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おじいさん3人組、ロイホでガチ語り

私が実家にいた頃の話。

その日祖父は、小洒落たおじいさん用のセットアップみたいな服装に、ハンチングを被って何やら準備していた。

私「おじいちゃんどこ行くの?」
祖父「これから仲間とロイヤルホスト行くんだよ」

え、徒歩5分圏内の近所のロイホにわざわざオシャレして行くのかよ。てか、仲間って何だよ。友達じゃないの?とか思いながら、

私「仲間って誰?」
祖父「いつもの〇〇と〇〇だよ。」
私「なんだ、おじいちゃんとめっちゃ仲良い人じゃん」
祖父「まあ、昔からの仲間だよ」

だから、仲間って何なんだよ。
友達<仲間=親友ってこと?
仲間ってワード絶対譲らないんだな。

私「ロイホに昼ご飯食べに行くの?」
祖父「そうだな。持ってる株主優待券を消化しないと期限が切れるから、俺が飯食い行こって誘ったんだよ」

おじいさんになると、そういう食事の誘い方もあるのかと感心していると、

祖父「じゃあ行ってくる」とおじいちゃんは仲間の所に出かけて行った。

私はその日、駅中のデパートに買い物に行く予定でいた。
駅に行くには、祖父の行ったであろうロイホが通り道になるので、通りすがりに自転車を漕ぎながら、祖父たちがいるか中を覗いてみた。

すると、確かにいる、おじいさん3人組。
そのうち、1人はちょうどドリンクバーでコーヒーを取りに行っていた所だった。

食後にコーヒーでも飲みながら、ゆっくり話でもしているのかと思い、私は駅に向かった。

私は、買う予定のものが当初のデパートになく、結局、電車に乗り、別のデパートに行き、用事を済ませていた。その時、15時を回っていた。

駅から家の帰り道、流石に、もう祖父たちも帰っただろうと思いながら、再び窓の外からロイホの中を覗いてみると、


うわ。まだおじいさん3人組いる。


えっ、長くない?
私も高校生の頃、サイゼリヤのドリンクバーだけで、何時間も友達と粘った経験はある。

でも、80超えたおじいさん3人だよね?
それも株主優待券で粘っている。

しばらく見てると、何の話をしてるんだか、めちゃくちゃ楽しそうにケラケラ笑っている。

完全に高校生のノリと同じだ。

私はなんとも言えない不思議な気持ちになりながら、家に帰った。

それから祖父が帰って来たのは、2時間後の17時。

11時にでかけて、帰って来たの17時。
カラオケだったらフリータイムの時間区分だよ。

帰って来た祖父に、

私「おじいちゃん、どんだけロイホで喋ってんの?長過ぎじゃない?何をそんなに喋ってんの?」と聞くと、
祖父「〇〇さんの葬式行くか?って話したり、株の話したり、最後は将棋やって帰って来た」

お葬式参加有無は、世代的にやっぱりその類の話もあると思うけど、最後の将棋やったってなんだよ。ファミレスでやっていいのか?道具は?最後にって、居酒屋の締めのお茶漬けみたいなノリで将棋するな。

もう私の頭は、?で溢れていた。

私「将棋ってロイホでやっていいの?ってか、誰かそれ持ってきたの?」
祖父「俺らいつもやってるよ。〇〇が折り畳みの持ってんだよ。あれ便利だよ」  

う、うん。
もうわかりました。十分でございます。

それから数年後、近所ということもあり、妹がそのロイホでバイトをすることになった。妹がバイトを始めて割と早い段階で、おじいちゃんたち3人組は、裏で「三銃士」と呼ばれていたことを知った。

抜群のネーミングセンスである。

妹はバイトに慣れるまで、中々、あの三銃士のリーダー格が自分の祖父ということを言い出さずにいた。

慣れていないタイミングで、カミングアウトしたもんなら、小さなミスをしただけでも「やっぱりあの三銃士の孫だから」というレッテルを張られ兼ねない。そのため、カミングアウトのタイミングは熟考していた。

妹は、ある程度時間が経ったタイミングで、ようやくカミングアウトしていた。衝撃のカミングアウトに社員・バイト含めロイホ内は騒然としたという。

そして、妹は就職を機に、バイトを辞めたが、当事者である三銃士のおじいさんたちは、自分達が裏で三銃士と呼ばれていることも知らず、「孫がバイトしていたファミレスにお金を落とす陽気なおじいさんたち」として、今もなお意気揚々とロイホに通い続けている。


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