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ラピッド・スピード・ストーリーズ

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ハイテンポな痛快娯楽パルプ小説集。派手なアクションが多め。メインコンテンツ。
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【一括版】ンンロとサボテン【HELL地獄BAN(G)ディッツ‼シリーズ】

【1】  相手の銃口が爆発したと思った瞬間、僕は頭に強い衝撃を受けて死んだ。  そして生き返った。  吹き飛ばされた頭は元通りになっている。痛みもない。ただ、左腕に刻まれた三つの髑髏タトゥーのうち一つにペケ印が追加されていた。 「おーい、早く隠れなよ。ぼやぼやしてっとバリア切れてまた死ぬよ」  少し離れたところ、横倒しになっているスチールデスクの陰にいる赤い革ジャンを着た赤と白髪少女──ンンロが言った。 その言葉を裏付けるかのように、バリア越しに身体のあちこちに軽

【一括版】ジョブ・デビュー【HELL地獄BAN(G)ディッツ‼シリーズ】

【1】  俺はユニダート。どこにでもいる地獄人だ。  暴力は中の中、射撃の腕は中の下。  平凡でとにかく頭数が欲しい状況でないと呼ばれない。その程度の男だ。  ただ危険を察知する力が人よりもほんのわずか秀でているようで、今日まで三死(スリーアウト)は免れている。  そんな俺は今、珍しく買い物以外の目的でヘルバイスに足を運んでいた。  HELL地獄の中でもロストエンジェルス、新欲苦躯(ニューヨーククク)などに匹敵する危険な街だ。    俺は数回しかこの街で仕事をしたことが

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 10~EP

【5-8】  ナスティハウンドとの最終決戦は、僕が想像していたような死闘が繰り広げられた……ということはなく、驚くほどあっけなく片が付いた。  激しい衝撃音と振動を感じて、僕は急いで倉庫に舞い戻った。そして、 埃が舞い上がる中で真っ先にンンロの姿を探すと、なんとポチの上にうつ伏せで倒れていた。  必死で残骸をかき分けながらンンロに駆け寄る途中、ティー・レップの死体を見つけた。首と四肢が通常ではありえない方向に折れ曲がっていた。 かなりひどい状態なので再生には時間がかか

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 9

【5-7.5 ティーレップ】  二人組のアホウがポチとヤり始めてからそれなりの時間が経過した。そろそろポチに食われて消化されているだろう。そうでなければこの階に飛び込んできているはずだ。  様子を確認するためディスプレイに監視カメラの映像を映そうとすると、倉庫の監視カメラのが全てブラックアウトしていた。  ふん、まあいいさ。俺はギャングのボスらしく堂々とデスクの裏で座って余裕を見せていればいい。この部屋のものはすべて防弾防刃仕様なうえ、デスクの前方には透明なヘル強化ガラ

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 7

【5-5】  僕は一目散に走りだした。部屋の隅にある階段に向かって。  盾は途中で投げ捨てた。構えていても背負っていても階段を登るのに邪魔になるのと、残りの敵はポチのティー・レップのみであろうと判断したからだ。仮に盾を使ったとしても、あのポチの攻撃をしのげるとは思わなかった。  階段へは問題なくたどり着けた。が、階段の前にミニ木箱がバリケードのように積み重なっていてさらに『Keep Out』と書かれた黄黒テープで塞がれていた。振り返り反対側を確認するが同じよう。僕らがこ

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 6

【5-4】  5階から12階までは倉庫という話だったが、天井がぶち抜かれて全階が一つの大部屋になっている異様な空間になっていた。  壁際には各階にあるはずの床の代わりに、工事現場にあるような網目状の足場が備え付けられてあった。人の気配は全くないのに壁と天井に取り付けられている照明の明るさが逆に不気味に感じる。 「誰もいないね」  警戒して倉庫の中心程まで進んだが何も起きない。静まり返った広い倉庫の中で僕の声はよく響いた。  僕たちがいる5階部の両壁には、ナスティハウ

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 3

【4】  人生初の銃撃戦を経験した後、ンンロから渡された分け前を手に(何の分け前なのかは教えてもらえなかった)超大型デパートで布団一式とテーブルと座椅子と電気ケトル、それにスマートフォンを購入した。  大きな家具は『宅配即ヘル秒サービス』なるものを使った。なにやら特殊な技術で一瞬で自室に送ってもらえるらしい。  また、地獄人は食事をする必要がないが、習慣で食べたくなることがあるというので、いくつかカップ麺も買った。  もろもろの買い物を終え、疲労感を感じつつ2666号室に

