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こーいちくん

「おばちゃ~ん この30円のパン いくら~?」

この発言をしたのは、保育所, 小学校と一緒だった近所の こーいちくん だ。 こーいちくんはりゅう坊より1歳年下だった。

りゅう坊はおとなしくて、無口で内向的だと言われ続けてきたが、あらためて振り返ってみると、年下の年代の一部の「自分より弱そうなやつ」に対しては、ちょっとばかり不満のはけ口にしていたところがあった。威張っていたかったのである。今で言ういじめに近かかったかもしれない。

こーいちくんには吃音があり、「かまぼこ」のことを「かん、かん、かーまぼこ」と、まわりを笑わせていた。

こーいちくんとはよく遊んだ記憶がある。
小学生の頃、
通り過ぎる自動車に小さい木の実を投げつけるという無謀な遊び?をふたりでしていた。
何台かはそのまま行ってしまったが、乗用車に木の実を投げつけたらその運転手が車を止めて降りてきた。
「何をしてるんだ!」と怒られた。
その場はなんとか許してもらった。
しかし、りゅう坊はこーいちくんに、
「これをやろうって言ったのお前だろ。おこられたのお前のせいだぞ」と言ったのだった。
やり始めたのはりゅう坊だった。こーいちくんに強要したのだ。
我ながら無責任で責任転嫁するひどい奴だ。

こーいちくんがりゅう坊のことをどう思っていたのかは、今だから想像できる。
「ごめんなさい」につきる。

こーいちくんは故郷を離れ関東地方に住んでいると聞いていた。
実家のお母さんが亡くなられたときに何十年ぶりかに再会した。
面影があり、61歳のりゅう坊と同じく、髪がおじさんげになっていた。

冒頭の「おばちゃ~ん この30円のパン いくら~?」という伝説の問いかけは鮮明に記憶に残っている。

おなじく近所の雑貨屋に地元のパン屋さんが納めていた「ソーセージパン」だ。包装紙には「パーマン」のイラストが印刷されていて地元では人気商品だった。

価格はこーいちくんが言ったとおり、30円だったのだが、
お店のおばちゃんがその問いかけに、「50円だよ~」と、答えたかはさだかではない。


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