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わかばのたいやき(わかば@四ツ谷)

「四ツ谷のわかば」といえば、スイーツ好きならピンとくるだろう。東京三大たいやき屋の一つ、行列のできるたいやきの名店だ。

平日の昼、四ツ谷駅からふらふらと住宅街に迷い込むと、異様な行列に遭遇する。たいやきやいた、たいやきやいたと頭の中で唱えながら列に並ぶ。

開け放された窓から、たいやきがひとつ、ふたつと焼き上がる様子が見える。型は1匹1匹別々の、所謂天然物だ。型に油を塗り、どろどろの生地を置き、あんこを一塊置き、その上に生地を塗るように置いて型を閉じ、熱々の炎の上に放つ。型を開いて焼き上がったたいやきを取り出すと、たいやきはベルトコンベアで流れていく。職人さんは大変だろうが、いつまでも眺めていたい光景だ。そうだ、これは日本の宝だ、と思った。

そうやって丁寧にこの世に送り出されたたいやきは、どうしてこんなに寂しげな表情をしているのだろう。

頭を下に袋に入れられていた熱々のたいやきを、わざわざ上下逆さに入れ直した。たいやきは頭から食べることに決めているのだ。どこかの誰かがそう言っていたから、私もその人の何かにあやかることに決めたのだ。

おまじないのように何かにこだわることがある。

お札は必ず逆さまに入れていた。小学生の時に読んだおまじないのムック本に書いてあったから。逆さまに入れるとどうなるかは覚えてないけど、多分お金持ちになるんだろう。

今はもう、お札の向きは気にしなくなった。小学生の時よりはお金持ちになったから。

たいやきを頭から食べるとなんなんだろう。

熱々のあんこから始まって、パリパリの尻尾で終わることは間違いない。

そうか、たいやきを頭から食べると美味しいのか。

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