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坐骨神経痛は多岐の原因からなる症状の1つである

こんにちは。

Furyo(@Furyo)です。

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普段は、愛知県にある整形外科クリニックで働いています。

そこでは腰殿部痛の患者さんが多く、毎日患者さんの病態と、エコーを用いて奮闘しています。

最近では坐骨神経の動きを観察し、臨床に生かせる様な研究を進めている段階です。


さて、

みなさんは患者さんに「これは坐骨神経痛ですね。」と何気なく言っていませんか?

「坐骨神経痛ってよくわからないけど、なんとなく使っている。」

「殿部から足部の痛みは大体は坐骨神経痛と思っている。」

今回はそんな坐骨神経痛に関して、あまり知識がない先生でもわかりやすい様に

"坐骨神経痛とはなんぞや?"という所からお話ししていきます。


このnoteを読む事で、今までなんとなく坐骨神経痛と思っていた症状を、

もう少し深く、

ここの原因からなる坐骨神経痛だ、と意識できる様になると思います。


普段から臨床で坐骨神経痛を経験している先生方には少し簡単な内容となっているかもしれません。

逆に、あまり経験がない若手の先生方には、曖昧だった知識を確実のものにして頂くために、読んで頂きたい記事となっています。



坐骨神経痛とは

腰仙部坐骨神経の支配領域、すなわち臀部、下肢後面あるいは外側面へ放散する疼痛自体、あるいは症候群の総称                            引用:脊椎脊髄用語辞典
症状として臀部から大腿部後面あるいは外側にかけて痛みがある場合(時には膝から下の部分にまで及んで痛い場合もある)                    引用:日本整形外科学会


このように言われています。

第4腰神経根から第3仙骨神経根で構成されている、

人間の身体で最も長い坐骨神経が、

どこかで障害されれば坐骨神経痛が生じます。

そう、「どこかで」です。

坐骨神経痛の原因は一つではありません。

坐骨神経が走行している端から端、どこかで圧迫や絞扼をされると、坐骨神経痛が生じる可能性があります。

原因は多岐に渡り、その結果に坐骨神経痛が生じるのです。

坐骨神経痛は症状であり、病気ではないのです。


坐骨神経痛の原因


主に坐骨神経を障害する原因は3つに分かれています。

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・腰椎
・骨盤内
・骨盤外

それぞれに坐骨神経痛を生じさせる原因があります。

以下にそれぞれの原因を説明していきます。


腰椎由来における坐骨神経痛

坐骨神経痛が腰椎から由来する場合、

・腰椎椎間板ヘルニア

・腰椎分離すべり症

・腰部脊柱管狭窄症

・馬尾、腰椎腫瘍

などが原因として挙げられます。

坐骨神経痛の最も一般的な原因は、腰椎椎間板ヘルニアです。


腰椎は、椎間板という外縁を構成する靭帯様の線維輪と、中心部の柔らかい髄核という構造物から成り立っています。

腰椎椎間板ヘルニアとは、その外縁部分が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が飛び出す疾患です。

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坐骨神経痛の原因には

膨隆した髄核によって、坐骨神経を構成する第4腰神経根から第3仙骨神経根が機械的に圧迫されることで生じます。

また、飛び出した髄核によって、炎症成分が増える事でより閾値が低下し、強い根性の痛みを伴う事もあります。

Luis Roberto Vialle,et al:Rev Bras Ortop. 2010 Jan; 45(1): 17–22.

しかし、腰椎椎間板ヘルニアで生じる坐骨神経痛に関しては、4週間から6週間で大幅に解消されるという特徴もあります。

Kulisch SD:Orthop Clin North Am. 1991 Apr;22(2):181-7.


