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朝ドラでムジナモ事件

朝ドラが面白い!人生をかけて植物を研究した、在野の天才とも言われる牧野さん、ドラマでは万太郎の役を、神木くんが演じていて、対立する?田邊教授の役を要潤さんが演じています。

この牧野さんのこと全然知らなかったので、こんな人がいたのか!と驚きながら楽しんでいます。実際に書いた本を見かけて、幾つかつまみ読みしてみたら、僕は酒もタバコもやらないから80代になっても老眼鏡いらずで自慢だ、というようなことも書いていて、それは単純に羨ましい!すごい!と思いました。

さて。朝ドラでは、田邊教授の描き方がウェットで攻めていて、しかし、いわゆる教授全般のイメージダウンというか、下手するとミスリーディングすらありそうだという気もして、明日からのつづきを見る前に、ちょっと何か書いてから寝ようかと。

ドラマでは、ムジナモを偶然発見した万太郎が、田邊教授に、ムジナモの正体と論文のあらすじを教えてもらってから論文を執筆。しかし、その教授の貢献であった初手について論文中に何も書かずに学会誌に出版してしまい、「君は自分の手柄だけを誇っているんだな」と教授。准教授が慌てて、学会誌を刷り直して「共著にしろ!」といい、「もういい!」と教授から研究室への出入り禁止にされていました。

実際はどうだったんだろう、と気にしてムジナモを検索してみると青空文庫がヒットしましたが、牧野さんが出していた図譜と同様の図譜を矢田部教授の研究室で出すことになり出入り禁止にされた、というようなことを、牧野さん自身の言葉で、ムジナモに関するエッセイ?の中で述べていました。ほかは、もし出入り禁止も無理がないとすれば、それまでの牧野さんの論文や図譜では研究室の資源利用や教授の貢献が何も書かれていなかったことがある、というような記事もどこかでみかけました。なので、これをドラマ用に圧縮するとしたら「君は自分の手柄だけを…」という風になると、ひとまず、うまい脚本という気がします。

牧野さんの書いた文章を読んでいると、それはもう本当に言葉からも植物愛が溢れていて、余裕で読者を置いていくほどの詳細に次ぐ詳細を盛り込んだ独特の書きっぷりから、やはり天才ならではの無邪気さが伺えました。そしてふと、もしやこの「読者を置いていく」無邪気を論文でもやってしまっていたから、超基本的な問題を引き起こしていたりして、という危うさも感じました。

というのも、論文の読者は、当たり前ですが、書いてあることしか読み取れません。つまり、書かれていなければ、教授の貢献が、どこにどうあったのかを知るチャンスが読者にはない。もし教授による何らかの重大な貢献があって、しかし発表された論文には何も書かれていないのだとしたら、それは読者からしたら、新しい発見に至る大事なステップを巧妙に隠されたのと同じなので、論文だけは、そのあたりもミスリーディングにならないよう、よほど注意して書かないといけません。

なので、もしや単に牧野さんが、そんなクリティカルなNGを論文や図譜の発表で繰り返してしまって行き場を失ったという事件を、妙にドラマチックにするためのエンタメ対立構造的な仕掛けとして、成果を横取りする気質で妙にウェットなキャラの教授を仕立てたのでは…と心配になります。そう気にし始めると、天才・牧野さんもいいけど、一緒にいて良いこともあっただろうけど、あれこれ困ったことは色々あったんだろうなと思われる、ドラマのモデルとなった矢田部教授の論文も読んでみたいな、と思いました。

今後の朝ドラへの期待や願いは、、、これを見た子供たちが、植物愛は育まれるのはとてもいいことだとして、あと在野の天才ってのもすごいのはすごいけど、ストレートに教授ってのも素晴らしい仕事なんだねえ、だとか、うまくミスリーディングなく、あれこれ収まるべきところに、きっちり回収されますように、という感じです。


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