STU48、ナナランド、femme fatale ……アイドルディスクレビュー#16(10/18〜10/24)

1週間でリリースされたアイドルによる楽曲のうち、個人的に気になった楽曲をピックアップしてレビューをしていく連載の第16回。今回は「STU48」「ナナランド」「femme fatale」の3組を取り上げます。

・STU48『ヘタレたちよ』(10月20日リリース)

夏ツアーの最終公演において、グループの結成時から大黒柱として支えてきた岡田奈々がSTU48との兼任解除を発表。7thシングル『ヘタレたちよ』が最後のSTU48での活動となる。右も左も分からないSTU48のメンバーをグループとしてまとめてきた張本人はまさしく岡田だった。そんな彼女に対するメンバーの思いが溢れ出るようなMVに思わずうるっとしてしまいそうになるのをこらえつつも、STU48史上もっとも熱い楽曲に心の底から興奮を覚えた。

まず、目を引くのがタイトルにある「ヘタレたちよ」という挑戦的な言葉であるが、その内容はヘタレを肯定し、そっと背中を推してくれるような応援ソングとなっている。STU48の表題曲としてはラストアイドルが2020年4月にリリースした『愛を知る』を思わせる珍しい弾けたバンドサウンドが印象的な楽曲で、最後の最後まで心地よい疾走感で駆け抜けていく。本作でセンターを務める瀧野由美子の冒頭のセリフを始めとしたメンバーのセリフも良いアクセントだ。

カップリングの「後悔なんかあるわけない」には、STU48の全メンバーが歌唱に参加しており、表題曲以上に岡田とSTU48のメンバーの関係性を歌った切なくも前向きな楽曲となっている。勝手に!四国観光大使によるユニット曲「夢をガラス瓶の中に」も必聴なのは間違いないが、とりわけ印象的だったのが2期生の池田裕楽によるソロ曲「気にならない孤独」だ。「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の第3回で優勝した実力を誇るSTU48の歌姫が満を持してソロ曲を発表。他メンバーを差し置いてのソロは文字通り大抜擢と言えるだろう。安定したピッチと力強くも繊細なボーカルが素晴らしく、楽曲が終わってもなお心地いい余韻として残る。これからさらなる活躍を期待したい一人だ。

・ナナランド『開花宣言!』(10月20日リリース)

7人組アイドルグループ・ナナランドが3rdシングル『ジャンジャカジャカスカ』から約1年2ヶ月ぶりに4thシングル『開花宣言!』をリリース。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2021」のHOT STAGEでは、歌にダンスに印象的なパフォーマンスを見せ、3年ぶりとなるメインステージで大きなインパクトを残したばかり。9月には初期メンバーのひとり雪村花鈴が2022年1月をもって卒業を発表しており、おそらく本シングルが最後の参加楽曲だろう。その意味でも本シングルは7人体制の集大成とも言える作品となっている。

イントロの印象的なピアノリフとメンバーのツーステップダンスで幕を開ける同曲は、「バズリズム02」10月エンディングテーマ、「相席食堂」10月エンディングテーマに起用されている。「開花宣言!」という決意に表れているようにピアノロックを基調としたバンドサウンドに仕上がっており、これまでのグループの世界観とは異なりかなり攻めた楽曲となっている。そこにはアイドルらしい笑顔は一切なく、真っ直ぐ前を見つめ困難に立ち向かう力強い表情には強い決意を感じる。通常盤のほか、各メンバーのソロver.が収録されたメンバーそれぞれの盤もファン必見の内容に。

・femme fatale『Club Moon / Cupid』(10月22日リリース)

結成3周年を迎える10月22日にリリースされたニューシングル『Club Moon / Cupid』は、前作『鼓動 / ピューピル』に引き続きサウンドプロデュースにケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)を迎え、2人の偶像の対象としてのキュートな魅力と本格的なクラブミュージックが見事に融合された、中毒性のある作品に仕上がった。

先行リリースされた「Club Moon」は、ケンモチヒデフミによる心臓の鼓動と共鳴する跳ねるようなビートにのせ、フェミニンで大人っぽい魅力たっぷりに歌い上げるディスコナンバー。カップリングの「Cupid」はゆったりと落ち着いたリズムながら官能的でメロディアスなサウンドと恋愛における「キューピッド」をモチーフとした風変わりなリリックも魅力的。2人の歌声が堪能できるナンバーでもある。

femme fataleはデビュー時から確固たる世界観を築き上げてきたが、ケンモチヒデフミのプロデュースによって彼女たちの音楽的魅力がさらに引き出された作品になっている。

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