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11/26『動物たちは何をしゃべっているのか?』集英社発刊 テーマ 『動物、そして動物としての人とのつきあい方』 ゲスト: 山極寿一さん 鈴木俊貴さんインタビュアー: 週刊プレイボーイ編集部  水野太貴さん 報告レポート


超満員での開催となりました。
隆祥館書店の多目的ホールで開くトークイベントでは、空間の不思議な力なのか、なぜか、ゲストの方が、ここだけの話をして下さいます。

今回も、山極先生が、会場の様子を、そーっと見ながら「これ、言っていいのかなあ?」と仰ったので、すかさず、「言っていいです」と静かにお応えしたら、会場が笑いの渦に。
そこで、話してくださったお話は、本当は、してはいけない禁じ手の話でした。会場に、「ええ~!」と、どよめきが起こりました。内容をお伝えしたいのですが、これを書いていいのか?本当に、わからないのでここでは控えます。

山極壽一さん

ジェスチャーが全てだった時代、声は補完的だった。
動物は、声のトーンや、ピッチで教えてくれる。けれども、我々は、見たものがすべて。
鳥の世界で、聞いたものが、より真実に近いのではないか、と推測する山極先生。
人間は、類人猿の仲間だから、「見た世界」から、離れられない。
それで、文字を作った。文字は、人間が、元々持っていたジェスチャーや、視覚、聴覚をからめた非常に幅の広い世界を、ぎゅっと、凝縮して、化石にしてしまった。
それによって、言葉にできる、言葉という定義に、あてはめられる決まったものだけを伝えることになってしまった。

それは、実は、言語化できない「感情」や「身体性」を切り捨てているのではないか。そういう意味では、文字を作ったのは、失敗だった、とも言える。けれども、文字があるおかげで、対談も本にできた。

鈴木俊貴さん

鳥は、聴覚優位の世界
シジュウカラの声を聴き分けることのできる鈴木先生は、「文字は、確かに期間、空間を超えることができるツールですが、「言葉」は、体験するというアクティビティを減らしてしまった」と仰いました。
一対一で、ものを、見たり、体験して、一緒に共感する、体感する、例えば、一緒に同じ場所で蛇を採った。言葉で、言っても、聞いた人の想像を照らし合わせて文字にしているだけ。
人類700万年の歴史のなかで、文字ができたのは、わずか5000年前
最近私たちは、作られた文字によって、共感を失っているのではないか?と話されました。


山極先生は仰いました。
「共感というのは、文字だけでは通じない。
人間が、発明した色々な事は、いいことだけじゃなくて、悪いこと、ネガティブなことも、背負って来た。言葉の無い、ゴリラと、つきあっているとわかる。
文字は、契約のためにできた。と思っている。対話が大事、スマホや、直接会わない、バーチャルな映像だけを見ている子どもたちに本当に、直感力が育っているのだろうか?」と心配そうな顔で、続けられました。
「野生と、動物園で暮らしている動物の違い、動物園では、制限の中で、餌を与えられて暮らしている。人間も同じ、新型コロナの時期は、特に制限されていた。

そういう時の世界は、解放されていないし、その中で育った子どもたちは、野生を知らずに、人間の自由な発想も知らずに、閉じ込められたような、抑制のきいたようなところで、育っちゃうんじゃないか。ゴリラになって歩いていると、色んな声が聞こえて来る。人間は、太古から虫や、鳥や、植物たちと会話してきた。それで、無意識のうちに、なんかおかしいぞと思ったり、気になったり、生物の気配を感じるのは、人間にまだそれらを感じ取る力があるからだと思う。」と山極先生。

すると、鈴木先生が、人間は、鳥の声を聴いて、危険を、察知していた、例えば、蛇が近づいてきたら、赤ちゃんを抱いて守ったり絶対してきた、他のサルもしている。
自然に目を向けるということをしてきた。言葉が使えるから、人間はえらい、というのは人間のおごり。人間と自然を分けているのも人間、自然の声に、もっと耳を傾けなければならない。と話されたのでした。

山極先生が、今だから告白すると、と言って話してくださったエピソードは、3.11東日本大震災時、山極先生の大学の院生が、宮城県の金華山島でサルを追っていた時に起こりました。波打ち際で、サルは、貝や、海藻を食べていた。そうしていたところに、ドーンと地震が来た、大丈夫かな?と、思っていたら、サルたちが、スーッと山の斜面に、上がっていった。あれっと思っていたらそのうち海面が、パチパチ音をたて始めた。慌ててサルの後を追ったら、そのあと津波が来た。彼は、サルのおかげで、助かった。

人間は、自然の凶事を察知する力を、失い始めている。
鈴木先生が話された、ケンブリッジ大学の先生が、国際学会で発表されたという「ミツスイ」という鳥のエピソードも、人間と鳥との対話の中で、蜜のありかを教えてくれるという驚きのものでした。
ご参加くださったお客様の質問も多岐にわたっていたので、山極先生と、鈴木先生のお応えも興味深く知らなかったことを知れる喜びにあふれていきました。

山極先生がゴリラと人間を比べて、常に考えておられてきた人間の持っている三つの自由
1. 動く自由
2. 集まる自由
3. 対話する自由

私は、2の集まる自由と、3の対話する自由は、お客様のおかげで、できているように感じますが、1.の動く自由が実行できていないように感じました。

鈴木先生は、山極先生が、京大の総長の頃に、京都大学の白眉センタ-で研究をされていたそうです。その時に山極先生の仰っていた「研究者というのは、税金を使って研究している。我々の研究を、一般の方に伝えることが大事だ」ということに共感して自分もメデイアにも出るようにして、このような場にも来ている。と話されました。



 
今回のイベントは、終わってからも感動の声が、沢山寄せられました。
翌日、隆祥館書店に来られ、「この本の読書会を開いて、皆で体験を語り合う会を開いて欲しい」とのリクエストもありました。

会場リアルでお聞きになられた方々から、アーカイブ動画の配信もお願いしたいとのご連絡も続々と来ています。


人間として生きているのに、毎日、仕事に追われる中で、一番大切なものを失いかけていたのではないか?

無性に、自然の中に入り、鳥のさえずりを聞き、ゆっくりと呼吸するような体験をしたくなりました。

翌日、娘の子どもの書道展が、近所の国際交流センターでありました。
比較的、緑の木々の多い場所で、耳をすますと、鳥の囀りが聞こえたのでした。
日の光を浴びて、自然を感じて、なんだか穏やかな気持ちになりました。

山極先生と鈴木先生、お忙しい中お越し下さりありがとうございました。
インタビュアを務めて下さった水野さんありがとうございました。

アーカイブ動画の配信は、年内まで受けつけております。ご希望の方は、隆祥館書店までご連絡ください。
https://ryushokanbook.com


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