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年間500冊以上読むカナディアンのおすすめの一冊 ブックレビュー:『ファンベースー支持され、愛され、長く売れ続けるために』佐藤尚之 著 ちくま新書 2018.2

【内容概略】

●キャンペーンや短期施策よりも売れ続けるにはファンベースを築くことが大切
●ファンベースは売上の上位2割の顧客を大切に共に成長していく戦略
●ファンは売上を確保してくれるだけでなく新規顧客も呼び込む
●ファンを育てるためには共感・愛着・信頼を意識する
●ファンは熱狂・無二・応援えお意識する事でコアファンへと変わっていく
●ファンベースとキャンペーンを組み合わせる事で長く売れ続ける事業を築く



【こんな人におススメ】

●マーケティングを勉強中の方
●仕事でマーケティングを活かしたい方
●キャンペーンを打っても短期的な効果ばかりで悩んでいる経営者


●マーケティングを勉強中の方


ファンベースは元電通の佐藤さんがある意味電通のやっているプロモーションの方法を否定する方法を提示している本です。
つまり、これまでの多くのプロモーションは後で得られる売り上げの前借でしかなく、継続性がないことを指摘しているわけです。
しかし、だからと言って佐藤さんは従来のマーケティングをすべて否定しているわけではありません。
なぜならば、ファンベース戦略は時間非常にかかり、即効性が薄いからです。
ですので、佐藤さんはファンベースはキャンペーンなどの短期施策を有効活用する事でより大きな効果が得られると述べています。
その点を考えると、この本を読む場合ある程度マーケテイング知識を持っているとよりファンベース戦略の良さを理解できると思います。
もちろん、この本だけでも学ぶ事が多いと思いますが、基本的なマーケティングの本を合わせて読む事をお勧めします。

●仕事でマーケティングを活かしたい方


マーケティング取り入れたいけど疎い現場の方にもこの本はおすすめです。
なぜなら、この本は一般的なマーケティングに比べて理論的なものではなく経験労的な面が多いからです。

ファンベース戦略は一言で言えば「お得意様第一主義」とも言えます。
これはある意味日本に古くからある老舗が一貫して取っている経営姿勢です。
ですので、現場で差仕事をしていたり、昭和生まれの方々だと元々馴染みのある考え方だと思います。
WEBが発展し昔ながらの商売方法に対して批判的な意見が増える中、ファンベースの考え方はある意味昔ながらの商いを再評価する考えとも言えます。
ですので、現場一筋の方こそこの本を読んでいただき、これまでのキャリアを棚卸してみることをお勧めしたいです。

●キャンペーンを打っても短期的な効果ばかりで悩んでいる経営者


また、ファンベースの特徴としてモノとヒトを組み合わせという点があります。
従来のマーケティング手法はモノを売るための仕組みに関するノウハウです。
それに対して、ファンベースは顧客が顧客を増やしていく仕組み作りです。
この二つは似ているようで違います。
前者はモノが売れることでそれが評判として情報が拡散し、その評判から商品が売れれる仕組みです。
つまり、情報ベースの販売です。
それに対して、ファンベースは顧客がその企業自体を好きになることで他の顧客を連れてくる仕組みです。
こちらは人ベースの仕組みです。
前者は拡散性が高く売り上げの総量は大きくなりますが、情報である以上似た商品に対して顧客が流れやすい欠点もあります。
それに対してファンベースは顧客が顧客を連れてくるため拡散性は低く、売上の総量も小さいですが、人のつながりから生まれるため顧客が他の商品に流れにくいメリットがあります。
ですので、冒頭に述べたように売れつづけるのはキャンペーンのような短期施策とファンベースの中長期施策を組み合わせる必要があるわけです。
この点を意識するだけで、経営者の方もキャンペンの打ち方を工夫できるようになる気がします。

【感想】


この本を読んで私はある企業のことが頭に浮かびました。
それは伊東屋です。
ご存じかもしれませんが、伊東屋は銀罪に本店を構える老舗文具店です。
ボールペンの芯から高級万年筆まで幅広い標品を取り揃えています。
また、プライベートブランドも製造販売しています。
例えば、伊藤屋オリジナルのロメオは最新の人間工学をもとに作られた高級ボールペンですが、1万円をきるという業界では考えられない価格で提供しています。
これらだけでも十分に伊藤屋は素晴らしい企業なのですが、伊藤屋の最も素晴らしい点はブランドです。

