ポリアンナ症候群
世界名作劇場に、『愛少女ポリアンナ物語』という作品がある。主人公ポリアンナが、逆境にも負けず、毎日『よかった』を探しながら前向きに生きていくというお話だ。『ポリアンナ症候群』というのは、このポリアンナ物語から取られた心的症状の名称である。
ポリアンナ症候群、不幸な状況や危機的な問題を直視せず、その中にある微細な良い面だけを見ることによって負の側面から目を背け、現実逃避的な自己満足を得ることを言う。言わば行き過ぎたポジティブ思考だ。彼氏は私に暴力を振るうし浮気もする、でも殴ったあとは謝ってくれるしパチンコで勝った時はプレゼントを持って帰ってきてくれる、私は彼に愛されているんだ!みたいな思考回路のことである。まあこの例は極端かもしれないけれど、皆が多かれ少なかれ持っているもののようにも思う。仕事は割に合わないし先が見えないけれど、先輩はよくしてくれる、ガチャは渋いしストーリーもマンネリだけど推しキャラが可愛いから続けてるゲーム、セックスは雑で下手くそだけどいい人だし安定した収入があるから結婚する……人は常にメリットとデメリットを天秤にかけて生きている。時にその判断基準は鈍ってデメリットを見ずに僅かなメリットに縋ってしまうものだ。どこまで行けば『行き過ぎたポジティブ思考』とまでなるのか。その線引きはとても難しい。
恋愛において特にそれが発生しやすいのは、『好き』という補正の強さだろう。あばたもえくぼなんて言葉もある。好きという気持ちは時にマイナス要素も覆い隠してプラスに変えてしまうものだ。さっき例に挙げたモラハラDV彼氏を我々はどれだけ笑えるだろう。好きだから、好きだと言ってくれるから、そんな『よかった』で大事なものが見えなくなっていないだろうか。なんて分かったようなことを言って利口ぶっても、結局好きだからどうしようもないんですけどね。恋は盲目。
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