基本的に腰椎由来では、坐骨神経の根元に近い部分での障害です。

障害される腰仙骨レベルによって症状や疼痛領域が異なる事もあります。

また、神経も運動枝(筋力に関与)感覚枝(皮膚感覚に関与)の両方が障害される事もあります。

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馬尾・腰椎腫瘍はred flag(警告兆候)であるため、

リハビリでは症状の改善には至りません。

早期にMRIでの検査を行う必要があります。


骨盤内由来の坐骨神経痛

坐骨神経痛が骨盤内から由来する場合、

・骨盤内腫瘍

が原因として挙げられます。主には子宮筋腫、直腸癌などです。

子宮筋腫は35歳以上の女性4〜5人に1人が有していると推定されています。しかしそのほとんどは無症候性です。

Bodak, Mark P. MD et al:American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation: March-April 1999-Volume 78-No. 2-p 157-159

しかし、時に月経出血、月経困難症、骨盤痛、骨盤圧迫、膨満感、性交疼痛症、尿および腸の障害、不妊症などを引き起こす可能性があります。

Donald R Murphy  et al:spine (Phila Pa 1976). 2010 Nov 15;35(24):E1435-7. 

坐骨神経痛の原因には

子宮筋腫が肥大する事で、坐骨孔を通過していく坐骨神経を圧迫させる事で生じます。

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腰椎由来とは異なりますが、骨盤外由来とも異なるため、しばしば腰部神経根と間違える事もあります。

しかし、症状として痛みは断続的です。

また隣接する内臓にも圧力がかかるため、頻尿、便秘、腹部膨隆などを併発します。


筋腫の程度にもよりますが、肥大した筋腫の場合、リハビリでは症状の改善に至りません。

その場合、手術によって筋腫を切除する必要があります。


骨盤外由来の坐骨神経痛

坐骨神経痛が骨盤外から由来する場合、

・梨状筋症候群

・帯状疱疹

・変形性股関節症

などが原因として挙げられます。

骨盤外由来で一般的なのが梨状筋症候群です。

大坐骨切痕と仙結節靭帯と仙棘靭帯によって縁取られた大坐骨孔は、貫通する梨状筋によって梨状筋上孔と梨状筋下孔に分けられています。

その梨状筋下孔を通過して骨盤外に出ていくのが坐骨神経です。

骨盤外に出た坐骨神経は、主に大腿後面・下腿の筋肉への運動枝と、下腿から足部の皮膚への感覚枝で構成されています。

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梨状筋症候群とは

梨状筋が何らかの原因によって肥厚や攣縮を呈することで、その下を通過する坐骨神経を圧迫・絞扼する事で坐骨神経痛が生じる疾患です。


坐骨神経痛以外にも、

梨状筋上孔を通過する上殿神経が、梨状筋によって絞扼・圧迫されることで中殿筋の筋力低下も生じる可能性があります。



坐骨神経の症状

坐骨神経痛の症状は、坐骨神経痛の原因が前述したように多岐に渡るので、当然その症状も様々です。

主には、

殿部から下腿後面までの一貫した痛み、しびれ

下腿から足指までのしびれ、痛み

中殿筋、足指の伸展・屈曲の筋力低下、

下肢の感覚鈍麻

などが挙げられます。

しかし、原因は多岐に渡る以上、必ずこの症状が生じるとは限りません。

どこに原因があるかの精査は必須です。

まとめ

・坐骨神経の原因には、腰椎、骨盤内、骨盤外にあり、またはそれらは併発する可能性もあります。

・腰椎は腰椎椎間板ヘルニア、骨盤内は子宮筋膜腫、骨盤外は梨状筋症候群が一般的に坐骨神経痛が生じます。

・腫瘍などは基本的にはリハビリ適応外です。

症状は多岐にわたります。疼痛領域、筋力などからどのレベルで障害されているか見極める必要があります。


僕も臨床ではかなり悩みますが、どのレベルで障害されればどんな症状が生じるかを把握できていれば見えてくるものがあります。

また後日、それぞれの評価方法やアプローチ方法などを挙げていく予定でいるので、またその際に読んで頂ければ幸いです。

以上、Furyoでした。



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