私の中のブランドといえばこの伊藤屋が真っ先に挙がります。
もともと文具好きだったのですが、新卒で入社した会社の職場が新橋だったことから伊藤屋によく行くようになりました。
文具好きには伊藤屋はビル一棟文具で埋め尽くされているため夢の様な場所でした。
しかし、伊藤屋が私にとって最高のブランドだと思ったある出来事があります。

それは友人に以前送ったプレゼントである高級ボールペンの芯を購入しに行った時の事です。
高級ボールペンは芯も特注であるためそのペンを扱っている店舗以外では取り寄せなければいけない商品です。
友人は名古屋に住んでいたため伊藤屋のない名古屋ではその芯を取り寄せるのが面倒なんです。
そこでちょうど東京に行く機会があったので友人のお土産として芯を伊藤屋で購入する事にしました。
伊藤屋に着くと早速専門のカウンターで芯があるどうか尋ねました。
すると、店員の方はすぐに対応してくださって芯を用意してくれました。
しかし、店員の方はこういいます。

「こちらがお客様がお求めになっている芯です」
「ただ、最近芯の仕様が変わりまして…」

その対応に対して、私は仕様が変わったこと不具合が生じているのだと考え

「何か、不具合とかがあるのでしょうか?」

と聞きました。

それに対して、店員の方は

「滅相もございません」
「仕様が変わり、以前のモデルに比べインクのつまりが解消され、書きやすさも向上しています。」

と答えます。

それに対して、私は不思議に思い

「それなら特に問題はないのでは?」

と答えます。

それに対して、店員の方は

「お客様の中には、この仕様の変更により書き心地の違和感を感じる場合もあるかと思いましたので…」

と答えました。

この答えに対して、私は当惑するとともに、伊藤屋のサービスの質の圧倒的な高さに感動しました。

普通の企業なら伊藤屋が仕様変更と言っている点をバージョンアップとだけ伝え、メリットだけを伝えるはずです。
しかし、伊藤屋はメリットを一切告知せず、むしろ一部の顧客が感じるかもしれない違和感をわざわざ顧客に伝えているわけです。
伝えなくても誰も批判しないような、デメリットとも言えない点をわざわざ伝える。
顧客以上に顧客の事を考える姿勢を店員一人一人が実行をしている
この姿勢こそが伊藤屋のブランドを支えていると言えると当時痛感しました。

ここでファンベースを話に戻します。
ファンベースで書かれていることはまさに伊藤屋の顧客対応で現れていると思います。
伊藤屋の顧客は基本的に伊藤屋のファンです。
なぜなら、文具はよほど専門的な商品でなければどこでもある程度手に入る商品だからです。
ネット販売でも文具が買える時代それはより顕著になっています。
それにもかかわらず、伊藤屋へ文具を買いに来る顧客は伊藤屋が好きで伊藤屋が勧める商品を見に来ています。
そして、そのようなファンに対して店員は徹底した丁寧な対応をします。
たとえ、色鉛筆一本でもその一本を無数にある商品の中から店員はそれを探してきます。
銀座の一等地にビルを構えるお店が50円の色鉛筆を店員が探してくるわけです。
採算性を考えれば考えられない話です。
しかし、そのような接客を徹底しているからこそファンは一層伊藤屋のファンになり、店員は伊藤屋という最高の文具店で最高の接客をしていると胸を張れるわけです。

ファンベースとは結局このような昔ながらの日本のホスピタリティーに現れていると思います。

そういった意味でも単にマーケティングの知識を得るというだけでなく、非常に深い意味をこの本は持っているのかもしれません。

【筆者概要】

佐藤 尚之
日本東京都出身のコミュニケーション・ディレクター。
株式会社電通でコピーライター、CMプランナー、ウェブプランナーを経てシニア・クリエイティブ・ディレクター、コミュニケーションディレクター。JIAAグランプリなど受賞多数。
Wikpedia より


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