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【声明】噓のない社会・希望ある明日へ  福島原発汚染水の海洋放出に反対する


2023年11月30日から12月12日まで、COP28がアラブ首長国連邦のドバイのエキスポシティで開催され、日本をはじめとする米英仏加など22か国(条約締約国は197ヶ国・地域)が「パリ協定」で示された1.5℃目標の達成に向けて世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという宣言文書に署名した。原子力プロジェクトに対するファイナンスについても取り上げられ、世界銀行を筆頭とする国際金融機関並びに各国の金融機関等に対し、融資対象に原子力を含めることを奨励し、技術面で実行可能かつ経済性がある場合には原子力発電所の運転期間を適切に延長させることにも言及された。
簡単に言えば、資金援助の条件を付けることで自国で頭打ちになった原発を後進国に押し付け、老朽化した原発に固執しても経済優先を貫こうというものだ。

だが、これは世界の流れではない。COP28では終了後、 2030年までに再生エネルギーの発電容量を3倍に増やし、エネルギー効率を2倍にするという目標に、日本を含む118か国が合意したと発表されている。
「所沢市民が手をつなぐ会」は再生エネルギー発電を支持し、いかなる原発推進政策にも反対する。これからも、ゾンビのようによみがえる原発推進だが、「原発は斜陽産業だ!」と伝えていく。

そして、9月1日に会として打ち出した「声明」を、あらためてnoteに掲載しておく。



2023年8月24日、東電福島第一原発事故で生じた汚染水の海洋投棄が開始された。
所沢市民が手をつなぐ会は8月27日に「放射能汚染水の海洋放出に反対し、被害をさらに広げることのないよう多くの市民とともに考えていくこと」を決議し、「漁業関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」との約束を踏みにじった岸田内閣の暴挙に強く抗議する

1.岸田内閣は汚染の責任をどのように取ろうとしているか

福島原発事故は、当時の福島第一原子力発電所吉田所長が「最悪、東日本壊滅をおそれた」と語っているほど深刻な過酷事故であった。
汚染水に関しては、2013年に「汚染水対策の三つの基本方針」が出されている。

(1)汚染源を取り除く
(2)汚染源に水を近づけない
(3)汚染水を漏らさない。

という内容だ。

ところが、岸田内閣は8月22日に関係閣僚会議で汚染水の海洋放出を決定し、24日に放出を開始した。
日本政府やメディアは、国際原子力機関(IAEA)が「国際的な安全基準に合致している」とした調査報告書(7月4日)によって、安全性と正当性が示されたかのように主張している。しかし、放射能汚染水の海洋放出は国際法上の義務に違反している。ロンドン条約およびロンドン議定書は海洋環境を守るため廃棄物などの海洋投棄を禁じており日本も批准しているのだが、日本政府は原発汚染水の放出は海洋投棄には当たらないとの立場を貫いている。

矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授は、「放射性物質を環境に投棄すること自体してはならないというのが原則。投棄したら国際海洋法違反。IAEAが言っている安全基準は、生物の命に焦点を当てて可能な限り被爆被害を『低く』押さえるためのものではなく、原発が稼働し続けるためにこれ以上厳しくしたら『稼働できない』ことを避けるため、原発維持のために仕組んだ基準である」と述べている。さらに「海の汚染・食物連鎖は加速する」と警鐘を鳴らし、人間生存の安全保障に関する国際条約は国内法に優先すると指摘したうえで、政府の取っている対応の誤りを国際的視野の無さと批判している。

そもそも政府が錦の御旗としているIAEAの調査報告書は、日本政府から示された海洋放出計画資料から判断し作成したものであり、「海洋放出の方針を推奨するものでも承認するものでもない」との記載があることを忘れてはならない。IAEAは、原子力分野での協力を進める世界の中心的機関といわれ、原子力を広げ管理する機関の意見を汚染水対策の安心の保障として持ち出すことは、国民の正確な判断を歪めることになる。また安全性を示す資料は、これまで第三者の測定(クロスチェック)を頑なに拒んできた東京電力が作成したもので、都合の良い数値だけを取り出して作った資料ではないかという疑念は消えない。

海外からの批判も相次いでいる。岸田内閣は「IAEAの承認」をもって海洋放出を決めた政府の方針を国民は納得すると考えているが、国内外の反対の声を無視した暴挙は、新たな原発再稼働へのスタートであり、私たち「つなぐ会」はこれを認めることはできない。

 2.福島の放射能被害の現状をどのように理解すべきか

「現在の福島の放射能汚染は広島原爆の168発分に相当し、汚染水にはトリチウムだけでなくセシウム137,134の他に数多くの放射能物質が含まれている。しかも、12年たった今でも被ばくは危険で、放射能の管理地域は現状の立ち入り禁止区域だけでなく、福島県の中心部までの広範囲にしなければならないものである。多くの県民が被ばくにさらされている現状にあるのに、国は原発裁判では東電旧経営陣を無罪にして、汚染の実態を小さく見せている」と講演などで語っているのは、元京都大学原子炉実験所助教で原子力廃絶の研究を続けている小出裕章さんだ。
未だに「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。小出さんのように心配だという人たちに対して「風評被害を作り出している人たち」というレッテルを貼り、原発事故はもう終わったかのように帰還政策が進んでいることに大きな違和感と不安を覚える。

子どもの甲状腺がんについても、福島県や政府は従来のがん統計と比較すると数十倍の多発であることを認めながら、因果関係を認めれば、安心安全の原子力神話が崩れてしまうとばかりに「放射線の影響とは考えにくい」としている。
汚染水の海洋放出の強行は、岸田内閣が進めようとしている原発を再稼働させるために、福島原発事故はもう過去のこととして忘れさせるための強引な政策の一環なのである。

 3.希望ある明日に向かって

岸田首相は「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で、これまでに再稼働した原発 10 基に加えて、7 基の原発を来夏以降に再稼働する方針を示し、福島第一原発事故を教訓として掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」方針を「原子力を最大限活用していく」と政策を大転換した。背景には、世界の原子力村とアメリカの思惑があり、三菱重工などによる日本の原子力産業の再生の意図がある。

『3・11大津波の対策を邪魔した男たち』を著した島崎邦彦元日本地震学会会長は、大津波の可能性に向き合い、防潮堤の設置と建物の水密化を実施していたら過酷事故は防げたかもしれないと指摘し、それを妨害してきた原子力ムラの存在と大地震予告をさせまいとする東電をめぐる動きを告発している。

私たちは情緒的に汚染水の海洋放出問題を語るのではなく、マスコミから流される情報の真偽を見極める目を養い、広く議論を重ね、汚染水の解決策も政府のいう「海洋放出しかない」というような浅はかな対応ではない明日を生きる日本の道を作り出していきたい。

岸田内閣が進もうとしている道は、私たちが求める道ではなく、マスコミの在り方もジャーリズム本来の役割が問われている現状だが、これからの私たちの運動には、憲法による平和主義、基本的人権の尊重、国民主権を確立した歴史的戦いの発展の土台がある。

噓のない政治と社会こそ求める明日への第一歩である。
21世紀の世界の新たな発展を描きながら、現状の政治の中からどれほどの希望が見えてくるか、私たちの活動の中からその実現に向けて力を作り広げていこう。

2023年9月1日  
所沢市民が手をつなぐ会  


 

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