り付けはすべて彼女にお願いしました。
楽しんで頂けましたでしょうか?


*オードリー

藤さんのおかげで凄く愛らしいオードリーになりましたね。
とてもいいキャラしてました。

彼女とも初めましてだったのですが
稗田さんがくれたご縁に感謝です。

「本当に実現しちゃった!」っていうセリフの言い回しがとても好きでした、ええ。

オードリーは元々、原作ではそんなにフューチャーされている役柄ではなく
タッチストーンと結ばれるものの
いつの間にかくっついてていつの間にか結婚したり
おそらく本筋に絡んでいないからなのかもしれませんが
そういった印象があります。

ですが、前述のファービーとともに
脚色で前公爵やその周りとの絡みも持たせて
今回のポジションが生まれました。

「お気に召すまま」は恋人達の物語なのに
女性が少ない…という戯曲なので
少し花を持たせる意味もあり
このオードリーとファービーを双子のような、コンビのような…そんな位置付けにさせて頂きました。

男っぽい仕草もしつつ、しっかり女子という
アンバランスなオードリー楽しかったです(笑)


*ウィリアム

小林くんも今回が初舞台ということでしたが
顔合わせのときから印象が強かったのを覚えています。

彼の演じるウィリアムの雰囲気というか…
なんでしょうね、もう彼にしか出せない味ですよね。

色々と苦労したと思いますが
頑張って役柄自体を自分の力で美味しくしてくれたこと
とても嬉しく思います。

温かいミルクを飲んだあと、ちょっと落ち着いたウィリアムが
シルヴィアスの激情を聞いてまた泣き出してしまう…(笑)
あのシーンのファンが出演者に多数いました(笑)

ウィリアムは、原作ではたったワンシーンだけの役柄なのですが
淡々と現れて淡々とフラれるようなその様がなんだかとても滑稽でもあり、そして悲しくもあり。

ですが、タッチストーンとオードリーの恋慕を描く上で
やはり必要なポジションでもあるのです。

今回は、コリンはもちろん前公爵にも可愛がられている
"みんなの弟"のようなポジションで登場してもらいました。


*オリヴァー

中谷さんとも10年振りにご一緒です。
彼が戦友と呼んでくれたのがとても嬉しかったのを覚えてます。
いや本当に。戦友。

そんな苦楽をともにした中谷さんにお願いしたこのオリヴァー。
いやー…なんという可哀想な男なんでしょうね。

出番の数はそれほどでもないわりに
印象に強く残るのは、オーランドーとの和解のシーンもありますが、中谷さんの立ち回りによるところが大きいでしょう。
彼にしかできないオリヴァーを演じてくれた証拠でもありますよね。
本当にお願いしてよかったです。

観た方からちょっと人気ありすぎて
私は気に食わない顔をしてました(笑)

オリヴァーがオーランドーと和解し、シーリアと結ばれるキッカケになったシーン。
あれは、実は原作にはまったくない創作でした。
今回の最大の脚色部分でもあったかもしれませんね。

中谷さんにだから任せられたオリヴァーに賛辞を送りたいと思います。



…結局全員について書いちゃう、という(笑)

役柄のイメージも、シーンの構成も、セリフのたったひとつをとっても

気になった方は、この"お気に召すままSHP"と原作の違いをご自分の目で確かめてみるのも面白いかもしれませんね。

普段は古典戯曲を読まない方も
この機会に触れてみて頂けると嬉しいです。

私としても、今後オリジナル作品と並行して
こういった戯曲に挑戦できたらいいなと今回強く感じました。

私自身の 作家としてや演出としての奥行きも
少しは増したならいいなと思うばかりです。

とはいえ、色んなことに挑戦して成長していきたい。


まだまだ、新型ウイルスがどうなるか分からない
暗雲たちこめる時代ではありますが…

こうしてまた生の舞台を興行し
皆様に明るい気持ちや優しい心を届けられたら
これ以上の幸せなことはありません。

そして願わくば、1人でも多くのお客様と
また劇場で再会できますことを。


とても長くなってしまいましたが
これにて、「お気に召すまま-AS YOU LIKE IT-」は幕を下ろさせて頂きます。

5日間の公演期間、そして約1ヶ月におよぶ見逃し配信と振り返りを楽しんで下さったすべてのお客様へ御礼申し上げます。

そして、関係者の皆様
スタッフの皆様

素晴らしき出演者の皆様



誠にありがとうございました。


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S.H.Produce
「お気に召すまま-AS YOU LIKE IT-」
総合演出/脚色:林 将平

お問い合わせ:okinimesumama.shp@gmail.com


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