【書評】神谷悠一・松岡宗嗣『LGBTとハラスメント』

今回は、『LGBTとハラスメント』という本の書評をしていきます!
著者の一人である松岡宗嗣さん(@ssimtok)はTwitterでも有名ですね。LGBT関連のツイートを調べるとこの方のツイートが出てくることが多いです。私自身、この方のツイートを良く拝見していて、その関係でこの本を知りました。昨今、よく問題になっているLGBT関連のハラスメント…この本を読めば今の時代の流れについていけるかも…!

本の基本情報

基本情報

タイトル:『LGBTとハラスメント』
著者:神谷悠一(「LGBT法連合会」事務局長)
   松岡宗嗣(一般社団法人fair代表理事・ライター)
出版社:集英社(集英社新書)
価格:本体820円+税
ページ数:218p
ISBN:978-4-08-721127-6

概要(引用)

いわゆる「パワーハラスメント防止法」が二〇一九年に成立し、あらゆる企業がLGBTに関するハラスメント対策をとり、プライバシー保護の対応を行うことが義務化された。しかし、未だLGBTに関わる政治家の失言やネットでの炎上事例は後を絶たない。
本書では、「よくある勘違い」を多くの実例をもとにパターン分けし、当事者との会話において必要な心構えを紹介。また、職場における実務面での理解も促す構成となっている。知っているようで知らない、LGBT「新常識」がここにある。

引用元:『LGBTとハラスメント』

良かったところ・おすすめポイント

「LGBTとハラスメント」について学ぶ必要性

・LGBTの存在は知っているけど、当事者じゃないし、身近にいないから大丈夫。
・LGBTQ当事者だから大体わかる。わざわざ本を読んで学ぶ必要はない。
・性自認や性的指向の問題ってややこしそうだし、あまり関わりたくないな。
こんな風に思っている方、いらっしゃいませんか??要注意ですよ!

自分が性的マイノリティであることを隠しながら生活されている方も多数いらっしゃいます。「身近にはいない」のではなく、”ただただ認識できていないだけ”だからかもしれません。また、本書でも述べられていますが、これは性的マイノリティの方だけの問題ではありません。性自認が自身の身体の性と一致しており、異性に恋愛感情を抱く(いわゆる”ストレート”と呼ばれる人たち)性的指向の方も、加害者になるだけではなく、時にハラスメントの被害者になる可能性も大いにあります。例えば、「男らしさ」や「女らしさ」を執拗に求められたり、プライベートな恋愛事情を話すよう強要されたり…これらも立派なハラスメントになります。
実は、こういったハラスメントは色んなところで起こっています。
本書では、全ての方がハラスメントの加害者にならない、また被害にあったことを自覚し自分を守れるような考え方や方法がたくさん書かれています。性自認と性的指向はすべての人に関わる重要な問題だという認識で、自分事として読んでもらいたいと思います。

”無意識の差別”を意識化できる

「私はハラスメントなんてしたことないし、これからもしない。絶対大丈夫!」
「私は多様性を大事にしているから、相手がLGBTでも気にしないよ!」
そんな風に思っている方もいらっしゃると思いますが、相手に配慮して発言・行動したつもりが、その言動がもとで結果的に相手を傷つけ、無意識のうちに加害者になっている、なんてことも多々あります。
自分自身、性的マイノリティ当事者で、普段から言動には気を付けていたつもりでしたが、本書を読んでいると、どきっとするような内容もありました。無意識に相手を傷つけ、苦しめているという可能性は十分にあります。本書を読むことで、これもNGなのか…ということが理解できると思います。
LGBTの問題に限らず、良かれと思ってしたことが相手を傷つけていた…なんてことはよくあるので、本書を読むことでLGBTへの誤解を減らすとともに、ハラスメントとはどういうことなのか…自分の今までの言動も振り返りながら読んでいただくとよい学びになるのではないかと思います。

実例から学べる。実践的。

この本は、とにかく実例が豊富で実生活に即していて、非常に分かりやすいですし、LGBTとハラスメントを身近な問題として捉えられるように作られています。実例からセクシャルマイノリティの知識やハラスメントに関する法律についても学ぶことができます。
カミングアウトされたら?
どんな発言がNG?
会社・職場ではどう対応すればいい?
そんな疑問が解決できると思います。

まとめ

自分自身、セクシャルマイノリティ当事者なので、日々SOGI(性自認と性的指向)関連の情報にはアンテナを張っていたつもりなのですが、この本を読んでみると、「あ、自分もこんな風に接していたことあるかも。あの時傷つけてしまったかもしれない」と思うような事例もありました。自分の加害性に気付くことはしんどいことかもしれませんが、そうやって相手や自分を思いやる意識を高めることで、もっといい人間関係を築けるようになると思います。この本を通して、LGBTだけでなく、もっと幅広く、「人権を尊重するとはどういうことなのか」と考えていけば、もっともっと生きやすい世の中になっていくと思います。
事例が豊富で非常に読みやすいので、おすすめです!!

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