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 2

【3】  ンンロとは酔っ払いであふれ喧騒にまみれた場末の酒場で出会った。  HELL地獄に落ちたての多くの者がやるように、強制労働で得たなけなしの賃金を全て消費する勢いで酒を浴びるように飲んでいた時のことだ。  付近の酔っぱらいに絡まれたり絡んだり、どこかで起きるケンカを眺めたり囃していると、突然、後頭部に衝撃が走り僕は勢いよく額をテーブルにぶつけた。その様子に気づいた酔っ払いは大爆笑していた。 「いっ…………なにぃ?」  目を白黒させて何が起きたのか酔っぱらい達に尋

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ 1

【1】  相手の銃口が爆発したと思った瞬間、僕は頭に強い衝撃を受けて死んだ。  そして生き返った。  吹き飛ばされた頭は元通りになっている。痛みもない。ただ、左腕に刻まれた三つの髑髏タトゥーのうち一つにペケ印が追加されていた。 「おーい、早く隠れなよ。ぼやぼやしてっとバリア切れてまた死ぬよ」  少し離れたところ、横倒しになっているスチールデスクの陰にいる赤い革ジャンの少女──ンンロが言った。 その言葉を裏付けるかのように、バリア越しに身体のあちこちに軽い衝撃を感じ

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ SideMenu:ジョブ・デビュー 4/4

前回 【5】 「兄貴が黙ってろって言っただろ!」  スタチャーが過剰ともいえる反応を返した。先ほどコケにされたことが響いているのだろう。よくない兆候だ。 「ただ教えてあげただけじゃんね」と女。 「それはどうも。おい、ずらかるぞ」  スタチャーは返事をしなかった。  頭に血がのぼり俺の声が聞こえていない。  女は拳銃を向けられているにもかかわらず、笑みを大きくした。 「ふーん、そんな細い腕で撃てるの? 安全装置は外した? そんな怖い顔してないで、帰ってママのおっぱいで

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ SideMenu:ジョブ・デビュー 3/4

前回 【4】  席に戻るとすでにカレーが3人分用意されていて、スタチャーがよい表情でかきこんでいた。 「兄貴、このカレー超美味いよ!」 「そうか。せっかくだから味わって食べろよ」  1口食べると、まず野菜の複雑な甘みを感じ続いてトマトの酸味がアタックしてきた。肉は牛筋らしいが、口の中で溶けるほど軟らかくなるまで煮こまれていた。どんどん食べ進めていくと、突如凶悪な辛みが牙をむいてきた。途端に汗が吹き出してくる。備え付けの福神漬けも歯ごたえがよく程よい酸味がアクセントにな

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ SideMenu:ジョブ・デビュー 2/4

前回 【3】  車を盗まれないように通りの角に隠すように止めて、徒歩でカレー屋へ向かう。  飯時を避けたこともあり、通りはひとけも少なく仕事におあつらえ向きな状況だった。 「スタチャー、段取りを言ってみろ」 「えっと、まずは客として入る。次に周りをさりげなく観察する。ヒーローになりたがるやつがいたらマークしておく。で、普通に飯を食べる。最後に責任者を脅して素早くレジから金を奪って一目散に車に乗ってずらかる。だよな?」 「ああ。それと、俺の指示には絶対従うんだ。余計なこと

HELL地獄BAN(G)ディッツ‼ SideMenu1:ジョブ・デビュー 1/4

【1】  俺はユニダート。どこにでもいる地獄人だ。  暴力は中の中、射撃の腕は中の下。  平凡でとにかく頭数が欲しい状況でないと呼ばれない。その程度の男だ。  ただ危険を察知する力が人よりもほんのわずか秀でているようで、今日まで三死(スリーアウト)は免れている。  そんな俺は今、珍しく買い物以外の目的でヘルバイスに足を運んでいた。  HELL地獄の中でもロストエンジェルス、新欲苦躯(ニューヨーククク)などに匹敵する危険な街だ。    俺は数回しかこの街で仕事をしたことが

チョップスティックマンと約束

0 昔々あるところにチョップスティックマンと呼ばれるプロの殺し屋がいました。  チョップスティックマンは文字通りチョップスティックウェポンを使って標的を殺すのでそう呼ばれています。  もちろん他の武器のほうが殺しはしやすいのはチョップスティックマンも認めていますが、彼が必ずチョップスティックウェポンを使います。理由は師匠との約束だからです。 1 ある日、チョップスティックマンの元に新たな依頼人が現れました。  依頼人は素性をかくしていましたが、佇まいからヤクザさんであ