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【書評】原潤一郎『魔法のピットインカード』

「子育てが上手くいかない」
「子どもとコミュニケーションがうまく取れない」
とお悩みの親御さん、子どもと関わる仕事をされている方、たくさんいらっしゃると思います。
今回紹介する、原潤一郎さんの『魔法のピットインカード』は子どもとのコミュニケーションを円滑にし、子どもから「話したい!」という気持ちを引き出す、本当に魔法の本になっています。
『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』で一躍有名になった「アドラー心理学」やコーチングの知見も盛り込まれた内容になっており、非常に説得力のある内容になっています。

本書の基本情報

基本情報

タイトル:『魔法のピットインカード』
著者:原潤一郎(日本親子コーチング協会代表理事)
出版社:日本文芸社
価格:本体1,500円+税
ページ数:127p + ピットインカード(付録)
ISBN:978-4-537-21608-0

読者の声(本の帯より引用)

10歳男子のママ
「学校のことを聞いても『別に!』だけだった長男。カードを使い始めたら、たくさん話してくれるように。魔法のようなカードで、正直驚きが止まりません」
6歳女子のママ
「子どもが自分の感情を『(カードの)ウサギで言うと、箱から出てる感じ!』などと表現してくれます。親子の間で気持ちを可視化できる共通言語になっています」
7歳女子のママ
「ピットインカードは娘と私のお守りです!」
9歳男子
「このカードを使うと、僕が言いたかったことを、言いやすくなってすごくうれしいです!」(原文ママ)

おすすめポイント

お互い嫌な気持ちにならない見方や伝え方が分かる。

子どものダメなところばかり気になって、ついつい怒ったり、不安になったりしてしてしまう…。

一生懸命伝えているのに、何も伝わっていないような気がする…。

このような気持ちになったことなある親御さん、多いと思います。
たくさん褒めたいところや好きなところがあるのに、子どもが突然命にかかわるようなことや常識から外れたような行動をとってしまい、気付いたら注意ばかりしてイライラが募ってしまっていた…なんてことはよくあると思います。
また、言葉の概念が曖昧だったり、語彙数や経験が少なかったりする子どもに、伝えたいことを正確に伝えることもすごく難しいです。

この本では、子どもと接するときの態度や伝え方を学ぶことができ、今までイライラしていた気持ちが、見方や伝え方を変えるだけでかなり解消されます。
例えば…

「できないところ探し」ではなく「できるところ探し」をする。

褒めたい時は、【その人の行動+自分の気持ち】を伝える。

子供の成長とともに「保護者」から「応援者」になろう。

などの提案がされています。
私自身、教育を専門に学んできた人間ですが、とても理にかなっていて実践的でほとんどの人に通用する内容だと感じました。
本書では「まずは、自分(親)がハッピーになろう!」と言われています。
関わり方や伝え方を変えるだけで不安が小さくなり、幸福感が増します。親が幸せになることで、子どもは安心して学び成長していくことができます。
最初はなかなか難しいかもしれませんが、具体的な考え方も書かれているので、根気強く実践していってもらえたら、少しずつ成果が表れてくるでしょう。

カードを使ったコミュニケーションの利点。

本書には「ピットインカード」が付属されています。
「本当はどうしたい?」などの質問カードや表情豊かな動物が描かれたフィーリングカードが入っています。
カードを使ってコミュニケーションをとるというのは、特に言葉の少ない幼児期~学童期においては非常に有効です。
カードを使うメリットは2つあります。

遊び感覚でコミュニケーションをとることができる。

言語化・視覚化しにくい「感情」をカードで伝えられる。

➀遊び感覚でコミュニケーションをとることができる。
⇒「楽しい!」「遊び感覚」というのがとても大切です。子どもは自分が楽しいと思えないことは基本的にやりません。可愛い動物のイラストが描かれたカードを出し合って話すことで遊びのような感覚で様々な言葉が引き出されていきます。

②言語化・視覚化しにくい「感情」をカードで伝えられる。
⇒これがカードを使ったコミュニケーションの一番の魅力だと思います。
先ほども言いましたが、子どもはそもそも語彙数が少なく、大人と比べると感情の概念もまだ曖昧です。だから、持っている語彙の範囲で話さなければならないので、どう表現したらいいか分からないことがあったら、話すことを避けてしまったり、間違った言葉で大人に伝えてしまうことがあります。大人が子どもの使った言葉をそのままの意味で受け取ってしまい、ギクシャクしてしまうケースも多々あります。
それをカードにすることでかなり解決されます。
言葉にできないこともカードを提示することによって、自分の思いをなんとなく相手に伝えることができます。また、子どもの中でぼんやりしていた感情がカードを選ぶことによって明確になっていくこともあります。これが「視覚化」の効果です。見えないものを説明するのは大人でも難しいと思います。それがカードという共通言語を得ることによって解決されるのです。

そして、個人的に秀逸だな、と思ったのは、感情を示すフィーリングカードに「怒り」「喜び」「悲しみ」などという言葉が記載されていないことです。
どう感じるか、またどう表現するかは人によって微妙に異なります。また、喜びでも飛び上がるほどの喜びだったり、ささやかなほっとするような喜びだったり、「喜び」という言葉一つとっても、様々な「喜び」があります。自分の気持ちとカードと完全に一致しなくても、「これに近いけど、こういうことろはちょっと違う」と言ったり、カードを複数出して「これとこれが合わさったような感じ」と表現したりすることもできます。カードを使いながら自分の微妙な気持ちを表現・共有することができるのです。
カードから新たな言語も生まれていき、それがことばの獲得にもつながっていきます。
このカードを使うことによって、自分の感情を見つめ表現する力や、語彙が増やしていくことができるのではないかと思いました。

まとめ

子どもとのかかわりは、子どもの言動をどう見るか、また大人がどう伝えるかで変わる、ということがよく分かる素晴らしい本だと思います。子どもとのコミュニケーションが円滑になることで親の子育ての負担感や不安感も和らぎます。
カードを使うという、言葉以外のコミュニケーション法を提示しているところもいいですね。人間のコミュニケーションは言葉だけではないのです。しかも、カードから自分の感情に意識を向け、言語化できるようにするというすごい効果ももたらす可能性があります。
ぜひ、子どもとのコミュニケーションに困っておられる方は使ってみてはいかがでしょうか。シチュエーション別のカード活用法もたくさん載っているので、すぐに実践できると思います。

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