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”Stoop” ができるまで vol.2

こんにちは。東京・三軒茶屋でStoopという美容室&コーヒースタンドを経営しています、溝田隆幸です。


前回 「”Stoop” ができるまで vol.1」では ”物件探し、収支計画” についてお話ししました。

今回の vol.2では、「具体的に物件探しってどうするのか?」についてお話ししたいと思います。

なるべく短くまとめようとしましたが、また前回のように長くなってしまいました、、。

お時間ある時にでも読んで頂けたら嬉しいです。

それでは vol.2 、どうぞ。


ネットと足を駆使した物件探しの日々


前項で述べた通り、2年後に新店舗を立ち上げることを決意してから最初の1年は、資金の捻出や収支シュミレーションの繰り返しに勤しみました。

その結果、大まかな目安として、、

●立地条件・現店舗との位置関係・スタッフ数・スタッフ構成・価格設定・などなど、、、現実的にありそうな色々なパターンでの収支シュミレーションは常にしつつも、一旦は大まかな設定としての ”18~25坪。坪単価2.5万円以下” にヒットする物件を一つずつ検証していくことにしました。

●対象エリアは中目黒。

ここまでざっくりと決めたらいよいよ物件探しをスタートするわけですが、では具体的にどう行動するのかと言うと、Hairmates三軒茶屋店の物件探しの際にもそうしたのですが、自分の場合は大きく分けて以下の3つ。

① at home や SUUMOをメインに、その他諸々の物件検索サイトで探す
② 現地を歩いて「for RENT」と張られている建物を探す
③ 不動産業者にお願いする

ではそれぞれについて少しだけ説明を加えていきたいと思います。

まず ①の「at home や SUUMO などの検索サイトで探す」 から。

住居探しとしては馴染みのある物件検索サイトですが、こちらは商業用テナント探しとしても大変重宝します。

当時不動産業者さんから聞いた話では、「 “at home" には、その他の不動産検索サイトで出ている物件は大概載っている」という事だったので、基本at home を見るようにしていました。

ただ自分は念の為、他にもいくつかの検索サイトで同時に見るようにしていました。

理由は各社微妙に検索条件の項目に違いがある為、その条件の穴に引っ掛からない数件を漏らさないようにする為に、です。

またこれらの検索サイトは、基本的には条件を登録しておくとそれにヒットする空き物件がでてくるとメールでお知らせしてくれるのでそれを待ちます。
そしてそれを待ちつつ、ちょこちょこ検索条件を変えてみて(例えば家賃上限を1万円だけ上げてみる、とか)新たにヒットする物件がないかどうかをチェックします。


次に②の「現地を歩いて『for RENT』と張られている建物を探す」

これは少し非効率で「今の時代、、」感もあるのですが、それでも検索サイトに引っ掛からない物件が歩くと必ず出てきます。

これは単純に検索サイトには掲載されていない、大家さんが独自に募集しているものがあったり、またはちょうど申し込みが入っているタイミングや不動産屋さん側の更新タイムラグなどで検索サイトには引っ掛からない、など色々な理由でだと思います。
(申し込みが入っていると一旦掲載を取り下げて、その後流れると再び募集がかかる事はよくあります)

そして希望エリア周辺を歩いている中で「for RENT」の張り紙を見つけたら、そこには必ず連絡先が書かれています。
そんな時はその場ですぐに電話を掛け、

「今も募集中かどうか」
「美容室とコーヒースタンドという業態は可能かどうか」
「家賃や広さはどれくらいか」

という事を確認します。

また、「for RENT」という張り紙が張っていなくても、「ここはあきらかに空いてるよなぁ、、」「お店の作りは残っているけど、もうしばらく営業していない感じだよなぁ、、」と思う物件を見つけたら、建物の正確な住所を割り出し、何か情報が出ていないかをネット検索します。

そうすると、運が良ければテナント募集中のページが出てきたりします。

そうでなくても「閉店しました」等の記事に辿り着いた場合、募集中等の内容が見当たらなくても何かしら載っている連絡先に問い合わせ、「募集していますか?」と直接聞いてみたりします。

