見出し画像

#67 私の地元のいいところ/泖

【往復書簡 #67 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈40年目にしてわかることがある〉
水曜日:泖〈なんですか、どこですか〉
金曜日:くろさわかな

なんですか、どこですか

わたしの地元は宮城県角田市というところで、一般には梅と米が特産品だそうです。わたしは梅干しが苦手なので角田の梅の美味しさは分かりません。米に関しては、学校給食にパンが出たことがないことから、よほど米に凝っていることがわかります(一度クリスマス給食でパンが出ましたが、それも米粉パンでした)。あと、ロケットのエンジンの研究・開発を行っているということで、宇宙の町とも呼ばれているそうです。すごいですね。

地元のいいところは?と聞かれると、わたしはWikipediaでも調べられそうな上っ面な情報しか答えられません。角田市のいいところって、なんですか、どこですか。

というか、地元に興味が持てないんです。つい2年前に、自分の悩みをゲストに聞いてもらう『お悩み資料室』という企画で友人に「他の人に比べて、郷土愛がかなり薄い」ことを聞いてもらっていたのですが、未だに愛が薄いなと感じます。

このお悩みでは、わたしには角田市に対する感謝と、(何かと)戦ってその地で文化を作るという気概が足りないのでは?という導きにたどり着いたのですが、今もあまり関心がありません。まだ感謝し切れていないし、角田市の何と戦えば良いのかもわかっていません。今のところ、わたしはただ角田市にいるだけです。

思い出の中学校の校舎はずいぶん前に建て替えられてしまったし、さらに2〜3年後には小学校の校舎も無くなってしまいます。ばあちゃんによく連れられたヒシダイもいつの間にか無くなっていました。市の中心部に行く途中には、ばあちゃんが急に車を停めて横付けした畑からザクロを勝手に取ったものを食べさせてもらったのを今思い出したんですけど、あれは果たしてどなたの畑だったんだろうと心がザワザワしています。

誰かをここに連れていきたい!という場所がことごとく無くなっているので、ますます地元から気持ちが離れていくような実感があります。

地元って、目に見えるような建物や景色だけではないと思うのですが、わたしにとっては「どこで、なにをしたか」が重要になっているみたいで。そんな場所がどんどん無くなっていくと、わたしの地元じゃなくなるような違和感が芽生えます。

むしろ、生まれ育った場所以外で「どこで、なにをしたか」がはっきり残る場所があれば、「あー帰ってきた〜」みたいな感覚が強くなります。

昔からあるものを大事にしてもらいたいけれど、そんなのは理想論でしかないのでしょうか。これから好きな「場所」が増えていったり、気づいていったりすると良いなと思います。

わたしに心の余裕ができたら、ドキュメンタリー映画に特化したお祭りと音楽祭を合体したイベントを企画したいんですよね。来年か再来年あたり企画化できないかしら。それまでにちゃんと地元のいいところをはっきりと答えられるようにしたいです。


追伸。
『お悩み資料室』、そろそろ再開してもいい頃かな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?