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ドイツと日本を単純比較して良いのだろうか / 『ストラテジー&イノベーション』第5章の要約

大学院で作成したレポートをnoteに記録していきます。
守秘義務に関わる内容があった場合は該当箇所を書き換えて掲載する事があります。


今回のテーマはグローバル化の戦略です。
構成の都合上、まずはテキストに対する疑問点を記載します。

日独の海外進出に対する積極性比較

P.286の図表5-16に日,独,米,中,韓 5カ国の直接投資残高と輸出額のGDP比が掲載されている(出所:国際貿易投資研究所ならびに総務省統計局)
この図表によると日本はそれぞれ17.8%と13.5%、ドイツは45.2%と41.2%となっており、これをもってドイツ企業の海外進出の程度が非常に大きいことが説明されている。そして日本の企業もリスクをとって積極的な海外進出を行うべきと続く。
しかし、ドイツ企業の海外進出についてはその殆どがEU域内に向けてではなかっただろうか。
経済産業省が出している2012年の通商白書によると輸出の7割、対外直接投資の8割がEU域内向けとなっている。こうなってくるとドイツのEU域外向けは日本と大差無いように思える。
EU内の整備されたルールや優遇措置、為替変動リスクの無い共通通貨ユーロ、こういった低リスク故の海外進出なのであれば、日本企業のリスクテイク度合いや積極性がドイツに比べて低いとは一概に言えないように考えるがどうだろうか。


テキスト『ストラテジー&イノベーション』第5章の要約。
A4用紙1枚程度、記述形式は自由、ファイル形式はword。
(2023/6/3 提出予定)

第5章 グローバル化の戦略

5章1節.グローバル化の基本

「グローバル化」とは本テキストにおいて下記のように定義されている。

「自国と自国以外の複数国の国境を跨いで事業活動を行っている状態」

『SBCP Strategy & Innovation』産業能率大学 , 2018 , p.246-247

それに対して「国際化」は自国から海外への拡大・進出する行為そのものを示す意味合いが強いとし、この2つを分けて考えている。
グローバル化した企業は多国籍企業またはグローバル企業と呼び、本国志向・現地志向・地域志向・世界志向の4つの型に分けられる。
企業は新しい市場や比較優位となる資源を求めて国際化を目指すが、外国という環境で組織のマネジメントを行う事は困難を伴う。しかし企業は困難に直面した際に国内回帰するのではなく、国際化の程度を進展させることで学びを得てリスクに対処する。多くの企業の国際化は典型的な経路をたどり段階を踏んでいくが、段階を飛び越える事もあるし同時並行して移行することもある。
国際化を行う場合、利害関係企業との契約や関係性に応じて組織形態はいくつかのパターンがあり、前述の段階や志向に応じて「市場取引」「中間的構造」「段階的な内部組織」として分類できる。

5章2節.グローバル戦略の概要

本テキストでは世界市場での成功を目指す戦略をグローバル戦略、各国個別市場での成功を目指す戦略をマルチドメスティック戦略として分けている。
Ghoshal(1987)はグローバル戦略について以下のフレームワークを提示している。まず企業の戦略目標としての「効率達成」「リスク管理」「イノベーション」を明らかにする。そしてマクロの視点による環境の分析を行い「国の違い」「規模の経済」「範囲の経済」の競争優位の源泉を確認し、マトリックス的に自社のコア・コンピタンスと照らしあわせて競争優位を獲得を目指す。

5章3節.日本企業のトランスナショナル化

本節では日本企業のグローバル戦略は、その特性に合わせてトランスナショナル化するのが望ましいとしている。すなわち日本企業はミドルからの創発的な学習を得意としており、国際化においても海外への能力移転と現地知識獲得を目指すことが重要である。
一方で現地適合と本国組織との統合強調はトレードオフの関係にあると言われているため、実際のホンダのケースを確認するとトランスナショナル化の過程で現地知識の活用という分化を促進されている。

5章4節.日本企業の新興国への進出

新興国への進出にあたって、先進国との違いに直面し日本企業はジレンマが発生している。それは市場規模の小ささ、不確実性や不透明性の高さといった外部要因や、製品と市場のミスマッチ、資源配分が先進国に偏っている事から新興国に注力しづらいといった内部要因がある。こういったジレンマに対して先進国とは違う戦略の構築が必要としている。
新興国はその国特有の要因に振り回されるリスクが先進国に比べて高いため、PSET分析によって環境を分析する事が有用と考えられる。そして先進国における自社の強みや弱みは新興国では全く違ったものとなるため、PSET分析で明らかにした新興国の環境に照らし合わせたSWOT分析を行い、改めて強みと弱みなどを検討し直す必要があると考える。

5章5節.企業内国際分業と中小企業

国際化というと大企業による動きと考えられがちだが、中小企業にも国際化によるメリットがある。それは海外拠点との適正な分業による生産性の向上である。国際化の初期段階では取引コストが別途かかる事となるが、生産量の増加に伴い単位あたりの固定費は減少し分岐点を超える事で生産性の向上へと繋がる。また、国内では硬直化していた取引関係についても、海外ではその慣習に囚われる事無く、国内では考えられなかった企業間での新たな取引が発生する事もある。
海外進出というと国内産業の空洞化を心配する声もあがるが、海外での適切な事業拡大は国内事業の活発化へと繋がり空洞化の回避となる。
以上のように海外進出は中小企業にとっても魅力的ではあるが、日本の中小企業は海外進出に対して消極的であるというのが本テキストの主張となる。
(ここで当記事冒頭の疑問点へ繋がる)

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