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1969年に自らの日常を描いた「豆腐屋の四季」でデビュ-した松下竜一さんの書かれた「狼煙を見よ」河出書房新社発刊 今こそ、読んでいただきたい一冊です。隆祥館書店にて発売中です!!

先日、赤木雅子さんの事件に関する素晴らしい特集をしていたテレビ番組が、今度は「東京で連続爆破テロ 50年逃亡する犯人グループの真実!」と題して桐島聡のことを放送することを知りました。

「市民を装い、連続企業爆破事件を起こしたテロ集団「東アジア反日武装戦線」。
事件に関与した10人の中で、唯一逮捕されなかったのが逃亡犯・桐島聡だった。彼らの目的とは一体何だったのか?」と予告していたので、まさにその彼らの目的、大義について触れるのか? と、幾分かの期待をしてテレビを見たのでした。

ところが、警察側からの視点だけで、彼らが、なぜその行為に至ったのか? 目的については、一切、触れられていなかったのです。

そもそも東アジア反日武装戦線は、〝狼〟〝大地の牙〟〝さそり〟という結成時も異なる三つのバラバラなグループによって構成されているのですが、それがすべて一緒にされていました。桐島は〝さそり〟に所属していて三菱重工爆破事件には関わっていません。


松下竜一さんが書かれた「狼煙を見よ」(河出書房新社発刊)では、優秀な大学生の彼らが、なぜ東アジア反日武装戦線を名乗り、過激な闘争に身を投じたのか・・・事件を巡る公安警察との駆け引きや逮捕前後の動きが描かれ、そして収監後の内省の日々に寄り添うことで彼らの素顔が浮かび上がってきます。

最も苦しんでいる人々の側から思考すること、戦時中の侵略、強制連行、虐殺、日本軍が犯してしまったアジアの人々の側から思考すること、そしてその帰結として生まれた<反日思想>の核心。

この本は、テロリストとして一面的に報道された大道寺将司さんと彼らグル-プ〝狼〟の真実に迫るノンフィクションです。〝狼〟は、三菱重工爆破の際に人身事故は避けたかった。しかしながら避けれなかった痛恨の失敗を生かして、三井物産に爆弾を仕掛けるという〝大地の牙〟に忠告しているのです。
大道寺さんとのやりとりで、狼が主になっていますが、桐島のさそりの結成は74年12月、三菱重工爆破の後なのです。その反省から極力、犠牲者を出さない形で爆弾闘争を行なっています。

第四章より抜粋 「彼らの逮捕直後、一斉糾弾のマスコミリンチの中で、いち早く救援活動を開始した「救援連絡センタ-」の水戸巌氏(当時東京大学原子核研究所助教授https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%88%B8%E5%B7%8C)は、「日本読書新聞」に次のように書いておられます。

(新聞に)「なにが不満でこんなことをしたのか」ということばがありました。これが記者の作文ではないとしての話ですが、私は肌寒さを感じます。ベトナムの人民の生き血と朝鮮人民の生き血でブクブクに肥え太った企業とそのうえに暮らす日本。美しい心をもった若ものがこのことに疑いや苦しみ不満ももたないということがありえるでしょうか?」

松下竜一さんは書かれています、

「戦時中の侵略、強制連行、そして戦後もまた経済成長によってGNP大国と化した日本。
その日本を倒すこと(造り変えること)で、アジアの人々と連帯しようとした彼らが選んだ方法が侵略企業に対する爆破攻撃であった」と
(中略)
松下さんの「草の根新聞」を購読していた方から、獄中の彼らのことを掲載するのであれば、新聞を購読することを止めるとの連絡が来ました。過激なテロリストを擁護するのかという批判です。その時に、対応された言葉が下記です。

「こうは考えることはできませんか?  何もしない者は、それだけ間違いも起こそうとせぬものです。そして多くの者は、不正に気付いても気付かぬふりをして、何もことを起こそうとせぬものです。東アジア反日武装戦線の彼らは、いわば「時代の背負う苦しみ」を一身に引き受けて事を起こしたのであり、それゆえに多数の命を死傷せしめるというとりかえしのつかぬ間違いを起こしてしまったということです。その間違いだけを責め立てて、何もしないわれわれが、彼らを指弾することができるでしょうか。極悪犯として絶縁できるでしょうか?  私にはできません。私は彼等の苦しみに触れ続けたいと思うのです。」

【解説】より
彼らは過去における日本の侵略戦争や植民地支配、アイヌモシリや沖縄を同化させてきた歴史を指摘したのちこう強調していた。と、続きますが、
そこは、ぜひ、本書を読んでいただきたいのです。

最近、群馬県に建てられた、朝鮮人労働者の追悼碑が県の行政代執行で撤去されました。
歴史的事実をなくそうとする動きが公然となされる中、見て見ぬふりをできない自分がいます。

1969年に自らの日常を描いた「豆腐屋の四季」でデビュ-した松下竜一さんの書かれた「狼煙を見よ 東アジア反日武装戦線“狼”部隊」ぜひ読んでいただきたい一冊です。

決して彼らの起こした罪を軽視し、免罪しているのではありません。彼らが何のためにその行為に至ったのか? 背景に何があったのか?

何の見境もなく爆破に至ったテロ集団ではないということを本書は、教えてくれます。

物事の本質を知るためには、色々な角度から書かれた本を読むことをお薦めしたいと思います。

隆祥館書店にて発売中です!!
https://ryushokanbook.com


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