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嵐の中で

晴れた日の登山は言うまでもなく楽しいものだ。
穏やかな天気の中で山を歩くことそれ以上の楽しみが山にあるだろか?

山で働く前は雨の日に山に行った事が全くなかった。
働かずに山で遊んでいればわざわざ雨に日に山に行く必要もない。
そして山で働くようになった今でもわざわざ天気の悪い日に山に遊びに行ったりしない。
仕事の移動でない限り雨に日に外に出る事もない。

「山に行くのは晴れた日。」
それがいいと思う。

でも山にずっといれば嵐の日も来る訳で、
今シーズン最も荒れた嵐が過ぎ去っていった。
もちろん誰もいない。
小屋が揺れるくらいの強風と、
寝ていると色々な隙間から水飛沫が飛んできて顔にかかる。
気がつけば小屋の中が落ち葉だらけになっていた。
山で嵐に遭うと、
何かのアトラクションの様な一日を過ごす事になる。

でも山はまだ優しい。
ヨット旅の途中、海で荒れた時は死を覚悟した。

ヨットの大先輩が小笠原までヨットで行く事になった時に一つアドバイスをくれた。
「自分も海に出て色々な嵐を体験すれば、
その経験で大抵の事はどうにかできる様になると思ってた、だけど小笠原に行って帰りに嵐に会った時にどうにもならない事があると思った。」
そう言っていたのが忘れられなかった。
そしてその通りの事が起きた。

思い返せば山でも海でも、
嵐を忘れた頃に嵐がやってきて、
人の力ではどうにもできない大きな力を僕に見せつけてくる。

窓に吹き付ける雨と、
はるか遠くから聞こえる唸りを上げながら吹き付けてくる強風を僕達は見ている事しかできない。

自然の前に人間の力は小さいものだとよく言われる。
今では色々な事が良くなって街ではそんな事を感じる事も少ないかもしれないけど。

そして、
嵐はいつも素晴らしい景色を届けてくれる。
荒れる前後は何故か夕焼けや朝焼けがとても綺麗になるのだ。

真っ赤な朝焼け
朝焼けの空

嵐が過ぎ去っていった後に見る太陽は何故かいつも以上に嬉しく感じてしまう。

どうにもできない力を感じたまに自然に対して強烈な恐怖を感じる。

それでも次の日には太陽はまた昇るのだ。

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