【令和になって文化の一ユーザーとして著作権を考えてみる~後編】

10連休も終わり、令和の仕事始めとなりました。連休明けにたまった仕事が多く慌ただしい日々を過ごしている方も多いと思われます。

さて、専門外であるものの関心の高い著作権について触れてますが、意外と気にしないことが多いのが実際かと思われます。本当は気にしなくてはいけないのですが、実際に物に対する所有権とは違う、無体物に対する権利なので、感覚的に権利がある、なしの認識がしづらいという面もあります。
以前は知的財産権を知的所有権という言い方も多かったですが、物を所有しているわけではないので、今では前者の言い方が多いですね。ある本を持っていればその本を所有していることにはなりますが、著作権は持ってないということになります。

今回は、そもそも著作権があることで何ができるのか、いつまでできるのか等について考えてみたいと思います。

4.そもそも著作権で何ができる?:コピーする以外にも?

著作権を手に入れると一体何ができるでしょうか?

「著作権」と一口に言っても実は様々な権利があります。一番有名なのが「複製権」でその名の通り著作物を複製、コピーする権利のことです。著作権は英語で「Copyright」と言いますが、前回著作権の起源で見た通り、著作権の元々の権利としての出発点がこの複製権にあったことが由来しております。本や画像を丸ごとブログに載せて問題になるのは、たいていが複製権の問題となります。

他にも日常に関係しているものだと、

 ▶ブログをアップしたり、動画等を配信する「公衆送信権」
 ▶音楽を演奏する「演奏権」
 ▶美術品を展示する「展示権」
 ▶CD等を販売する「譲渡権」
 ▶映画を上映する「上映権」
 ▶映画の著作物の複製物を頒布する「頒布権」

などなどかなり色々な権利が挙げられます。多くの方が日常経験していることから、レコード会社や映画配給会社等エンタメ系の会社には欠かせない権利が満載だということが分かります。ちなみに権利の束になっているので上記の一つ一つの権利を「支分権」という言い方をすることもあります。
「著作権」の問題を話すとき、具体的に何の権利の話かつかむ必要があります。

5.著作権はいつまで続く?:某ネズミは永遠?

思った以上に複雑な著作権はずっと続くものでしょうか?一見ずっと著作権が続きそうな気がしますが、もちろん限りがあります。基本的には、原則「著作物の著作者の死後50年」となっております。

なので、いわゆる文豪と呼ばれた人の作品は実は著作権が切れたものが多かったりします。千円札でなくなって久しい夏目漱石は1916年に死去しているので、半世紀以上前の1967年(法律上死去した年の翌年1月1日から起算)に著作権はすでになくなっていますし、今年没後50年以上経つ1969年までに亡くなった作家の作品は今年までに著作権がなくなることになります。著作権の制約がないので、文豪の作品を電子書籍で読めるなんてことも珍しくなくなりました。
(正確に言うと著作者人格権という著作財産権とは別の権利は残りますので、著作権は完全になくなるわけではないですがその話はひとまず置いておきます)

また、下のような例外があります。

〇無名・変名の著作物:公表後50年(死後50年経過が明らかであれば、そのときまで)
〇団体名義の著作物:公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)
〇映画の著作物:公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)

一番多くの人にとって身近である映画は公表後70年なので、今年公開されて70年経つ(1949年)映画を調べてみると、

若草物語:大女優のエリザベス・テイラー出演。日本だとアニメ化も。
第三の男:テーマ曲が恵比寿駅の発車メロディーや一昔前のエビスビールのCMに使われていて有名
等々です。

ちなみに上記映画はアメリカの映画なのですが、エンタメ大国のアメリカの場合著作権の保護期間の事情が異なっています。有名な「著作権延命法」(Copyright Term Extension Act of 1998)により

〇1977年までに発表された作品:法人著作権の満了を発行後75年から95年に延長
〇1978年以降に発表された作品:作者の死後70年間、法人著作の場合は発行後95年間か制作後120年間のいずれか短い方
となっています。

これは「夢の国」(夢ではなく金とはよく言われるようですが)ことディズニーランドの運営やディズニーのキャラクターの権利を持っているウォルト・ディズニー社(日本のディズニーランドはオリエンタルランドが運営)が、ミッキーマウスの著作権を切れさせないようにするためが、ロビー活動をして著作権の保護期間を法改正で延長させたと言われています。

このためアメリカでは著作権延命法のことは「Mickey Mouse Protection Act(ミッキーマウス保護法)」と呼ばれたりしています。かなり揶揄している言い方なのですが、キャラクタービジネスで歴史上最も成功した事例であるがゆえに1年でも長く著作権を保持したい思わくがあったのは間違いないのでしょうね。
現在、ミッキーマウスの著作権の保護期間は、1928年公開の映画「蒸気船ウィリー」が初出なのでそれから95年後の「2023年」までの予定です(改正前は2003年で終了予定だった)。

あと4年となると意外ともうすぐですね。このままだとミッキーマウスはいわゆる「パブリック・ドメイン」となって、皆自由に使えるはずですが、そもそも映画の著作物ではなく、生みの親のウォルト・ディズニーが亡くなった1966年からカウントしたら、もう少し先の「2027年」になるとか、その保護期間には色々議論があるようです。また著作権が切れても商標権では保護されてますし、即ビジネス利用は難しいでしょうね。

ここ10年で毎年のように映画が公開されている「アベンジャーズ」シリーズの著作権も複雑ですよね。年に1回だけでなく、年に2回公開されているようなので、企画そのものは言うまでもなく著作権管理だけでも大変です。

このようにキャラクタービジネスをしている会社にとっては、著作権は生命線と言えます。私も幼い頃、自作の漫画やキャラクターをノートに書くのが好きだったのですが、自分の生み出したキャラクターが巨大なビジネスとなって世の中に存在しているのは、本当に限られた人しかできないので、凄いことだと思います。

…著作権をビジネスツール、マーケティングツールとして考える記事を書こうと思ったのですが、少し長くなってしまったのでまた今度整理してみようと思います(まだまだ勉強中)。

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