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自己防衛とブーメラン

車の事故で10:0という過失割合になることは稀です。私の知っている範囲では後ろから追突した場合に、この過失割合になるようですが、少なくとも事故の大半は双方に過失があった、と扱われます。
これは何も車の事故に限った話ではなく、世の中のトラブルの大半というのは8:2にせよ9:1にせよ、少なからず双方に何らかの過失があったのではないか、というのが私の基本スタンスです。

ところが人間というのは弱い生き物で、自分の過失をなかなか認められないようにできているようです。昨今の政治事業をみていると、つくづくそう感じられます。

R党のRさんという方が都知事選に立候補されるのだそうで、世間では(応援する声もあるようですが)政策がない、国政と都政を混ぜこぜにして争点化するな、二重国籍問題の説明責任を果たせ、といった声もあるようです。それに対して同じR党に所属するTという女性参議院議員さんが、「彼女は上昇志向で立候補したのではない」「(彼女は実は繊細な女性だから)Rを守り゙抜こう」とのたもうたのだという記事を読みました。

同志ですから肩を持ちたい気持ちは分かります。
が、絶妙な論点ずらしで滑稽にすら見えてしまいました。
まず、R氏の立候補に懐疑的な人は別に上昇志向云々を問題にしているのではありません。先に述べたとおり、政策がないこと、国政と都政をまぜこぜにした情報発信をしていること、二重国籍問題について十分な説明がなされていないことを事実として指摘しているに過ぎません。ボロボロになることを覚悟して、とずいぶん悲壮な書きっぷりですが、ご本人が少し情報を発信するなり、説明するなりすれば全て回避できる内容ばかりです。
事実を事実として指摘することも誰かをボロボロにするような個人攻撃扱いなのだとしたら、もはや誰も事実を指摘できません。
人間関係とは鏡のようなもので、相手のXという行為がAに見えるのならば、それは自分がXをするときにAという意図を働かせているからなのだそうで、ということはTさんはやはり事実を指摘する際に相手を責めたり打ったりしている、ということの証左ではないかと思われます。

合わせて「繊細だから守り抜こう」とはどの口が言うのかと首を傾げたくなります。今を遡ること10年ほど前でしょうか、時の総理大臣に対して「アベ政治を許さない!」などというプラカードを掲げて活動家のような行動を起こしていた姿を私たちは忘れません。Rさんは繊細だからダメで、首相は繊細じゃなさそうだからOKということなのでしょうか。
反R派の人が「Rの都知事就任に反対!」などとプラカードを掲げたら、それこそ大騒ぎする、という意思表明かと思われます。

誰でも自分の欠点や弱点、不備や不足を指摘されるのは、あまり気持ちの良いものではありません。ついつい自己防衛してしまうこともあるでしょう。 しかし、多少の誤解があるにせよ、10:0で自分が正しいなんてことは稀なのですから、政治家と呼ばれる皆様には、そんなときこそ自分の至らぬ部分については、誠意を持って頭を下げる度量が必要なのではないかと思います。
間違っても自己防衛のためにブーメランを持ち出してはならないのではないか。そんなことを思わずにはいられません。

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