大家さんの中にはなんとなく面倒くさくて募集をまだ開始していなかったりや、貸す気は無かったけど熱意を持って伝えられるとちょっと考える、といった事も少なくありません。

そんな可能性を信じて、とにかく電話確認をしてみます。

最後に③。

これには希望エリアに根を張る地元の不動産屋さんを頼る場合と、非公開の商業用物件を専門に扱っている業者さんにお願いする場合の2種類があります。

前者の場合は、直接その不動産屋さん(どの地域にも4~5件は昔ながらの不動産屋さんが大体あります)を訪ね、店舗用物件を探している旨を伝えます。
こういった地元の不動産屋さんは、検索サイトに載らない物件を管理している事も多々あると言われる事からです。

ただこれは経験上、ほとんどの不動産屋さんはあまりまともに相手はしてくれませんね。。。

大体は、何も調べたりせずに「今は無いですねぇ~」とか「うちは店舗物件やってないんですよ~」という対応がほとんどでした。

それは本当なのかもしれないですけど、感覚的にはなんとなく「相手にしようとしていないな、、、」といった印象です。

スーツを着て行った時も、「今すぐにでも契約するつもりです!」といった雰囲気を出した時でも反応は同じでした。

これにはきっとその不動産屋さんとの長年の付き合いや信頼関係が必要なのかもしれません。

そうは思いつつも、「それでももしかしたら何か良い事あるかも、、」と思って何件もアタックしましたが、、、どこも結果は大体同じ。今だに攻略方法は分かりません(笑)。

でも地元の不動産屋さんと良い関係が築ければ、きっと募集前のお得な空き物件なんかを他より先に教えてくれたりするんでしょうね。


次に後者の商業用物件を専門に扱っている業者さんですが、これもネットで検索するといくつか出てきます。

こちらはどういった仕組みかは分かりませんが、表立って募集がかかっていない物件・又は募集がかかる前の物件、を専門的に扱っている業者さんがあり、利用方法としては一定期間分の利用料を支払ったりや成約した際に成果報酬を支払う、などがあります。

以前に利用したことがありますが、確かにどの検索サイトにも引っ掛からない物件(非公開物件なので当然ですが)が多数出てきます。

ただこういった業者さんは大手企業(携帯キャリア会社や飲食大手チェーンなど)がクライアントだったりもするので、駅近一等地で家賃もそれ相応、、な物件などをメインで扱っていたりします。

今回はそこまで駅近やメイン通り沿いなどには拘っていなかったので、利用はしませんでした。

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そんな上記3つの方法を同時進行させながら実際に物件探しを始めるのですが、始めてそんなに時間を待たずして、家賃・広さ・駅からの距離など、設定した希望条件に合うテナントは少なからずいくつかは出てきます。

そうすると次にする事は、「実際に現地まで行って周辺状況を確認する」です。(現地を歩いていて見つけた物件の場合は、諸条件の確認の前にこれをします)。

この時に前回の記事でお話しした ”収支シュミレーション” に当てはめながら検証をしていきます。

「この場所の人通りなら毎月の新規客はどれぐらい見込めるだろうか、、」
「この家賃を支払う為にはいくらの売上が必要で、それに必要な客数はどれぐらいだろうか、、」
「その目標売上の為には何人の美容師の雇用が必要だろうか、、」
「目標売上(客数)までどれぐらいの期間で到達できるだろうか、、」

と、そういった事を実際物件のあるその場にしばらく立ってみて、または駅周辺や近くの通り・その街の人々の生活動線を観察しながら、肌感で予測できる数値をシュミレーション表に入力していってみます。

そうしてみて、まずはざっくりとだけでも「有りか無しか」を判断します。

と、ここで一旦少し条件に話を戻しましょう。

最初に掲げた『中目黒。1階。18~25坪。坪単価2.5万円以下』というのは条件でいうとかなりタイトで(平均よりもかなり割安)、逆にいうとその条件下の物件というのは立地が良くない(駅から離れている。裏通り。使いづらい形、等)ものがほとんど。

