青島健太・日本維新の会参議院議員の質問に分かる範囲でお答えします(2023年3月8日(水)・参議院予算委員会)

2023年3月8日(水)、参議院予算委員会において青島健太・日本維新の会参議院議員が質問する。
質問通告を見る限り、一有権者として議員の資質・能力について大きな課題意識を感じざるをえなかった。
そこで今回は、一般市民がわかる範囲で質問にお答えする中で、「国会における質問と、答弁者指定の在り方」について考えていく。

【中学校部活動の地域移行について】

中学校時代のスポーツ部の意義は?(政府参考人)

部活動の目的は、学習指導要領において以下の通り明記されている。

生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感, 連帯感の涵かん 養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり, 学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。

中学校学習指導要領(平成29年3月告示)

異年齢との交流の中で、生徒同士や生徒と教師等との好ましい人間関係の構築を図ったり、生徒自身が活動を通して自己肯定感を高めたりするなど、生徒の多様な学びの場として、また、部活動の様子の観察を通じた生徒の状況理解等、その教育的意義は高い

中学校学習指導要領(平成29年3月告示)

ただし、「部活動は教育課程外の活動であり、その設置・運営は法令上の義務ではなく、学校の判断により実施しない場合もあり得る」ことに留意する必要がある。

運動部の活動については、例えば学習指導要領解説においては以下の通り説明されている通りであるが、

〈運動部の活動〉
運動部の活動は,スポーツに興味と関心をもつ同好の生徒が,スポーツを通して交流したり,より高い水準の技能や記録に挑戦したりする中で,スポーツの楽しさや喜びを味わい,豊かな学校生活を経験する活動であるとともに,体力の向上や健康の増進にも極めて効果的な活動である。
 したがって,生徒が運動部の活動に積極的に参加できるよう配慮することが大切である。また,生徒の能力等に応じた技能や記録の向上を目指すとともに,互いに協力し合って友情を深めるなど好ましい人間関係を育てるよう適切な指導を 行う必要がある。さらに,運動部の活動も学校教育活動の一環であることから,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた視点も参考に指導を行うことが大切である。

【保健体育編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説

平成30年(2018年)3月にはスポーツ庁において、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定し、次のように説明がなされている。

○学校の運動部活動は、スポーツに興味・関心のある同好の生徒が参加し、各運動部の責任者(以下「運動部顧問」という。)の指導の下、学校教育の一環として行われ、我が国のスポーツ振興を大きく支えてきた。
○また、体力や技能の向上を図る目的以外にも、異年齢との交流の中で、生徒同士や生徒と教師等との好ましい人間関係の構築を図ったり、学習意欲の向上や自己肯定感、責任感、連帯感の涵養に資するなど、生徒の多様な学びの場として、教育的意義が大きい。

運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン

中学校時代の文化部の意義は?(政府参考人)

平成30年(2018年)12月には文化庁において、「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定し、次のように説明がなされている。

「文化部活動は、生徒が生涯にわたって芸術文化等の活動に親しむ基礎を形成する意義を有する」

なお、これらのガイドラインは2022年に統され、「新たに学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(令和4年12月)」として発出されている。


どうして部活動の地域移行が必要なのか?(文部科学大臣)

・少子化
・働き方改革
・地域スポーツの発展
・体験格差の是正

部活動は教員の働き方(給特法)にも関わる大事な課題だが、教員の残業時間は?(政府参考人)

文部科学省はこれまで、学校における働き方改革の推進に尽力をしてきた。

学校における働き方改革に関する取組の徹底について(通知)(平成31年3月18日)

「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)(第213号)」においては、業務の在り方について整理がなされ、部活動は「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」としての側面が明確となった。

新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申概要)

このような取り組みの背景としては、教員の労働時間が社会問題化されていることにある。教員不足の要因とも考えられている。

令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査において、教育職員(※)の精神疾患による病気休職者数は、5,897人(全教育職員数の0.64%)で、令2年度(5,203人)から694人増加し、過去最多となっている。

また、連合総研は2022年9月7日に発表した「教職員の働き方と労働時間の実態に関する調査」の中間報告において、教員の労働時間は100時間を超えるケースが相次いでいる。

連合総合生活開発研究所(連合総研)は2022年9月7日、「教職員の働き方と労働時間の実態に関する調査」の中間報告を公表した。
1か月の労働時間は293時間46分。月間所定労働時間の170時間30分(7時間45分×6月の勤務日数22日)を123時間16分オーバー。時間外勤務は、上限時間である「月45時間」を大幅に上回り、過労死ラインを越えている。

教員の労働時間、今なお過労死レベル…連合総研
2022.9.8 Thu 10:50

「令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果」では、例えば中学校では令和4年8月時点では、5.2%の教員で、45時間~80時間の(いわゆる)残業が認められる。

