Ryuseiと「RIZARDI」

  ここらで私のもう一つの活動名義であり原点「RIZARDI」(リザーディ)について語らねばと思います。

 私が作曲を始め、当時のインディーズ系音楽配信サイト「muzie」(現・BIG UP!)に投稿していた頃(2009~)から使っていた名前が「RIZARDI」です。音楽経験は一応小学生からのピアノがあったのですが、ここまで突き動かされるきっかけになった音楽ゲームの曲みたいなカッコイイ曲を作りたいという思いでした。一方で名前の由来はかえんポケモン「リザードン(LIZARDON)」からとって、”強くてカッコよくて人気者になる”ゾ!というナンとも少年然としたものです。この辺は音楽ゲームではないワケですが、元をたどればトカゲ(Lizard)じゃないかってことで…頭の”L”はRyuseiのRに変えたかったような気がします。この頃はずっと「ハードコアテクノ」という、テクノの中でも音が歪んでテンポが速い曲ばかりを作っていて、音色の選び方も”そういう感じの”音以外はなかなか分かりませんでした。手持ちのメトロノームでは250BPMまでしか表示できないのですが、使っている作曲ソフト「FL Studio」は999BPM(正確には999.999BPM)まで設定できるので、速さだけを追い求めて常軌を逸したテンポの曲に挑んだりもしました。作曲の勝手も良く分からないクセして、そんな苛烈な条件でサマになる曲なんて到底なりませんでしたが…(汗)ちなみにDAW「FL Studio 8」を手に入れる前は、MIDIを扱える河合楽器の音楽学習用ソフト「スコアメーカー3.1」で作曲”ごっこ”をしていました。でもピアノロールではなく五線譜上に音符を入力でき、GM128音色を鳴らすことが出来ました。

 そんな中で転機だったのが、「Ryuseiの足跡(1/2)」にも書いた大学の作曲サークルへの加入です(2015)。てっきりメンバーはみんなDTMかと思ったら、軽音や吹奏楽あたりから来ている人が多く、ジャンルは主にポップス~ロック~ボカロ…とにかく、歌詞のある曲ばかりでした。思えば私の曲はみんなインストで、ここまで歌詞は一度も書いたことがありませんでした。

https://soundcloud.com/xxrizardixx/rizardi-we-are-okay-web-edit

 初めこそ「ちょっと畑違いだったかな」と思っていましたが、だんだんメンバーに触発され、ここでRIZARDIとして初めて歌詞のある曲を作りました。TASCAMオーディオインターフェイスを買った時についてきたマイクを引っ張り出しては自分で歌い切るわけですが、恥ずかしかったので0.5倍速で収録して早回ししています(いわゆる”帰ってきたヨッパライ”とか”チップとデール”の手法です)。これに味をしめてしまったために次から次へ歌を作り続け、気づけば近年の曲の約半分に歌詞がつき、ラップやコントにも繋がっていきました。パズルのように詞を組み立てる工程は、もはや作曲・編曲よりも得意な気がします(笑)

 ここからが本題です。

 一応作曲は趣味としてやってきたわけですが、プライベートで諸々あったことで「音屋としてさらなる飛躍をしたい」と切に夢見るようになりました。Web上のコンペに目を付けて曲を送ったりしたこともありましたが、なかなか芽は出ないという現状です。「そう簡単なコトじゃない」と口では言っても、やはり”強くてカッコよくて人気者になる”には遠く、もどかしいばかりです。じっくり腰を据えて、自分の出してきたリリースを省みて分析――これがPDCAサイクル――した結果、今まで「作風がブレすぎていたのでは」という結論に至りました。最初の方はゲームリスペクトの「ハードコアテクノ」三昧だったのに、だんだんポップスやヒップホップみたいな音楽を取り入れてきて、アルバムとしてまとめたら当然ごった煮。カッコいいのが正義な音楽、”エモい”のが正義な音楽、優しいのが正義な音楽…と、方向性がまとまっておりません。色々な音楽がやれる事自体が良いにしても、結局そもそもの注目度が足りない限り、「こんな音楽が聴きたい」というリスナーの機会にマッチングするのが難しいままだと感じました。

 ここまできて、活動を名義で分けることに行き着きました。「RIZARDI」としてはこれまで通りハードコアテクノ~もっと広義にダンスミュージックを、本名「Ryusei」としてはポップスその他をやるのがちょうどよいとも、あっさり感覚で分けました。芸能界でも友近でコントを、水谷千恵子で歌手を…シド・ウィルソンでSlipknotを、DJ STARSCREAMでDJを…などなどの例があるわけですが、「RIZARDI」も「Ryusei」もどちらも私自身であります。どっちかが大本でどっちかがアルターエゴって感じでもありません。同じ人間を違った切り取り方、違った広げ方、違った伝え方で表現するというぐらいな認識です。あとで自然と気付いたことなのですが、「RIZARDI」が体現するのは私の「理想」です。キワどいネタにも噛みつきながら、獣の如くブルータルにカッコよさを追い求める硬派な「Hardcore Beast」ことRIZARDI。こっちがマイクを握るとほぼラップで、直接的な表現やボースティング(自慢するようなマイクパフォーマンス)もそこそこに、攻撃的で刺激的なスタイルです。”ついてこれる奴だけついてこい”精神です。対して「Ryusei」は「現実」です。日常の楽しさ悲しさや真っすぐな気持ちをポップな笑いに変える「自称音楽芸人」ことRyusei。こちらは大衆向けの顔なので、親しみやすい歌・懐かしい歌・可笑しい歌などを届けます。
 RIZARDIとして知り合ったクリエイターの中には、多分私ほどポップや歌謡曲などを作れる(作りたい)人はほとんどいないでしょう。逆にRyuseiのスタイルからは、裏であれほどゴリゴリなサウンドに傾倒しているとは想像できないでしょう。正直どっちもやってるから「面白くて」、一芸に絞ったら「面白くなくなって」しまうのです。ガラパゴス上等だったスタイルがやっと体系化し、形容できるようになりました。

 「私にとって音楽とは?」…その答えは未だ出ません。しかし悩んだ甲斐あって、そこに向かう2つの道しるべを手に入れました。Ryuseiに興味を持ってもらえたら、1度でいいので「RIZARDI」の在り様も覗いてもらえるとニヤリ、逆またシカリ、私ニコリです。もし気が向けば、RIZARDIの世界観とRyuseiの世界観が激突するなんてリンクもあるかもしれません。最後に、このマガジン「Ryuseiの※個人の感想です。」は引き続きRyuseiの方が展開していくので、以降も宜しくお願い致します。

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