なのでシュミレーションをするとどれも「う~ん、、。いけるかなぁ、、どうかなぁ、、」と悩ましいものばかりです。

とは言え、そもそも出てくる空き物件で条件がピタッと合うものなんて中々無く、
「ちょっと小さいなあ、、」
「ちょっと広すぎるなあ、、」
「家賃がもうちょい低ければなあ、、」
「どの駅からも遠いなあ、、」
などなど、、。
シュミレーションするまでも無く直感では厳しいと思う物件がほとんど。

ただその場に少し留まり、人の流れや周囲の競合店の有無なども念入りに観察すると、やり方によっては上手くいけそうな光のようなものが見えてくる事があります。

そんな過大評価し過ぎない、でも少しの期待をシュミレーション表に仮定値として入力することで、

「でも毎月の新規客数をこれぐらい呼び込めればいけるかも、、」
「高付加価値を付けることで、平均単価をここまでもって来られればいけるかも、、」
「美容師を〇人確保できればいけるかも、、」

と、最初は無理と思える物件でも、どこがどうなれば「いける」物件となるかをシュミレーションする事でより具体的に確認することができます。

また逆にその結果、「やっぱり厳しいな」「現実的にその数値の達成には無理があるな」ということも再確認できます。

そんなこんなでそういった方法での物件探しを日々する中、物件情報が出る度に、又は空き物件が無いか歩き回って探す日々を第一候補である「中目黒」で繰り返す度に、私の中で一つの大きな不安と確信が生まれてきます。

「中目黒、めちゃくちゃ美容室多いやん、、」

それは一般的な感覚として当然探し出す前から持ってはいましたが、実際に中目黒の路地という路地を歩けば歩くほど、本当にどんな裏道でも小道でもそこには美容室があるのです。。
しかも一軒だけではなく2軒も3軒も、、。

この想像以上の多さには本当に驚きました。。

しかもそんな中目黒でお店を続けているということは、どのお店も美容室としての個性や力・技術・センスが高く、Stoopの特徴であるコーヒースタンドが併設されているぐらいでは大きなポイントや差別化にはならないような実力店ばかり。。。


そんなエリアでいちから顧客を獲得していこうとするのには結構無理があるな、、と。

前回の記事でも書いた通り、SNSのフォロワーが特段に多かったり、SNS含めネット媒体の使い方が上手だったり、又は個としてカリスマ性が高い人ならそんな事はものともせずに集客も求人も可能だと思います。

ですが自分にはそんな力もカリスマ性もありません。
少なくとも超激戦区中目黒で、いちからサバイブするほどの力やノウハウを持ち合わせてはいませんでした。

その結果潔く、ほとんど迷わずに中目黒を第一候補地から外す決断をしました。

この時の感情はよく覚えていて、ほんと「スパッと」切り替わった感じです。

真っ赤っかのレッドオーシャンに、自らダイブするような勇気はあの時の自分にはありませんでした。。

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そしてそこからは検索するエリアを広げ、目黒駅周辺や駒沢周辺も隈なく探すようにしました。

エリアを広げても基本的にやる事は同じです。

物件サイトで条件を登録して、ヒットしたら現地へ。
それと同時に自らの足で周辺を歩き回って探す。
気になる物件が出てきたら収支シュミレーションして、、、。

と、そんなことをグルグル繰り返すこと約半年。
遂に現Stoopのある三軒茶屋の物件と出会うのでした。

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ここでまた話を戻しますが、物件探しを始めるそのタイミングで、実際に物件が決まった際に内装設計をお願いするデザイン会社さんを、この時に既に決めてお願いをしていました。

前店であるHairmates三軒茶屋店を作った時もそうだったのですが、候補物件が出て来た際、その物件の元々の作りが美容室に適しているかどうか(給排水設備やその位置、電気容量等)、又は現状に対して希望する内装を作るのに予算的に適していそうかどうか(デザイン以前に壁や床、天井の修復や防湿、結露対策が追加で必要かどうか)など、立地条件とは違う角度からも物件を見て貰う為に、家賃や場所、広さの諸条件や自分のシュミレーションをクリアして「ここ良いかも」と思った段階で、契約前に専門的な視点からも見て貰った上で、GOするかどうかを判断する為です。

