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Stella Cadenza Vol.1全曲歌詞&解説6「Interlude ~透明人間~」

Title: Interlude ~透明人間~
Key: A minor
BPM: 180

<ランダムで選ばれた人を 突然 "透明人間"に変える実験>

 この曲は「ある日!突然!透明人間になった!」というテーマがアイデアの種となり、動き始めました。もし、どこかの研究所が”透明人間になれる薬”を開発・商品化することをもくろんでいたら?謎の人体実験を行っていたら?という設定で妄想しながら曲は進みます。被験者は全国の名簿からランダムで抽出された男女3人…1人は銭湯の番頭を務めて15年の男性、1人は有名なアイドル歌手の女性、そして最後は都会のホームレスの男性でした。全く違う生き方を歩んできた3人が突然”透明人間”に変化したらどんな事が起こるのか、その結果報告が「Interlude ~透明人間~」です。透明人間になったら堂々と女湯を覗きに行っちゃうオッサンというなんとも剽軽で俗物的な幕開けながら、「Stella Cadenza Vol.1」の中では最もダークな1曲となりました。その顛末をここに。魔窟とは失礼千万だと思っています。

 曲の構成を細かく見ていくと、8小節で被験者のデータを取り出す→8小節で被験者のことについて語る→8小節で実験結果を報告するというルーティン4回があります。”被験者のことについて語る”パートはジャンルに落とし込むとすればドラムンベース~ビッグビート的で、エッジーなドラムの上の「ラ・ララレ♯レ・レ♯レ・レ♯レシド♯ドラ」というシンセ&ピアノのフレーズもなかなか奇怪です。”レ♯レ”はトライトーン(増4度)の音と一緒に鳴らすことで、わざと不協和音を演出しています。そして一転、”実験結果を報告する”パートはことごとくバッドエンドで、トラックも暗澹な雰囲気になります。確か1度ボツにしたこの曲向けのビートを掘り返して、再生速度とピッチをいじった上で改めてここに配置したという経緯があったと思います。またひたすら”事実を喋る”語り部はもちろん私ですが、”被験者のことについて語る”パートと”実験結果を報告する”パートでエフェクトを変えています。

 
 被験者は男女3人。ところが、この曲に登場する被験者は4人となっています。実は、研究所チームの1人がさらなる被験者として秘密裏に選ばれていました。彼は周りに自らの姿が見えなくなるという”不幸”をその身に受けたのですが、皮肉にもこれが彼含めチームの追求した夢が叶った瞬間なのでした。あなたは透明人間になってみたいですか?

男性(55歳・銭湯の番頭)のコメント
「祟りだ…これは邪神の祟りだ…!!!」

女性(25歳・アイドル歌手)のコメント
「こんな仕打ちありえない…ずっと大変だったけど、ファンの皆さまがいてくれる限りはもう一度ステージに立ちたかったのに…」

男性(70歳・ホームレス)のコメント
「もう思い返す気力もないよ」

男性(43歳・透明人間の研究者)のコメント
「お先真っ暗…イヤ、お先真っ透明って感じですかね。あ、イヤ、むしろ不透明ですね。」


 数日後に薬が切れて戻っていたらいいのですが…

===試聴===

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ケース1/男性(55歳)
ある日突然 透明人間になった
彼はとある銭湯の番頭
この銭湯で何しても誰にも気付かれないと悟ってしまった彼は歓喜した
ありあまる欲望を解放し 女湯目掛け飛び込んだ
じっくり品定めしてやろうかと虎視眈々

しかし彼は気付いた
女性客にはお年を召した方々しかいない
一人残された彼にとってそこは 桃源郷どころか魔窟であった


ケース2/女性(25歳)
ある日突然 透明人間になった
彼女は売れっ子アイドル歌手
あまりの人気でろくにプライベートを楽しめなかった彼女は歓喜した
変装を捨てて街へ繰り出し ただ贅の限りを尽くした
この際イメチェンでもしちゃおうかと意気揚々

しかし彼女は気付いた
彼女はもう誰にも注目してもらえない
容姿を失った偶像(アイドル)を「可愛いね」なんて 誰も称えるはずがない


ケース3/男性(70歳)
ある日突然 透明人間になった
彼は大都会のホームレス
日に日に汚れ醜くなる姿を嘆き続けていた彼は歓喜した
この哀れな姿を 衆目に晒す必要は無くなった
今まで通り暮らせりゃ御の字だと前途洋々

しかし彼は気付いた
そもそも誰も彼の生き様に関心を示してはいない
姿すら見えなくなれば、彼は人々の記憶に 何を残せるのだろう


ケース0/男性(43歳)
ある日突然 透明人間になった
彼は某研究所の研究員
命運をかけた一大プロジェクトの実験を成功させた彼は歓喜した
”人類の夢”を誰より先に 実現したのはこの男
末代まで語られる偉業だと威風堂々

しかし彼は気付いた
透明になった体を元通りにする方法はない
彼を待ち受けていたのは誰の干渉をも許さぬ 永遠の孤独だった

被験者はランダムで選ばれた男女3名 そして彼自身
革命的な大発明は一転闇の底へと葬られた
後悔と余生を生贄に…
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