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#59 踏み出せない/泖

【往復書簡 #59 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈“韻踏合組合東北支部”的なものもいいかもしれない〉
水曜日:泖〈10年目の正直〉
金曜日:くろさわかな

10年目の正直

今までずっと踏み出せなかった一人旅、いよいよ来月踏み出します。

学生のとき、わたしは世界中を旅するバックパッカーに憧れていて、一人旅用に聴きたいプレイリストなんてものを作っていたのですが、いよいよそのプレイリストは日の目を見ないままどこかへ消えてしまいました。

憧れるだけ憧れてそのまま。わたしの場合、その最たる例が一人旅です。まず、なぜそんなに一人旅を避けていたのかというと、単に寂しいからです。
わたしは一人が好きなほうだし全く苦じゃないのですが、一人旅だけは苦手。日帰り旅行ならできるけど、宿泊込みの一人旅には踏み出せない。

周りには一人旅が大好きな人たちばかりがいて、一人旅ができないと言えば「すごく一人旅が好きそうなのに、意外」「一回試したらクセになるよ」というお言葉をたくさんいただくのですが。

おいしいご飯を食べて「おいしい!」と思っても一人。きれいな景色を見て「最高じゃん!」と思っても一人。夜は「おやすみ」と言えず一人。翌朝「おはよう」と言えず一人。旅のハイライトを話せず一人。めちゃくちゃ寂しい。考えただけで泣きそう。こんなことを考え続けた10年間、一人旅に憧れはありつつもずっと踏み出せずにいました。

一人旅を想像しただけで半べそ一歩手前だったわたしが一人旅を決意したのは、なんとなく、です。10年も一人旅をあれやこれやと理由を作って渋っていた割には、かなり安っぽい。しかし、そこには色々な成り行きが重なっていて、なんだか神様に「今だ!」と言われている気分になり、結局、なんとなく、一人旅を計画したのです。

その、色々重なった理由の一つが、最近制作したzineをもっと色々なところに置いて、色々な人に見てもらいたいという想いです。それにどんどん積み重なるように「ずっと行きたかったあそこに行きたい」「ずっと欲しかったあれが欲しい」「あの人に会いに行きたい」「有給残ってるし」「ワクチン接種の2回目が終わってるはずだし」という理由が溢れるように出てきて、その背中を押すように国内線の飛行機代が半額になるセールが始まったんです。

国内線の飛行機代が安すぎる。これが、なんとなくの一人旅をすることになった決定打です。

一人旅は5日間ほどを予定しています。とはいえ、半分の日程では友人と行動を共にしますが、初めての一人旅にしては上出来なのではないかと思っています。”なんとなく”決めたのに、その割には順調に旅を楽しもうとしている自分がいます。

けれども、やはり不安は大きいです。
一人で飛行機に乗るのも初めてだし、搭乗手続きからつまづきそうでハラハラします。しかも、予定を計画するのが苦手なので、きちんと予定を組もうとしても10分も調べないうちに「めんどくさ〜〜〜い」と投げ出すことを夜な夜な繰り返し、早1ヶ月が経ちます。
今までの旅では全部一緒に行く人が予定を組んでくれたり、ホテルを予約してくれたり、道を調べてくれたりしましたが、来月の旅では頼れるのが自分しかいない。大丈夫なのでしょうか。いや、大丈夫だろうけど、ちゃんと楽しんで旅ができるだろうか。

ある人に「一人旅ができない」と相談したら、「俳優気分で雰囲気に浸ると楽しいよ」というアドバイスをもらいました。

わたしが一連のアドバイスを聞いて感じたのは、たとえば、
”恋と仕事に疲れたわたし。お忍びで旅行中です”
”ああ都会。ネオンが恋しくなるかしら”
 ”5年後の約束。あの人は来る?来ない?”
みたいな感じかもしれない。アンニュイな雰囲気を漂わせるのがポイントらしいです。こういう設定を考えるのは、わたしは結構好きだから純粋に楽しそうだなと思いました。だけど、一人旅への不安や緊張が消えたわけではないのが厄介なところ。

さてさてどうなることやら。


追伸。
総裁選、絶望しかなくてつらいです。わたしが望む第一条件が「質問にちゃんと答えてくれる人」だなんて、民主主義の国としてハードルが低すぎねぇか?と笑えなくなります。不正や分断、隠蔽を許したくないです。

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