そんなデザイン会社さんですが、今回は 「&SUPPLY」という会社さんにお願いをしました。

元々の知り合いとかでは無かったのですが、このデザイン会社さんが運営している「LOBBY」というバーが池尻大橋にあり、このバーでオープニングスタッフとしてバーテンをしていた方がHairmates三軒茶屋のヘアカットのお客様だった事が知ったきっかけです。


そのお客様にLOBBYの事を教えて貰って興味を持った私は、まずはLOBBYのインスタグラムを覗いてみました。


アカウントページを見て、まずやられたのはそのカッコいい内装デザインです。
日本でよく見るバーやレストランのそれっぽい感じではなく、何かソリッドで荒々しく、でもとても洗練されていてそれでいて既視感が無く、それはそれはとにかくカッコいい空間でした。

そして次に目を惹いたのがアカウント全体の統一感。
写真の雰囲気や間に挟まれるグラフィック、スタッフ紹介やPOPUPイベントやオリジナル商品の紹介まで、、、。

ひとつひとつの投稿もそうだし、尚且つページ全体としてもすごく「デザイン」されているように見えました。

そして更にそこにはマーケティング的な要素も随所に織り込まれていそうな感じもあって、、。

「このお店の造りや日々の運営は、きっと凄い考え込まれて作られているに違いない、、」


そう思った私は今度はプロフィールに張られていたリンクに飛び、この会社の代表をされている井澤さんが書かれているnoteを読んでみることにしました。

そこには&SUPPLYやLOBBYを始めた経緯やその目的、そして将来の夢などが記されていて、特にLOBBYの開業日記である「売上・利益も全公開!飲食業素人、デザイン会社の僕らがストリートバー"LOBBY"を始めたらこうなった」はとても面白く、ちょうどお店を作ろうとしていたまさにそのタイミングだった私には、その内容全てが真っ直ぐにつき刺さりました。

そしてそのインスタグラムとnoteをひと通り見終わった頃には、

「この人達の空間やデザインに対するセンスがめちゃくちゃ良いな、、。知識と情報量も豊富そうで、またマーケティング視点もすごく強みとして持っていそう。。その上事業の目標として、全てを自社でプロデュースしたHOTELをいつか作りたいなんていう、その夢も凄く良いな、、」

と、各メンバーもみんな若く、また会社も立ち上がって数年の若い会社でしたが、そんな若く夢や勢いに溢れた彼らにすっかり魅了されました。


そしてそこからそんなに間を開けずして私はそのバーへ飲みに行き、美容室の開業について相談しに行ったのです。。

(↑井澤さんのnoteはとても面白く、またすごく勉強になるものが多いです。
ぜひ色々な職種の方に読んで頂きたいです!)


最後に、私が彼らに内装デザインを頼もうと思った最後の決め手ですが、、

仕事でも何でも、誰かと何かちょっとした挑戦をする際、それをするかしないかを決める判断基準として、

「この人達と一緒にやったら、例えそれが失敗したとしても後悔しないな。きっとひとつの経験や思い出として、時間が経てば笑い話にできそうだな。」

と、思える相手かどうか、というのをとても大事にしています。

きっと仕事や事業の成功や経済的な成功って、それ自体だけでは、長い人生の中で将来振り返った時にそんなに大きなものでは無いような気がします。

もちろんあるに越したことはないし、結果として手に入れることを目標にするのは大事な事だと思います。

でももっともっと人生を豊かにしてくれるものはきっとその ”過程” や "それ以外に得られる物" だと思うし、その経験や思い出のひとつひとつがその後の自分をより前に進めてくれる力となり、自信となり、人生をより良いものにしてくれる気がします。

そんな事を考えた時、大きな夢を描いて挑戦を始めている若い彼らに頼むことが、自分の中では「楽しめ」「後悔なく」「良い思い出」になる気がして、そう決断したのでした。


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またまた相変わらず長くなってしまいましたが、vol.2 はここまでです。

最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございました!

次回 vol.3 は、「物件の契約から内装設計、そして開業資金の融資を受ける」ぐらいまでについて綴っていきたいと思います。


次回もどうぞよろしくお願いします!

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