思っていた恋愛小説と違った
読んだのはずーっと前。
年末のダヴィンチで発売情報を知ってから楽しみに待っていた一冊。
発売された直後に買い、一気読みした。
この感想を言葉で広めたいと思いつつ、胸に広がる複雑な感情をうまく言葉にできず、うだうだしていたら本屋大賞を獲ってしまった。
後出し感があるけれど私も読んでたんです!!!ということで、ようやく感情がまとまってきたので執筆を進めることとする。
あらすじ
暁海と櫂を見ていると、どうしてそんな親のために…
自分の人生なんだから、自分の思った通りにすればいいのに…と思ってしまう。
でも、私は知っている。
親は、腐っても親。
子どもは親が好きで、どうにもこうにも好きなのだ。
それは、自分で物事を決められるようになってもそう。
多くの子供たちと関わってきて、すごく感じる。
親との約束を守ろうとするし、自分の親に好かれようとする。
周りがどんなに『あなたは間違ってないよ』と言っても、「お母さんがそれはダメって言っていたから、僕はダメなんだ」と涙を流す。
それはもう、一種の呪いのよう。
無条件で愛されなければいけないのは子どもだけれど、実際に無条件で愛してもらっているのは親の方だ。
だから、現実は複雑で、難しい。
周りの大人が、解放してあげたくても、本人たちがそれを望めない。
心のどこかで切り離せない。
だから二人は惹かれ合ったのかもしれない。
この話で魅力的に映る人物は、暁海の父の不倫相手でもある、 だろう。
彼女の魅力は自分が欲しいものを手に入れるために、他のものを失う覚悟があるところだ。
そんな彼女の個人的にかっこいいと思ったセリフを。
p.93
「いざってときは誰に罵られようが切り捨てる、もしくは誰に恨まれようが手に入れる。そういう覚悟がないと、人生はどんどん複雑になっていくわよ」
p.111
「ねえ暁海ちゃん、いざってときは、誰になんて言われようと好きなことしなさいね。怖いのはえいって飛び越えるその一瞬だけよ。飛び越えたら、あとはもう自由なの。」
父の不倫相手、という間柄にも関わらず、暁海と は関係を深めていく。
暁海の母と、また暁海とも正反対な に一種の憧れのようなものを感じる。
本当に素敵な女性。
そしてもう1人の名脇役が、2人の高校時代の教師、 だ。
過去に色々あって、シングルファーザーであり、そして2人を否定しない大人。
柔和で、物腰の柔らかい彼が力強く暁海の背中を押す言葉。
p306
「何度でも言います。誰がなんと言おうと、ぼくたちは自らを生きる権利があるんです。ぼくの言うことはおかしいですか。身勝手ですか。でもそれは誰と比べておかしいんでしょう。その誰かが正しいと言う証明は誰がしてくれるんでしょう」
「……分かりません」
「ええ、ぼくにもわかりません」
「正しさなどは誰にもわからないんです。だから、きみももう捨ててしまいなさい」
どうしても普通とか、正しさに囚われてしまいがちな私たち。
でも普通でいること、正しくいることに必死になって、払わなくていい自己犠牲を払ってないだろうか。
暁海と櫂、この2人がどうなっていくのか、ぜひ自分の目で確かめてほしい。