消費税と派遣雇用に関する整理

巷で言われる、「正規雇用から派遣雇用に切り替えると、消費税の仕入税額控除ができるようになり、利益が増える(節税できる)」という説を検証した内容を、下記にまとめておく。


○正規雇用を派遣雇用に変えた場合、利益はどのように変化するか。

前提:
売上1100(税抜1000、消費税100)
仕入550(税抜500、消費税50)

この場合、納税する消費税は100-50=50となる。

この前提で、従業員を1名雇用したと仮定し、

1.正規雇用300支払い
2.派遣雇用330(税抜外注費300、消費税30)支払い
3.派遣雇用300(税抜外注費273、消費税27)支払い
4.派遣雇用250(税抜外注費227、消費税23)支払い
5.派遣雇用200(税抜外注費182、消費税18)支払い
6.派遣雇用350(税抜外注費318、消費税32)支払い
7.正規雇用273支払い(参考)

上記の、1~7のケースに関して、税引き後の利益の変化を検証してみる。

※1 正規雇用の支払い、及び税抜の外注費は、すべて派遣社員の収入と仮定。
※2 所得税、保険料、派遣会社の手数料等は考慮しない。

1.まず正規雇用の場合

売上1100
仕入550
正規雇用賃金300
税引前250(1100-550-300)
消費税納付50(100-50)
税引後200

2.正規雇用を派遣雇用に切り替え、税"抜"外注費を正規雇用賃金と同額にした場合

売上1100
仕入550
派遣雇用外注費330(税抜300:消費税30)
税引前220(1100-550-330)
消費税納付20(100-(50+30))
税引後200(1のケースと利益は変わらず)

3.正規雇用を派遣雇用に切り替え、税"込"外注費を正規雇用賃金と同額(正規雇用300から税抜で-27)にした場合

売上1100
仕入550
派遣雇用外注費300(税抜273:消費税27)
税引前250(1100-550-300)
消費税納付23(100-(50+27))
税引後227(1のケースから利益27増)

4.正規雇用を派遣雇用に切り替え、税"込"外注費を250(正規雇用300から税抜で-73)にした場合

売上1100
仕入550
派遣雇用外注費250(税抜227:消費税23)
税引前300(1100-550-250)
消費税納付27(100-(50+23))
税引後273(1のケースから利益73増)

5.正規雇用を派遣雇用に切り替え、税"込"外注費を200(正規雇用300から税抜で-118)にした場合

売上1100
仕入550
派遣雇用外注費200(税抜182:消費税18)
税引前350(1100-550-200)
消費税納付32(100-(50+18))
税引後318(1のケースから利益118増)

6.正規雇用を派遣雇用に切り替え、税"込"外注費を350(正規雇用300から税抜で+18)にした場合

売上1100
仕入550
派遣雇用外注費350(税抜318:消費税32)
税引前200(1100-550-350)
消費税納付18(100-(50+32))
税引後182(1のケースから利益18減)

7.正規雇用は変わらず、賃金を273(-27)にした場合(参考)

売上1100
仕入550
正規雇用賃金273
税引前277(1100-550-273)
消費税納付50(100-50)
税引後227(1のケースから利益27増)

試算はここまで。

見ての通り、1~7のすべてのケースで、正規雇用→派遣雇用の利益の変化は、「税抜で増減した分」が変化しているということが分かる。ここから分かることは、「消費税が控除できるから得になる」のではなくて、「(税抜価格の)経費を削減した分が、利益になった」ということだ。

「消費税で得をする」という、よくある例は、上記の試算の1と3を比較して、「正規雇用で300だったAさんを、派遣雇用のBさんに切り替えたら利益が27増えた」という説だが、試算の通り、これは、消費税を控除できるようになったから利益が増えたのではなく、また、正規雇用も派遣雇用も関係なく賃金300を支払っていたAさんを、外注費273のBさんに切り替えたことで、300-273で27の利益が増えたということになる。

以上。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?