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「どうして今さらハンセン病について学ぶのですか?」に答える(1)

まず、ハンセン病とは「らい菌」に感染する事で起こる病気です。感染すると手足などの抹消神経が麻痺したり、皮膚にさまざまな病的な変化が起こったりします。また、体の一部が変形するといった後遺症が残ることもありました。かつては「らい病」と呼ばれていましたが、明治6年(1873年)に「らい菌」を発見したノルウェーの医師・ハンセン氏の名前をとって、現在は「ハンセン病」と呼ばれています。
感染力が弱く、非常にうつりにくい病気です。1943年にアメリカで「プロミン」という薬の有用性が判明し、日本でも1946年からプロミンによるハンセン病の治療が始まりました。

有効な薬があり、感染力が弱いにも関わらず、「ハンセン病は恐ろしい病気だ」というイメージによって差別や偏見に悩まされています。それは治る病気であるのに、国家が「らい予防法」を制定し、患者を強制的に隔離したことが大きな原因です。国が正しい情報を与えず、恐ろしい処遇をすることによってなんと1996年までこの法律は続きました。
スティグマを負った元患者たちは家族に迷惑をかけないためであったり、そのつらさを忘れられないがためであったり、今も自宅に帰らず療養所で暮らしている方が多数おられます。そういった意味でハンセン病問題は現代においても終わった問題とは言えないのです。

そこで私は勤務校において、昨年度の12月~2月にかけて、「差別をくり返さない」をテーマにハンセン病学習に取り組みました。

導入ではハンセン病という言葉を伏せ、“謎の感染症”にどのように対処するか、というワークから始まります。どんな症状であるかはわかっていますが、感染者の年齢や性別などに傾向はなく、何が有効な治療かもわかっていない、という限定的な情報しか無いという設定です。
そこで国民としてどう対処するべきか、ということについて考えました。そうするとどのグループも「患者を隔離するべき」、「治ったとして戻ってきても本当に治ったかは不安である」または「そういった不安から住んでいたところに戻れない」のでは無いか、という意見を出しました。限られた情報下ではこういった行動に陥りやすいことを確認したので、ハンセン病について学び始めます。

実際にハンセン病でこういった事象が起きたことを知り、現代においても正しい情報が得られない場合には同じことが起きるかもしれない、ということは導入のワークで実感してくれていると思われます。

そんな中、3月からコロナウイルスによって休校が決定されました。全世界的に見ても今までの生活が揺るがされるような状況に陥りました。
ここで、恐れていたことが起きました。
続きは「どうして今さらハンセン病について学ぶのですか?」に答える(2)に書いていくことにします。


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