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8/5浦川泰幸の健康道場 隆祥館書店店主 二村知子のお薦め 今週の1冊 四國 光著『反戦平和の詩画人 四國五郎』  藤原書店 発刊 オンラインでもお届けします。

『反戦平和の詩画人 四國五郎』四國 光 著  藤原書店 発刊 

まず、最初のページに書かれているエピソードに心を打たれます。

「つまらんことで怒るんじゃない。つまらん人間はたくさんいる。だけど世の中には本当に悪い人間というのがいる。それは戦争を起こす奴だ。戦争は、台風や地震みたいな自然災害じゃない。ひとが起こすもんだ。」「戦争を起こす人間に対して本気で怒れ」

四國五郎さんは、1924年に広島に生まれて、20歳で徴兵されています。敗戦後は、3年に渡ってシベリアに抑留され、帰国したら、最愛の弟(直登さん)が被爆して亡くなっていました。そのようなご自身が体験し過酷な戦争の記憶を次世代に伝えるために、生涯をかけて絵と詩で膨大な作品を書き残されました。

「おこりじぞう」という絵本も描かれました。核兵器に対する激しい怒りを表したこの作品は、マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー名誉教授のオンライン教育のサイトでも公開されています。絵を描くことはあくまでも反戦・平和が目的で、一枚として、売ったことがないと書かれていました。


MITの中にあるジョン・ダワー名誉教授のサイト
英語と日本語の両言語併記となっており、世界中から被爆の実相を学ぶためにアクセスされている。http://visualizingcultures.mit.edu/groundzero1945_2/gz2_visnav01.html


シベリア抑留時代には、上級兵士による虐待を体験され参議院特別委員会でも証言されています。レッドパ-ジ・赤狩りなどの言論統制の時代に、すぐにはがされ、記録さえ残らないのに、「なんとしてでも、戦争を知らない人々に、戦争のむごたらしさをわかってもらう絵を描かねばならない。」という思いで、「辻詩」という反戦・平和の絵と詩を書いた紙を街中に貼っていたのです。

今でいうバンクシ-のような存在だったのです。

息子である四國光さんは、命の大切さと戦争への怒り、そういうことを一人一人が、考えるきっかけになればとの思いで、父である四國五郎さんの生き方を描かれました。

核兵器を保有することが核戦争を抑制する機能を果たす、という意味の「核抑止力」という言葉があります。しかし、本当の核抑止力とは、市民が描いた「原爆の絵」や、「原爆文学」そこに表現された核兵器が引き起こす、信じられないほどの、むごたらしさと悲惨さの「真実」を知ることではないのでしょうか。人々のその認識の蓄積こそが、最大の「核抑止力」だろうと思うのです。

そのためには、まず「知る」ことが大事なのです。武器ではなく「本」を読んでいただくことで、戦争の悲惨さを、継承して欲しい。

Webで、本をご紹介すると多くの方々が、そのままネット上でAmazonから購入されます。そのため、小さな本屋の店主としては、睡眠時間を削り苦労して読み込んだ選書をお客様に勧める前に購入されてしまうので、あまりWebでオープンにしたくない気持ちになることも正直しばしばあります。けれども、この本は、この本自体が、戦争の抑止力になると思うぐらいの本なのでもう躊躇無くここに書きました。

もちろん隆祥館書店のオンラインショップや当店で、ご購入いただければ嬉しい限りです。

隆祥館書店 ホームページ
https://ryushokanbook.com



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