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⑹ 11月5日


この数日がすごくしんどかった。

毎日楽しみに見てた 妊婦用アプリも
見るのが怖くなって、開けられなかった。


切迫で休み、変更してもらってた仕事を
お客様にはやんわりお伝えしながら
努めて明るくこなした。


「元気そうでよかった」

そう、それが私のいつもの仕事のスタイルだ。
心と身体とは裏腹な自分の笑顔が
普段から板につきすぎていた。



仕事中、どんなに親しく接している人でも
本音の私を出したことなんて


本当は1度もないんだと 客観的に思った。


等身大のありのままの
自分を見せられる強さは 私に無かった。








あれから
多少の 吐き気やむかつきはあり
食欲は相変わらずやって来ないけど、

つわりは ほとんどなくなっていた。







今日は一人でクリニックに行った。

少し待って診察。


今日の検診担当の先生は
前回と別の女医先生で
明るく優しい感じで迎えてくれたが、



前回からの状況を伝えると、
トーンが落ちて 神妙な雰囲気になる。


寄り添ってもらってるんだな、と認識した。





診察台にあがり、丁寧にエコーを受ける。
そのうち院長も呼ばれ、
カーテンの向こうが 少し慌ただしく感じる。


先生たちが小声で話をし
子宮腺筋症のことや、体質的に持っている
血小板の数値の事を 少し聞かれた。







「心拍みえなかったね、、」


女医先生が 言った
覚悟していたけど、実感もなかった。



正式に 流産の診断を受けた。

これからの最善のために
総合病院に転院となると
説明を受ける。

涙が溢れそうになると
先生は画面に目をやったまま 説明を続けた。







診察室を出て
彼に連絡を入れる。



事実と、頭の中のこれからについての不安が
堰を切ったように溢れる。


感情的になりたくなかった
でも、気持ちよりも先に涙が落ちた


移動にかける時間と話したい分量が合わず、
また後で電話すると言って
また 仕事に戻った。









流産のための受診は 2日後。
それまでは、再度変更した
仕事をこなす日になった。




これからのこともあるので
事情を説明しない訳にもいかず、
伝えるべき人にはお伝えした


これが結構しんどい。
言う方も、言われた方も居た堪れない。

それでも、
理解や寄り添いのある
人の気持ちが温かかったし、
少しだけ 気持ちをこぼすこともできた。



一人になると 涙は止まらなかったけど、
彼の前でも
無意識に取り繕う感覚に気付いて

私は 本当の
ありのままの気持ちを解放する事が
どれだけ苦手なことなのかも分かった。





気持ちが強くないから、
感情に支配されるのが
怖かった。










何も考えたく無い気持ちと、
これからの現実的な状況を 天秤にかけたまま
手帳を捲って気がついた。



流産の処置予定の、明日
月曜日は
私たちの5年記念日だった。


息が詰まった







明日を待っているけど
受け入れる実感もないまま、
11月7日を迎えた。



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