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【しくじり企業】米トイザラス:同業ライバルに負け、アマゾンに止めを刺される

概要
1957年創業の家具小売店トイザラスは、子供用玩具に手を広げ飛躍。業界としては珍しいスーパーマーケット方式(顧客が店内より商品をピックアップしてレジ持ち込み)採用により、一時は全米最大の玩具小売りにまで成長。しかし、①収益性低下(価格競争と支払利息による収益圧迫)と②ネット販売への出遅れにより、2017年小売業第3位の負債を残して破産となった。

1. トイザラスの歴史

1957年創業の家具小売店はトイザラスは、子供用玩具に転身により飛躍。業界としては珍しいスーパーマーケット方式(顧客が店内より商品をピックアップしてレジ持ち込み)を採用し、巨大な店舗を構えた。1980年代「トイザラスが出店すると地域の中小おもちゃ屋が全てつぶれる」とまで言われた。
しかし、後述の失敗原因①と②により苦戦。特に2005年投資ファンド(KKR、ベイン、VRT)に買収されるも、それにより発生した負債の支払金利(毎年400憶円)は、かろうじて確保した利益を食いつぶした。アマゾンをパートナーとしてeコマースによる起死回生を狙うも失敗。
倒産1週間前には、取引先玩具メーカーのうち40%から現金支払いを求められるまで信用不安が起こり(従来は60日程のユーザンスを受けていたにも関わらず)、ついに2017年約5000憶円の負債と共に倒産。
700店舗閉鎖と33,000名解雇は言うまでもなく、倒産時取引先玩具メーカーとしても総額200億円の未回収金が発生し(ちなみにレゴ1社で32憶円)、業界全体に悪影響をもたらしたのだった。

2. 失敗原因①収益性低下(価格競争と支払利息による収益圧迫)


1980年代トイザラスは安価を武器に全米屈指の小売店として業界を支配した。しかし1990年代に入ると世界最大のスーパー・巨人ウォルマートによって苦境に立たされる。ウォルマートはトイザラスを上回る価格競争力を持ち、90年代の10年間で半分まで減少。
また、2005年にはファンドによるLBO(Leveraged Buy Out:借入金を活用しての買収スキーム、手元資金を上回るM&Aが可能)にて6600憶円で買収され、その際の負債と支払金利により、
・商品価格を下げれば金利が払えず
・価格を据え置けばマーケットシェアを失う
という板挟みを最後まで解決できず。

3. 失敗原因②ネット販売への出遅れ

トイザラスは1999年にネット販売専門の子会社を設立するも、既存店舗との共食いを恐れるあまり行動に制限がかかり軌道に乗らず。2000年にはアマゾンとのパートナー契約締結により、アマゾンはトイザラス以外の玩具を販売しない旨取り交わした。しかし商品ラインナップを重視するアマゾンは約50億円の違約金を払ってまでトイザラスとの関係を解消。その後もトイザラスはネット販売への移管を果たせずに終わる。

4. まとめ:好調な間に次のビジネスの種をまく

トイザラスはインターネットに駆逐された典型例として紹介されることが多い。私見だが、確かにウォルマートとの競争のみであれば、多少シェアを落とせども破産には追い込まれなかったと思われる。まだ店舗経営による潤沢なキャッシュフローがある期間に、ネットビジネス開発に本腰を入れていれば、今でもトイザラスでの買い物を楽しめたであろう。

目先の投資回収にとらわれず、好調な事業が生み出すキャッシュを新事業創成の投資することで、環境変化への下方耐性を構築する必要があり。得てして目の前の通常業務にのみ邁進すると、マクロな環境変化に気が向かないことが多い。日常業務はもちろん大事であるが、時には高い目線を持ち、世の中がマクロな動きや他業界の動向にも注意を払うべきである。


参考文献


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