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Stella Cadenza Vol.2全曲歌詞&解説2「天鵞絨の女性」

Key: F♯m
BPM: 101
読み:ビロードのひと

<ムード歌謡との邂逅(であ)い>
 「次はムード歌謡唄おう」例によってアッサリ制作が始まっています。知っていたのは「たそがれの銀座(黒沢明とロス・プリモス)」「長崎は今日も雨だった(内山田洋とクール・ファイブ)」など有名どころぐらいで、それこそ完全に雰囲気の糸―つまりムード―を手繰りながら作る他はなかったです。ない知恵絞って出したシチュエーションが「あの日新宿のバーで見かけた人がどうしても忘れられない」というもので、とりあえず”バーには素敵な女性を””主役の男性には未練を”設置してみようというマインクラフト的発想で世界を構築することにしました。男性は心の中で女性を抱きしめたかったはずがそんな勇気もなく、あまつさえ手を掴むことさえ叶わず、あたかもビロード(ベルベット/ベロア/天鵞絨)のようにするりとすり抜けてしまった気分だった…と。1番サビの「次は僕とお話しませんか?貴女(あなた)全貌(こと)が知りたくなったのです」は、譜割りはだんだん細かく、音はだんだん高くなっていく焦りとか静かな興奮の盛り上がりどころです。もう一目見ただけなのにどんだけ入れ込んでんの?って話ですね。…「当たって砕けろ」と人は言いますが、ヘタに動いて強制わいせつ案件出さなくて何よりとあくまでポジティブに考えることにします。

 音方面だと、ムード歌謡と言えばサックスという発想には至ったものの、持っていたサックスの音が非常に残念!だったことで一度行き詰まりかけました。通信カラオケのサックスの方がまともではないかと今でも思います(汗)。幸い、探せばフリー音源もあるもので、Dream Vortex Studioの「DVS Saxophone」で及第点に達したと思い採用。一気に曲が”固まった””締まった”感じがします。途中「シャカッ」と鳴っている音はスクラッチ系のFXで、よく聴いていた米津玄師の「Lemon」で聴ける”ウェッ”的な変わったFXのマネです。Lemonの意図は不明ですが私のは単なるにぎやかしです。また、制作開始当時はイ短調で作っていましたが、頑張って低音で歌ったほうが良いと考え-3して嬰へ短調に変えています。

 ところが、真面目なのはここまで。

 真面目に歌っているように見えて、歌詞カードには1曲を通して異様な量のルビ(振り仮名)を仕掛けています。何を血迷ったか、歌が進むにつれだんだんムチャで強引な読み方が増えてきて、ただ英語に言い換えただけのものから、表記と読みを変えることで2つの内容をいっぺんに示すものまでパターンはさまざま。果てにラストサビの「哀の唄(セレナーデ)」はまず”哀”に愛(アイ)と振られ、”アイのうた”を「セレナーデ」と読ませるという二重のルビが付いてます。実はそもそも「天鵞絨(ビロード)の女性(ひと)」というタイトルは、だいぶ前に書き留めていたタイトル案の一つでした。当時何を歌いたかったのかは不明ですが、6文字のタイトルにルビが6文字あるシツコさがうっかりツボに入ってしまい、この悪ふざけを開発するに至りました。ちょうど岡崎体育が「Natural Lips」「留学生」で日本語(英語)の読み方に遊びを入れて話題を呼んだのも拍車をかけたのではないかと。ただ、「永遠(せつな)に~」は=”刹那のうちに盗られた男””永遠に盗られたままの男”の両方の意味を入れ込んで、しっかりダブルミーニングだと思ってます。

===試聴===



===歌詞===
倖せ(しあわせ)なんて 遠いぞと決めつけて
目を背けてた 奇跡(ミラクル)さえも
ほんの心傷(ささくれ)癒しに 店(バー)の奥
雑踏(ひとごみ)不意に 絡んだ視線
動き出す遊戯(こい)

臆病(いくじなし)に成り果てるくらいなら
勇気振り絞り 捧げた一杯(バーボン)
大都会(メトロポリス)の片隅 新宿で
魔法のような 運命(さだめ)が今
廻り始める

反射する 店内照明(ネオンサイン)白い柔肌はまるで…
往かないでおくれ この瞬間(とき) 去り行くあなた

決断の言葉(またここで)は恥ずかしげで
心臓の鼓動(おと)に消えそうで
次は僕とお話しませんか?
貴女(あなた)全貌(こと)が知りたくなったのです…でも
するりすり抜けた 天鵞絨(ビロード)女性(ひと)


恋(あそび)感(ふ)けることもせず 独身(ひとりきり)
わがまま後悔(みれん) 苛む日曜日(ホリディ)
鮮(ささ)やかだっためぐり逢い(あのひ)記録(おもいで)
そっと撫(め)でては郷愁(ノスタルジィ)
身をやつす僕

臆病(いくじなし)じゃなかった ただ臆病(こわがり)だっただけ
恋した刹那(ほんとう)愛する覚悟(うそ)間(はざま)を裂いた縁(よすが)

別離の言葉(さようなら)破叶(はかな)結末(こえ)
新宿(あのまち)雑踏(おと)に溶けそうで
あれは逃した奇跡(ミラクル)だったのでしょうか?
今や誰にも訊けない 潰(き)えた真実(こたえ)…もう
するりすり抜けた 天鵞絨(ビロード)女性(ひと)

懇願の言葉(あいたいよ)絹の如(しろ)虚空(そら)
涙(ねがい)枯れ果てて…哀<愛(アイ)>の唄(セレナーデ)
永遠(せつな)恋心(こころ)盗(と)られた男(ばか)でいい
再会(かなわぬゆめ)追い縋る男(ばか)でいいと…そう
唄えども変わらぬ最終章(するりすり抜けた) 天鵞絨(ビロード)女性(ひと)
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