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#54 私の好きな芸術/泖

【往復書簡 #54 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈ああ、巨匠さま〉
水曜日:泖〈それすなわち〉
金曜日:くろさわかな

それすなわち

芸術、めちゃくちゃ好きです。
芸術のすべてが好きです。
日々の暮らし、いやわたしの人生は芸術を中心に回っていると言っても良いでしょう。

芸術があるおかげで嫌なことがあっても豊かな心を取り戻せるし、言葉や態度では十分に伝えにくいことも芸術のあらゆる手段を使えば表現できます。絵画だけじゃなくて、文学や映画、インスタレーション、音楽、ダンスなどなど、あげたらキリがないほどいつもお世話になっています。

自分自身が美術活動をしている分、芸術への想いは一言では言い表せないものがあります。わたしは芸術に生かされているな、と常々感じているところです。

芸術の魅力は、表現者が新たな価値観を提示し、鑑賞者がそれを享受できることじゃないのかな、と勝手に思っています。表現者と鑑賞者の間にはそれぞれ相互作用するものがあって、良い意味でも、場合によっては悪い意味になってしまっても、お互いの刺激になるのは貴重な経験になる、はず。

わたしは「考える」ことが好きなので、思考のスキマがある芸術はとても好き。まさに、あらゆる芸術と「対話」する瞬間が、ヒジョ〜〜〜〜に好きなのです。
表現方法が自分とは相性が良くない場合も、たまにあります。しかし、そういう相性が悪いものに出合うことも重要だと思うんです。「なぜこの作品が苦手なのか」を考えることによって、自分に新たな栄養を蓄えられるので。
芸術の仕事は人の心を震わせることだから、苦手な作品で自分の心に嵐が吹き荒れたとしても、それもひっくるめて芸術の役割だということができるんじゃないか、という個人的な見解です。

そう考えると、わたしにとっては、好きな芸術をここですべて語るのはとても難易度が高い。
しかし。
詰まるところ、わたしは「人」が1番の芸術作品だと思っています。

この世に”芸術”と呼ばれるもののほとんどには、人の存在があります。文学だって、映画だって、ダンスだって、料理だって、衣服だって、家電だって、文房具だって、落とし物だって、その奥には「人」がいます。当たり前のことかもしれないけど、人が芸術を成り立たせている。わたしたちに「うわぁ、すげぇや」と思わせる作品を作っているのは、人なのです。

人と話したり、触れ合ったりするだけで、「こんなにも素敵な世界や価値観があるのか」と感動できます。それは特定の表現者だけじゃなくて、会社員や学生、子どもたちなど、色々な人との「対話」で生まれるものだと思います。本人が表現者だと自覚していなくても、視点を少し変えれば地球上すべての人の発言・行動・存在・それによって生み出されるものが芸術作品になるし、すべての人が表現者となり得るのです。

芸術は、「人」だと思います。地球上に生きているみんながアーティスト、そして芸術作品なんじゃないかな。

多くの人を救い、新たな価値観を提示し、そして世界で最も平和な武器にもなる芸術。世界平和のためには地道な対話が必要だと思うし、その手段に芸術の存在はきっと欠かせないもの。

ゆえに芸術が好きだし、それすなわち、人が好きです。


追伸。
8月の割には寒い日々が続きますね。夏の暑さが苦手なわたしは、夏に(謎の)勝利宣言をするべく、ナイロンジャケットを購入しました。
夏よ、君はもう終わりだ。これ以上は諦めたまえ。2021年の夏、安らかに。

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