令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果

少し古い調査になるが、長時間労働の大きな要素として部活動とのかかわりが指摘されている。

運動部活動の地域移行に関する検討会議(第2回)配付資料

3年間で移行する予定が、なぜ変更されたのか?(文部科学大臣)

当初、文部科学省では「休日の部活動の段階的な地域移行(令和5年度以降、段階的に実施)」を予定していた。具体的には、前述の「運動部活動・文化部活動ガイドライン」を統合した新ガイドラインの作成に向けた運動部活動の地域移行に関する検討会議提言(有識者会議)において、以下のように「目標時期は令和7年度末を目途」と具体的に示されていた。

目標時期については、少子化の進行や学校の働き方改革の進展を踏まえ、できる限り早期とすることが望ましいが、一方で、地域におけるスポーツ環境の整備充実には一定の時間を要することから、令和5年度の休日の運動部活動の段階的な地域移行開始から3年後の令和7年度末を目途とすることが考えられる。

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/001_index/toushin/1420653_00005.htm
学校の働き方改革を踏まえた部活動改革(令和2年9月)より

しかし、学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(令和4年12月)においては、

休日における学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行について、国としては、令和5年度から令和7年度までの3年間を改革推進期間と位置付けて支援しつつ、各都道府県及び市区町村においては、地域スポーツ・文化芸術環境整備のための取組を重点的に行っていくため、後記3の推進計画の策定等により、休日の学校部活動の段階的な地域連携・地域移行を進める。その際、例えば中山間地域や離島をはじめ、市区町村等によっては合意形成や条件整備等のため時間を要する場合も考えられることから、地域の実情等に応じて可能な限り早期の実現を目指すこととし、国及び都道府県は適切に指導助言を行う。

「改革推進期間」という表現にトーンダウンしている。
この背景としては、

「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(案)」に関する意見募集の結果

「生徒や保護者の不安に丁寧に応え、顧問の教職員を含めた合意形成を図った上で移行すべきであって、拙速に移行するものではない。自治体としても、3年間の移行達成は現実的に難しい。」

という意見が多数を占めているためである。
その理由については、あとの問で出てくるため省略。

京都の事例、経済産業省の助成で行われているが、なぜ経済産業省なのか?(経済産業大臣)

京都に聞いてくれ!!!!!

実は、経済産業省は教育にものすごくちからを入れている。

「令和4年度「未来の教室」実証事業(テーマD:「未来のブカツビジョン」の実現に関するテーマ)」のことなのか、総合型地域スポーツクラブのことなのかよくわかってないのでこれは期待。

「未来のブカツ」ビジョン 概要版



京都は独自の部活動施策を頑張っているようなので、注視していく。


この部活動政策の主体はどこが担っているのか?だれが責任を持って進めていくのか?(文部科学大臣)

これはよくわかってないので期待。
経済産業省も入ってきて、いよいよよくわからなくなってきた。
保護者にとっても教育委員会なのか、いまいちわかりにくい。
一部のモデル事例では、教育委員会を中心とした体制整備モデルができたようなのでそれも参考になると思う。
そのうえで、各市町村の窓口について整理するような「維新版・教育委員会制度改革」について触れられるのなら100点。

部活動の地域移行への課題は?(政府参考人)

たとえば、運動部活動の地域移行に関する検討会議が、令和4年6月6日に発表した「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」における課題は以下の通り。

①「新たなスポーツ環境」の在り方やその充実方策
②「スポーツ団体等」の整備や支援
③「スポーツ指導者」の質の保障・量の確保方策
④「スポーツ施設」の確保方策
⑤「大会」の在り方
⑥「会費」や「保険」の在り方
⑦「学習指導要領など関連諸制度等」の在り方

運動部活動の地域移行に関する検討会議提言(概要)
運動部活動の地域移行に関する検討会議提言(概要)

この課題については、令和5年度以降、地域移行モデル校での実践を通して課題改善、横展開が図られることを期待する。

また、受益者負担の増加、地域間格差、心身の健全な発達・発育に対する教育委員会のマネジメントについて指摘する声もある。

部活動地域移行、最大の課題が見過ごされている。生徒の健康を、誰がどう守るのか?(妹尾昌俊)

教育現場は混乱している。これからの取組とロードマップは?(文部科学大臣)

これは気になる

所感

所要時間は約40分。
素人が40分調べると上記の資料にたどり着く。
つまり、ここまでは議員が事前レクで把握していると考えるのが普通である。

となれば、本日の質疑では例えば「地方教育行政における所管」について、また「経産省の取組に関する閣僚間調整について、最後にある「今後のロードマップ、特に長期的な日本の学校と課外活動の在り方」まで踏み込まれてしかるべきである。

また、維新としては
・費用負担の在り方、特に「教育無償化」の範囲とするのか否か
・地域活動における機会平等、特に「パラスポーツと障害児・生徒と旧部活動対象者のインクルーシブ」
などについて、維新八策2022とのバランスに配慮いただきたい。

以上

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