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介護への備えをしない3つの理由と対応策

子どもがいない人はいるが、親がいないという人はいない

この世に生まれてきている以上、親がいないという人はいません。
もちろん、すでに他界しているとか、音信不通だとか、縁を切ったとか諸事情により親が存在してないも同然という人もいいるとは思いますが、一般的にはある年齢以下の人は親がまだ生きていて関係性もあるという人が多いと思います。

人はいつか必ず死ぬし、大抵の場合は死ぬまでの過程で体が弱ることが多いです。となると「今は元気だがそのうち介護が必要になるかも?」と頭をよぎることがあります。

実際自分も40代になり親がだんだん高齢になってくると、「自分もいつか親の介護問題を抱えることになるかもしれない」と考えるようになってきましたし、言動が気になるようにもなってきました。耳が遠くなってないかとか、同じ話を何度もするようになってないかとかです。

しかし介護の世界に20年以上いますが、介護について備えておくべきだとは思っていても、実際にしっかり準備をしている人は少ない印象をもっています。

その理由は、3つあります。

①重要なことではあるが、緊急のことではないから
②介護問題が起こらないかもしれないから
③何を準備すればいいのか分からないから

①重要なことではあるが、緊急のことではないから

重要度と緊急度で4象限を作ると、親の介護に備えるのはこの辺りの位置づけではないかと思います。

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親が介護が必要な状態になった時、子どもの身からすると“自分も何らかの形で介護をしなければならないのではないか?”と思いますが、それはいつやってくるか分からないので緊急の問題とは感じづらいのです。

②介護問題が起こらないかもしれないから

また、介護は誰にでも起こるものでもありません。突然頭痛を訴えはじめ、翌日には亡くなってしまうようなこともあります。脳卒中や心筋梗塞などで突然死してしまうパターンです。これをピンピンコロリ(PPK)といって子どもに迷惑をかけないし人の世話にならずにすむ良い死に方だと言う人もいます(ま、死に方を選ぶことはできませんけど)。こういう場合は介護問題は起きません。

ただし、結婚していて夫婦それぞれの両親が健在な場合、親が4人いることになります。4人ともPPKなら親の介護をすることはありませんが確率的には低いでしょう。

25%以上の確率で認知症介護が起こる?

80才から84才までの人のうち、約25%が認知症であるというデータがあります。25%というのは4分の1の確率なので、親が4人いる場合はそのうち誰かひとりが認知症になるという確率です。

となると4人の親を持つ夫婦であれば、両親のうち誰かが認知症になり、その介護をしなければならない可能性があると言えます。その確率が25%です。

ちなみに90才以上の認知症有病率は65%以上なので、長寿であればあるほど認知症になる確率も大きくなります。

突然 or 徐々に

大別すると、介護には徐々に始まるパターンと、突然始まるパターンがあります。

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パターン1
アルツハイマー型認知症や加齢による身体能力の低下などの場合、少しずつ介護が必要な部分が出てきて、どんどん介護負担が大きくなります。

パターン2
脳卒中などの場合、発症した翌日には麻痺などが出てしまい、退院直後から負担の大きい在宅介護が始まるケースもあります。

また、75歳以上を超えると介護サービスを使用する割合が指数関数的に伸びます。パターン1のグラフのように、ある段階を境にどんどん介護負担が増大していきます。つまり75歳以上を超えると介護の必要量がどんどん大きくなるということでもあります。

介護保険を使っても、老人ホームに入所しない限り介護負担はゼロにはならない

介護が必要になった時、老人ホームに入ってしまえば衣食住に関する身体的な介護負担はほぼゼロになります。しかし老人ホームは誰でも簡単に入れるものでもありません。例えば特別養護老人ホームは原則的に要介護3以上の認定がなければ入所できません。

介護が必要になっても自宅で暮らす期間はあるため、その間は何らかの介護が必要になります。

自宅に暮らしながら利用できる介護保険サービスには、訪問介護(へルパー)、通所介護(デイサービス)、短期入所(短期間だけ施設に泊まる)などがありますが、これらで生活の全てを支えることはできません。(月に数十万ものお金を使えれば別ですが)

となると、どうしても家族で負担しなければならない部分が出てきます。しかしそうなることをなんとなく予測できても、何をすればいいのか分かりません。

③何を準備すればいいのか分からない

どのように介護が必要になるかによるところもあるので、これはなかなか難しいところでもありますが、大きくはお金と介護分担だと思います。

介護が必要になると何かをお金がかかりますので、貯蓄や収入の確保などお金の備えは必要です。いくら必要かは一概には言えませんが、要介護3の人が介護保険サービスをフルに使うと、1割負担で約27,000円のお金がかかります。これにサービス利用中の食費などが別にかかってきます。

介護の分担も大事な視点です。介護保険など外部サービスを使える部分もあれば、家族内で分担しなければならないこともあります。兄弟姉妹が複数いれば協力・分担して一人当たりの介護負担を軽くする方法もあります。

近くに住んでいないから実際の介護はできないけど金銭的な援助はする、お金は出せないけど食事を作りに行ったりはできる、介護サービス事業者とのやりとりは私がする、などです。

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一番良くないのは、体も金も使わず、口だけを出す人です。こういう人の存在が、献身的に介護している人を精神的に追い詰めることがよくあります。

他にも、同居するか?自分の仕事はどうする?など考えなければならないことはたくさん出てきますが、ある程度仮説を立てて備えておくことがいいと思います。

それでも備えないのが現実

介護への備えをしておいたほうがいいと頭ではわかっていても、それでもなかなか備えをしません。それが上でも書いた通り、

①重要なことではあるが、緊急のことではないから
②介護問題が起こらないかもしれないから
③何を準備すればいいのか分からないから

こういう理由があるからです。

ではどうすればいいのか?
自分の状況を把握してくれていて、必要な時に的確なアドバイスをもらえる人を作っておくことだと思います。(そういうサービスを構築中)

<参考にした情報>
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ninchisho_kaigi/yusikisha_dai2/siryou1.pdf

介護サービスの会社を経営しながら、経営学を学ぶため大学院に通っています。起業前の13年間は特養で働いていました。介護現場と経営と経営学、時々雑感を書いています。記事は無料ですがサポートは大歓迎です(^^)/