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【ビジネス】自動車メーカーに求められるもの

背景


中国において、自動車業界の発展は目覚ましい。2002年、小売販売台数世界シェアわずか5.2%だった中国市場が、2009年に世界トップシェアとなり、2018年には28.9%と、第二位のアメリカの18.5%を大きく突き放す世界最大の市場となっている。

2018年、中国GDP成長率前年比+6.6%のうち、「消費」関連が+5.0%となり、「消費」関連が中国の経済成長を支えていると言っても過言ではない。その+5.0%成長率の「消費」の約4割を占めるのが自動車関連事業である。まさに、中国経済を牽引している大きな産業が自動車関連産業なのである。

自動車全体の需要についても2017年の約2888万台をピークに18年、19年、20年は前年比減少となったが、2020年はコロナ禍にもかかわらず前年比-1.9%減とほぼ19年の需要をキープ、2351万台の小売販売台数を達成することとなった。今後の成長も期待されている自動車市場について、このレポートでは今後10年の自動車事業を見据え、分析を行った上で、自動車メーカーに求められるアクションを提案したい。

一、PEST分析

(一)Political 政策分析

1. 省エネルギー、新エネルギー車の普及

2016年3月5日から16日に第12期全国人民代表大会(通称、全人代)第四回会議が開催され、李克強国務院総理は、今後5年間の経済・社会発展の主要目標や重要政策を「第13次5ヵ年計画」として提案した。

「小康社会(ややゆとりある社会)」の全面的完成に向けて、6つの主要目標が示されるとともに、それぞれについての重要政策が報告された。この計画のうちの一つとして環境対策の強化の施策として、「新エネルギー車普及の推進」が掲げられている。

中国の新エネルギー乗用車へのシフト構想は、2012年6月に公布された自動車産業政策「省エネルギーと新エネルギー車産業育成計画(2012~2020年)」に基づいて推し進められてきたものである。

2016年10月、工業情報部(工信和信息化部, 以下工信部)の依頼を受けて、中国汽車工程学会(SAE China)の年会で国家強国戦略諮問委員会が「省エネルギー、新エネルギー車技術ロードマップ」を発表し、2030年までの省エネルギー、新エネルギー車発展目標を公表した。

2014年12月には第四段階燃費規制(Corporate Average Fuel Consumption、以下CAFC規制)を発表し、2020年までに段階的に5.0L/100km(CO2排出量115g/km相当)に、2025年4.0L/100kmに引き下げる目標設定、2020年12月に发布された「新能源汽车产业发展规划(2021-2035年)ではWTLCで2025年4.6L/100km, 2035年2.0L/100kmと目標値が変更なった。

一方、2017年9月、工業情報部(工信部)よりNEV規制(新エネルギー車規制、New Enegry Vehicle)「乗用車企業平均燃料消耗量と新エネ車ポイントとの並行管理弁法」が公布された。CAFC規制との統合的な管理が可能な設計となっており、2019年より適用がスタートされている。

2. 自動車業界に与える影響

以上のCAFC規制とNEV規制により、自動車メーカーは規制値を満たす商品とパワートレイン(駆動系ユニット)のラインナップを検討し、市場投入することが求められている。また、事実上、省エネルギー車および新エネルギー車の市場投入が必要となっている。

さらに、2018年7月、国務院より「ブルースカイ保護戦略3年行動計画」が公布され、バス、環境衛生車、郵便、タクシー、通勤車両、小型物流配達車両の代換え車両、新規購入車両は新エネもしく省エネ車を加速させると発表、港、空港、鉄道貨物などの重点区域では80%が目標となっている。この方針に伴い、多くの都市では新規に導入されるバスやタクシー、DiDi(中国企業名、滴滴)に代表されるネット予約車サービスなどが新エネルギー車に切り替わっている。

2020年10月発布の「节能与新能源汽车技术路线图2.0」の中で、2030年に新エネルギー車の比率を40%、省エネルギー車を48%とするとしており、従来のガソリン車はわずか12%となっている。ガソリン車については現在「国6」の燃費規制があるが、2026年以降に「国7」対応が必要という非公式情報もある。

因みに、20年は新型コロナウィルスの影響で各自動車メーカーの研究開発と商品投入の遅れが発生し、21年2月に工業情報部(工信部)がCAFC規制とNEV規制の評価基準を緩和することを発表した。

繰り返しとなるが、自動車メーカーは2030年に向けて、従来のガソリン車の「国7」対応開発、省エネルギー車、新エネルギー車の開発と導入の商品およびパワートレイン戦略が必要となっている。

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