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いびつな世界で、わざわざ選ぶ


つい先日、ハムスターを飼い始めた。名を『ハム公』という。嫁によるゲシュタルト崩壊不可避の名だ。

板橋区の大山駅から歩いて10分ほどのペットショップで出会った生後3週間ほどのジャンガリアン。

神奈川で生まれたらしいその小さな命は色違いで5匹ほどまとめて40cm四方の透明な箱の中で展示されていた。

そしてその中でも動きが機敏で、回し車でずっこけるアホさを披露した子をハム公として迎えることにした。

ペットショップは元々苦手だった。人が寂しさを埋めるためだとか、虚栄心だとか、何かしらの欲求が入り混じって数値化された命の値札になんとも言えない気持ちになるし、売れなければ最後は殺されてしまう構造はいびつに感じる。

それでも根本を考えてみれば人間が社会を形成するところからがそもそもいびつな気がするので、僕のスタンスとしては特に批判的でもないのだけど、実際はあまり縁のない世界だった。

その中でどうみても「動物が好きだから」という動機でそこで働いてるであろう男性の店員さんに対応してもらったのだけど、その人は背が高いけどケンカなんて一切したことなさそうな、細身でなで肩の、すこしオネエっぽいというか、優しい言葉遣いをする人で、すごく丁寧な接客をしてくれた。

僕はサービス業が長いので他人の接客はどうしてもみてしまうのだけど、その人の接客は「すごくいいな」と感じた。

きっと飲食なんかより、動機の大きさとか、命を扱う上でのプレッシャーや納得できないこともたくさんあるだろうに、その中でも『やっていく』と決めた接客は尊いものだな、やるせない気持ちだらけの中で生まれる覚悟は美しいなと、勝手に思ってしまった。

人が考える正解とはほど遠い世界かもしれないけど、それでも『やっていく』ことしかできないんじゃないかなってぼんやり思う。

それにしてもハム公は想像の100倍は可愛くて尊いし、深夜に響く回し車の音であんな幸せな気持ちになるとは思いもしなかった。

せっかく一生を預かったのだからいい関係を紡ぎたいな。


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