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どんなに遠くても行きたいギャラリー・カフェ巡りの記録

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「車でしか行けない場所で20年以上続いているギャラリー・カフェ」を求めて旅した記録。
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#お店の未来

30年かけて点が線になったcafe

Cafe Shozoのカフェには一度行くべき価値がある。 階段を上がると、右と左に部屋が別れている。いくべきは、絶対に右の部屋だ。天井は低く、照明はテーブルの上にあるランプだけ。床は年季の入った細い木が敷き詰められている。昭和の喫茶のイメージを彷彿とさせる空間だ。 Cafe Shozoのはじまりは、菊地省三さんの思いからはじまる。寂れてしまった商店街をどうにかしたいと思っていた。この町に生まれた省三さんは、この地に住み続けることになる。「どうせ住むなら楽しく住みたいと思っ

静かな楽器のような空間

1度会っただけなのに、ずっと前から友だちだと思える人ってたまにいる。(相手がどう思っているかは知らない)その1人であるいっしーのnoteに"Starnet"の馬場さんの言葉が書いてあった。 それを読んで、馬場さんが残したものを見てみたいと思った。もう馬場さんはいない。でも、手を入れ続けた場所はどう残っていくのだろうか。 Starnetも車でないと辿り着けない場所にあった。店舗は山を背負っていて、となりには大きな池のある公園。開店前にたどり着くと、スタッフの方が公園まで一所

距離を超えて商いを問い続ける場所

秋田に住んで6年にもなるから、林道、農道など茨道を走って細い道にも耐性はできていた。それでも、’わざわざ’にたどり着くまで戸惑ってしまった。 「本当にあるのだろうか?」「グーグルマップさんはいつも攻め攻めな道をいく」と不安にかられながら、目的地に近づく。坂道を登りきって丘の上にでて視界が広がる。浅間山を望む素晴らしい景色に心が満たされる。「看板もあったかわからないくらいで、お店も駐車場も分かりづらいから気をつけてくださいね」とゲストハウスのスタッフに言われた。「お店だとは気

空白の時間を取り戻した公共施設

車でまた浅間山を長めながら丘をのぼっていく。とにかくのぼっていく。キャンプするにはいいけど、よっぽどの目的がないかぎり、ここまで車でさえのぼることはない場所まできた。昭和にできた古びた公共施設が見えてくる。周りは白塗りで、どこにも所属しない、そして主張がない佇まいをしている。でも、円柱のような施設の窓からみえる中は暗く、怪しい雰囲気を出していた。 施設の正面にくると、大きな暖簾に”問”と描かれている。それをくぐれば中世ヨーロッパにありそうな本棚とカウンターが迎えてくれた。お

作り手がかけた時間を壁一面の本棚へ

春に東京でTHE TOKYO ART BOOK FAIRに遊びにいった。私は本屋が大好きで、小さな本屋から大型書店まで幅広く見に行っている。でも、ART BOOKというものを知らなかった。”芸術関係の本”くらいの認識でいた。会場にはいって、ISBNコードがない本たちが展示台に「オレを見ろ!」とばかりに主張していた。「これは本なのか?」と考えてしまうような、カレンダーだったり写真がはりつけてあるだけ、または紙1枚の情報誌だったり。紙質もさまざまで、透けているものからラメ入りでキ

ものとひとが関わる時間

岐阜県多治見市。多治見焼、意匠研究所、モザイクタイルミュージアムなど陶磁器の町として有名。焼き物の原料となる土や粘土の生産地でもある。 友だちが意匠研究所に通っているとき、多治見に遊びにきたことがあった。そのとき行けなかったのが、ギャルリ百草だった。陶芸家の友人はとっても癖があって、普通のカフェには見向きもしない。音楽にも詳しく、陶芸と音楽は似ていると話していた。その時、私にはちっとも意味なんてわからなかった。 多治見の端っこにあるカフェを目指す。丘の上にある小さな住宅街