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10/29『僕の好きな先生』朝日新聞出版発刊テーマ 『子どもから学んだ37年間 久保先生の失敗と反省、そして市長への提言書』ゲスト: 宮崎亮さん 久保 敬さん 報告レポ-ト


大阪では、政治による教育への介入が、非常に進んでいることにあらためて気づかされました。

そもそも教育委員会制度は、政治が教育を支配した戦時中の反省に基づいてできた制度で、教育基本法は、「教育の独立」を定めているものです。

けれども2012年、「大阪維新の会」の橋本徹市長と松井一郎府知事が、政治主導の教育改革を目指し、市と府の教育基本条例を成立させました。教育目標は、市長や知事が主導して決めることになり、教育行政への関与が強まって行きました。

 

久保敬先生と宮崎亮記者


そんな中で、2021年、4月19日にまたとんでもないことが起こります。
新型コロナウイルスの感染が拡大を受けて、松井一郎氏が、いきなりメデイアの前で「授業は、オンラインで実施します」とテレビカメラの前で突然言われたのでした。

教育委員会にも、指導している先生方にも、何の連絡もなく、保護者からは、連絡が殺到し、一部の、すでにオンライン授業をしている学校を除いて、現場は、大混乱したそうです。

その時に、たったひとり、このままでは、子どもたちのためにならないと勇気を振り絞って提言書を出したのが、久保敬先生です。ところが、提言書を出した後に、文書訓告処分を受けられました。

そこから、宮崎亮記者の取材が始まったわけです。

久保先生に教わった子どもたち、もう皆さん立派な大人ですが、その人たちにインタビューしてどれだけ久保学級が温かいクラスであったのか、あぶりだしていきます。
久保敬先生の良いところは、子どもたちの目線で、一緒に考えること、悪かったと思ったら「ごめんなさい」と謝られること。最初から、そうだったわけではないそうですが、失敗も体験しながら、子どもたちとの37年間の体験によって、学んだといいます。

久保先生のお話から感じたことは、数値化できないことにこそ大切なことがあるということでした。

久保先生が新任の頃、トシ君という知的障がいのある子がいました。当時、大阪では、障がいのある子も、一般学級で過ごす「原学級保障」という考え方をとっていたそうです。今でいうインクルーシブ教育をすでにしていたのです。

「共に学び、共に育ち、共に生きる」という標語みたいなものが、大阪の教育には有ったといいます。人権教育という言葉も使われるようになった。子どもたち自らが、主体的にアフリカの飢餓について関心を持ち、写真を見つけて持ってくるようになり、大きな差別に気づいてゆく。
そこには、計算が早い、とか試験では、決して判断することができない大きな学びがあるのです。

色々な障がいを持つ子や、外国にルーツを持つ子、子どもたちそれぞれの違う背景などを感じ、共に学ぶことは、数値化できないことなのです。
けれどもそれこそが、これからの国際社会を生きていく上で、大事なことなのではないのでしょうか?今の大阪の教育行政は、その真逆ではないか、公教育を破壊していないかと、本書は訴えています。

実は、久保敬先生が、昨年、本を出された時に、隆祥館書店でイベントをしました。その時に聞いたのですが、子どもたちには、「たとえ自分一人の意見だったとしても、おかしいと思ったことは、おかしいという勇気を持とう」「いやだと思うことはノーと言っていいんだよ」などと言っておきながら自分自身はどうなのか?松井知事に言ってもしょうがないと酒場で愚痴るだけの人間でいいのか?心が揺れ動いていたそうです。

今、トップダウンで、すべてが決まって行ってしまい管理されるような現場になっていると聞きます。この本でも、囲み取材における、宮崎さんの質問に対して松井知事は「教育振興基本計画のルールに、従えないとするならば、組織を出るべきやと思います。」と言われています。

ロシアやミャンマーの教育現場がまさに強権政治の介入によって良心的な先生が排除されていきました。とても危険な政治家の本音を引き出した宮崎記者に拍手です。

久保先生は、昨年、「提言書は、定年前だったこともあり、自分が教師をやり切った卒業証書みたいなもの」と仰っていました。

しかし、ドイツや、キューバの先生から、「あなたは、それでいいかも知れない。けれども、子どもたちのことを一心に、考えて出した「提言書」が、文書訓告を受けるということ自体が、有り得ないことだし、そのことに対して、抗議しなければ、良くない前例を作ってしまう。きちんと抗議すべきだ」と言われたそうです。

ガッツ、ガッツ、ガッツで勇気をいただきました。

それを受け、久保先生は、2023年2月に、提言書を出したことで市教委から受けた文書訓告処分は不当だとして、大阪弁護士会に人権救済の申し立てをされました。

これは、「僕が黙っていたら、現役の人たちが、ますます声を上げにくくなってしまう。真面目に仕事をしながら日々感じることを発言するのは当然の権利と考えてのこと」ということでした。

子どもや親御さんが求めているのは、こんな先生だと思います。

イベントには、「教育と愛国」の映画監督、齊加尚代さんもお越しくださって、貴重な解説を施して下さいました。

「僕の好きな先生」は、現場を知らない政治家のトップダウンに抗います。それは何より子どもたちを守るために。

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宮崎亮さん、久保敬先生、ありがとうございました。


  


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