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散文

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エッセイや日記のような日常の記録をまとめています。
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#私小説

萌芽

あの疼きが忘れられない。もう何十年も前の話だ。 小学2年のある夏の日、S君は学校を休んだ。…

イトケン
4年前
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神社で手を合わせるとき私たちは何に祈っているのだろうか

日本人は世界で最も「時に神を信じ、時に神を信じない」気まぐれな民族らしい。私自身よくよく…

イトケン
4年前
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中二病はやめられない

残業なんかするもんか。17時30分。時間ぴったりに退勤だ。 オフィスからエレベーターを降りて…

イトケン
4年前
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ベランダ

春風が死の影をさらって行った。 連休だが緊急事態宣言で実家に帰省もできない。せっかく晴れ…

イトケン
4年前
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精神浸食

春になると自殺する人間が多いという。 どうやら気候の変動が人間の精神状態に深い影響を及ぼ…

イトケン
4年前
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囚人

深夜、仕事帰りの電車を降りて俺は家へ向かっていた。時刻は午前0時を潜ろうとしていた。灯り…

イトケン
4年前
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雨ニモマケヌ 天然パーマと雨と僕

石原龍二 2020/11/14 13:19 外へ出ようとドアをあけたその瞬間、天然パーマが悲鳴をあげた。 「あ……雨ふってる!」 天然パーマに雨はつらい。どんなに完璧にセットした髪型も、知らぬ間にゴミ屋敷のようにグチャグチャになってしまう。外出予定の日に暴風雨が吹き荒れようものなら、もはや世界の終わりだ。頭上の世界がみるみる地獄絵図と化していくのを、己の無力さに絶望しつつ呆然と立ち尽くすよりほかにすべがない。 だから僕は雨の日の外出が嫌いだった。 しかし、とあるキャッ